コイツ、オレと付き合ってるから。
改稿中のため、文章がまだまだ雑な上に状景がよく変わっていて、読みにくくて申し訳ありません。
「立花くん、今日部活終わったら時間ある?」
「私とカラオケ行かない?」
「私と行こうよぉー」
夏の訪れを教える爽やかな風が、私の心にも吹き込んできた放課後、日直だった私は職員室に日誌を届けに行き、廊下で数人の女子たちに囲まれている立花に遭遇してしまった。
立花が女の子たちに囲まれているなんていつものことだった。
ちょっと前の私なら、嫌悪な気持ちでその横を通り過ぎただけだろう。
それなのに、今の私は…。
確かに嫌悪な気持ちはある。
いや、嫌悪の感情もちょっと前までの嫌悪とは違う。
心の中をまるで季節風のように渦巻く感情は今まで感じたことないものだった。
立花の周りに当たり前にいる女子たちに対して当たるところの無い怒りを感じてしまい、自分の気持ちと向き合えずにいた。
でも。
いつも通りいつも通り。
呪文のように心で唱えて横を通り過ぎようとした時。
「椎名」
男の子にしては割りと高めの声の立花に名前を呼ばれた。
呼ばれた?呼ばれたよね、私。
ネガティブ要素いっぱいの私は足を止めてみたものの、振り返ることなんてできずにそのままその場を去ろうと右足に力を込めると。
「おい、無視すんなよ」
強い力で肩を掴まれ、あの時の出来事が脳裏にズームアップされてしまい、自分が思った以上のリアクションをしてしまったらしい。
「はひ!」
自分でも訳の分からない言葉を発したまま硬直してしまった私の目に写りんできたのは、いうも通りのキラキラとした笑顔だった。
あれ?立花の笑顔ってこんなにキラキラしていたっけ?
いつにも増して輝いて見える。
「誰?あれ?」
「あんな子いたっけ?」
そんな私の目を覚まさせたのは心無い言葉たちだった。
「てか、何で立花くんがあんな地味な子に話しかけてるの?」
「本当、美女と野獣の逆バージョン的な!」
心に空いた小さな傷口が少しづつ広がってゆく。
そんな大してひどいことを言われている訳ではないけど、私の心を壊すのには充分過ぎる言葉だった。
この場から消えたかった。
だけど。
「みんなごめん、今日オレ、コイツと用あるから」
とても自然に私の肩を抱きながら、立花の放った言葉が、今度は彼女たちの心を突き刺していったらしく、石のように硬直したまま動かなくなっていた。
そんな彼女たちに更に追討ちをかける。
「オレ、コイツと付き合ってるから」
頭を誰かに殴られたような、心に何か石のような重いものが落ちたような強い衝撃を受けた。
オレ、コイツと付き合ってるから。
頭の中で何度もリピートされる。
何この言葉。意味は分かっているのにしっくりこない。
やばい、心臓発作を起こしてしまいそうなほど、ドキドキが止まらない。
さっきまで穏やかだった廊下は一瞬で、黄色い声に包まれた。
日常的な時間の流れが、誰かのいたずらによって狂わされたように阿鼻叫喚の世界がもたらされていた。
「嘘でしょ、立花くん?」
「何でそんな子と?」
それは私が聞きたいこと…だよ。
目立つ事が嫌いで、できる限り他人との距離を置いて生活してきた私がこんな風に注目を浴びるなんて思ってもみなかった。