話し方
あの後、ユイと別れた俺は、ホテル「ニュービー」とか言うギルド経営のホテルの泊まった。このホテルは、冒険者ギルドが初心者向けに運営しており、初心者がギルドで依頼を達成すると貰える報酬金から自動的にお金を徴収されるシステムなので一文無しでも泊まることができる。ちなみに一晩300ガルだ。
翌朝、ギルドの一階へ行くとユイがいたので話しかける。
「 おはようございます。ユイさん。早速ですが何の依頼を受けます?」
「おはよう。Gランク向けだと薬草採取かゴブリン狩り。どっちも報酬は1500ガルだから好きな方で良い。」
「そうですか。ではゴブリ「ねえ、何で敬語なの?」ん?」
「年が同じなのに名前もさん付けだし、無理して敬語使ってる気がする。それに割とゴッツイその容姿で敬語だと…何か気持ち悪い。」
マジかよ。俺が紳士的な対応をしていた事が裏目に出ただと…!か弱い少女に怖がられないように敬語使って、必死に無害アピールしたのに…というより名前もさん付けは仕方ないじゃん!会ったばっかの人の名前を平然と呼び捨てする奴って常識的に考えてヤバいやつだろ!よくハーレム主人公がヒロインをいきなり名字とかじゃなく呼び捨てしてそっから気に入られていく展開あるけどさ!ぜってー頭いかれてるよ!しかもそういう奴らの何が嫌いかっていうと、普通に男に対してはさん付けで呼ぶところだよ…王女とかには呼び捨てしてるのに城の兵士とかにはさん付け!もうね、女を落とそうっていう打算しか感じられないよ。気安く呼ぶかちゃんと呼ぶかはっきりしろよ!それで無駄に大臣とかに気安くあだ名つけて不敬罪とかで殺されてしまえ!
まあここまで怒りをぶちまけたけど、さん付けなのはただ単にいきなり呼び捨てにしてえっ?こいついきなり彼氏面してんの?キモっ死ね!とか思われたくなかったからだ。前世cherryなんだから仕方ないだろ?
「ごほん。つまり君は俺に対して気安く接して、名前を呼び捨てにしろと?」
「うん。」
「本当に良いの?後で呼び捨てしても良いって言ったらあいつすげー喜んでてきもーいとか噂しない?」
「すでにその妄想が気持ち悪いから大丈夫。」
「OK分かった。ユイ。これで良いな?」
「うん。こっちもユウキって呼ぶ。」
よっしゃ!美少女からの名前呼びいただきました!これもしかしてフラグとか立った?いや、フラグとかそんな恋愛ゲーム思考で行くとダメだ。ここは現実だぞ。そんなこと考えてるとあっという間に友人エンドだぞ!
「じゃあ依頼の話に戻ろう。ゴブリンと薬草採取はやめてこっちのスライムの駆除依頼でどうだ。報酬金は2000ガル。」
「スライム?まあ良いけどなんで?」
「いやゴブリンとかだと返り血とか汚くて嫌じゃん。」
そうしてスライム討伐に行くことになった。向かうのは、耕作地帯。この地域で今回スライムが大量発生したので間引いて欲しいとのことだ。
スライムとは?スライムは魔物の一種で、主に小さな虫や枯れ草などを食べて生きている魔物だ。スライムが食べたものは良い土となり、スライムが多い土地は豊かだという象徴でもある。しかしスライムはたくさんいればいるだけ良いというわけでは無い。スライムが増えすぎると、やがては植物を食い荒らし、植物が無くなるとスライム同士で共食いをしたり、魔物も襲い始める。そうするとレベルが上がったスライムは、毒を持った種類などに進化して、土壌汚染を引き起こす。なので農家ではスライムが優先して生きている植物を食い始めたら間引かなくてはいけない。その時期のスライムは人を襲うようにもなり、攻撃をされても死ぬことはほとんど無いが、スライムに纏わり付かれると消化液で肌荒れが起こるので少しだけ厄介だ。今回の依頼も、畑の主人が歳になって来たのでスライムの間引きが面倒だからと依頼してきたものである。
「今回の依頼だと魔法使いそうに無いけど大丈夫?」
「問題無い。火属性魔法はレベル3まで使える。」
そういうとユイは呪文を唱え始めた。
「焼き尽くせ、ファイヤーボール!」
ユイの手元から直径10センチくらいの火の玉が放たれて、少し離れたところにいるスライムに着弾して焼き尽くした。これは俺が普段炎弾魔法と呼んでいる魔法だ。レベル3だとこんなものだ。レベルが6くらいからアホみたいな成長するからね魔法スキルは。
「すごいすごい。でも、畑燃やしたら行けないからこの杖で殴ってこうね?」
「…はい。」
俺の渡した鉄の杖を受け取ったユイは渋々スライムを討伐していった。