好きだったんだ。
設定がちょくちょく変わってしまい、本当にごめんなさい。
でも、今回の結末は何となくですができているのでその結末に向い進んでいるので暖かい目で見守っていただけるとうれしいです。
「いやー、ドキドキしたー」
帰り道。大袈裟に肩を上下に動かす、私の前を歩く立花の後ろ姿を追い掛けていた。
立花は足が長いせいなのか、歩くのがとても早い。
私は一歩一歩、歩く度に先程の事を思い出し怒りに似た感情を覚える。
学校中のアイドルであるイケメン王子に、一方的に堂々と交際宣言をされた哀れな地味子はどんな顔をしてこの男と歩いていいのか分からないのだ。
だいたい、私はコイツの告白を信じていないのに。
「でも、最高のシチュエーションで紹介できて良かったすよね?」
くるっと振り返って屈託の無い笑顔を見せる立花は、逆光を受けていつもより一層キラキラしていた。
そんな余裕綽々の表情見せられたら、余計にイライラしてしまった。
「な、何が、最高のシチュエーションよ!明日から私はどうやって学校に通えばいいのよ!」
廊下から下駄箱までの間、いや、今こうやって歩きながらも、好奇の視線に混じって冷ややかな視線を感じてしまう。
何故こんなイケメンの隣にお前がいるんだ?
その視線が私に語りかけてる。
私だけがどうしてこんなモヤモヤしなきゃいけないの?
「うーん、そうだなー、取り合えず明日から一緒に学校通おう」
そんな答えを聞きたいんじゃない。
コイツはバカなの?
「そう言う問題じゃない。私はただ静かに学校生活送りたかっただけなのに」
今まで一度だって注目を浴びたことなんてなかったのに。
「何であんなこと言うのよ!」
「…。あんなことって?」
「だから、私が貴方の彼女みたいな言い方…本当、迷惑だから」
怒りに任せて、感情的な言葉を機関銃のように浴びせてしまってから、ハッとして、立花を見ると。
彼は視線を下に落とし、今まで見たことの無い悲哀な表情をしていた。
いつもの自信満々の切れ長の瞳は頼りなく彷徨っていた。
「立花…?」
何て言葉を掛けようとしたのが分からなくてすぐに口をつぐんだ。
傷つけるつもりは無かったのに。
立花なら何を言っても平気だと思っていたのかな?
「…椎名、オレのこと嫌い?」
え?
タメ息と一緒に漏れた立花の言葉が私の耳に届くまで数秒かかった。
オレのこと嫌い?
先日言われた『オレと付き合わない?』と言う言葉とは違う意味で私の心を締め付ける。
好きか嫌いかで聞かれたなら…。
嫌いでは無い。
「……、嫌いで、は、無いよ」
一言一言区切るように言ってしまった。
「良かったーーーーー」
私の返事を聞くや否や、立花は両手を天に伸ばした。
「嫌われてないならまだ可能性はあるってことっすよね?良かった!」
今泣いた烏がもう笑う、とはコイツのための言葉かもしれない。
満面の笑顔で私に大きな左手を差し出してきた。
「え?」
「え?じゃなくて、付き合ってるならこうでしょう?」
当たり前のように私の右手が取られた。
ええええーーーーーー?
手?手?手繋がれたー。
手を通して私のドキドキが立花に伝わりそうで怖い。
手汗大丈夫かな?
顔から火吹きそうだよ…。
「ちょ、ちょ、私、付き合ってるなんて言ってない」
「オレは椎名のこと好きだから」
そして、真っ直ぐな笑顔。
あー、そうだ。思い出した。
ずっと心の中で無意識に封印してた自分の想いに…。
気が付いてしまった。
私はコイツのこう言うとこ、この笑顔が……。
----------好きだったんだ。