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つながる世界  作者: hyrot
こんにちわ異世界
8/30

ダズが帰って来た時、新は狼の腹をさばき、解体している所だった。


「ちゃんと出来たか…んで右手は?」


「…食われた。」


「クハハッあん時と全く一緒か。……どうだ、忘れてなかったか?」


「っ?!…あぁ、失くしてなかった。ホント、色々分かってんだな。」


ダズは、新が上手く戦えない事や長い時間で思いが風化していくのを不安に思っている事を分かっていた。


「まぁ、面倒くせぇ人生だったからな。アラタより、少しだけ気づくのが早いんだよ。」



 運良く、新の右手は原型を残して腹の中に収まっていたため、それを利用して腕全体を治療した。


「解体してたみたいだが、如何する?」


「食べるよ、命の責任は負わないと。」


「……………」

(面倒くせぇ考え方だな。まぁシンの奴もこんなだったな…)


 ダズは地球人の価値観を知っていたため、早めに新に殺しを経験させる必要があると分かっていた。












 少しばかりの休憩をとり、狼の肉で腹を満たした頃、新がダズに質問をした。


「ダズの用事っての、終わったのか?」


「アン?あぁ、魔術の鍛錬に必要な物が足りなくてな。それを取って来たんだ。」


「そっか。」


「…切り替えろよ、アラタ。お前は生き抜く為のスタートラインに立ったんだ。正直、アラタが全力で挑めば1秒とかからないと思ってたんだが…すまん。こっちのミスだった。だが、覚悟は決まったろ?」


「…あぁ。色々世話になって、ホントありがとう。」


「…今日はもう休め。クハハッ明日はまた講義から始めんぞ!」


 そのまま新は眠りについた。


 














 次の日


 思いの外、心が軽くなっていた事に驚いたが、いい意味でも覚悟が決まった朝だった。



















「まずは、マナを感知出来るか?エナが、分かりゃこの周囲にあるマナも感じる筈だが。」


「あぁ、身体の中にあるのとは違う魔力が空気中を漂ってる。」


「魔術ってのは、エナを利用してマナに任意の変化を起こさせる術の事を言うんだ。」


 ダズによる魔術の講義が始まっていた。


「あ〜、火を出したり風を吹かせたり?」


「そうだ。ただエナ単体での干渉は不可能でな、一部が例外もあるが、エナ単体だと体と武器やなんかの直接触れている物にしか作用しない。そこで昔から使われてきたのが、このギアだ。」


「…趣味の悪いアクセサリー?」


「…まぁいい、取り敢えずどれでも一緒だから好きなの選べ。」


「この中から?!えんり…ウソ!選ぶよ!?」


 ダズから殺気が漏れてきた事から、選んだのはダズ本人なのだろう。


「んー、じゃ、これ。」


 新が選んだのは腕輪型のギアだった。


「おし。んでこのギアはコアっつうもんが必要なんだが、これだ。」


 ダズが出してきたのは小指の先ほどのガラス玉の様な物だった。


「これは?」


「地上の生物の中で魔術を使う物を魔物と呼ぶんだが、そいつのエナが体の中で結晶化したもんだ。魔物は単体で魔術を行使する。その力を人種族が使う為に作られたのがこのギアだ。」


 広義の意味では総じて魔力を使用するものを全て魔術と呼ぶ。

 身体強化も魔術の一種である。

 また体内魔力「エナ」を使用して手刀の上に薄く物質化した物を纏い斬れ味を上げたりするのと同様に剣等の武器を使い、それらの射程を伸張したりもできる。

 これを武装強化と呼ぶ。

 身体強化で任意の場所を強化したり武装強化で武器を強化したりして、強烈な攻撃を繰り出す事を戦技という。


 また、ギアを使用して自然魔力「マナ」に干渉して火や水、氷等を生み出し攻撃に使う事を魔技と呼ぶ。


「エナをギアに集めろ。」


 新は言われた通りにすると、ギアにエナが吸収される感じがあった。

 そして、ギアからエナが流れてくるのを感じが、それは肘、肩を通り頭まで達すると微かな頭痛を覚える。


「っ?なんだこれ?」


「ギアと脳の一部がエナを介して繋がったんだ。次は、そうだな。小さな火をイメージして、発動場所に意識を集中してみろ。アラタの体に近い方がいいぞ。」


 新は蝋燭の火をイメージして指先から出る様な想像をする。


 すると頭に微かな違和感があった。まるで自分以外の誰かが、新の脳を使って思考している様な奇妙な感覚。


 暫くして、新の指先には小さな火が灯っていた。


「あっつ!?」


「クハハッそりゃ火なんだから熱いだろ。」


「これ自分にも被害出んのかよ?!」


「当然だろ?熱く無い炎なんて攻撃に使わねぇだろ。同時に体を保護する様にイメージしてみろ。」


 指先を覆う様に膜をイメージする、先ほどと同じ様な感覚があり、感じていた熱が無くなった。


「…この、頭痛とは違うけど気持ち悪い感覚なに?」


「ギアが新の潜在領域使って思考してんだよ。あと魔技は身体強化では防げないから気を付けろ。エナとマナが干渉しあっちまって上手くいかねぇからな。」


「ふーん、このマナで出来た障壁見たいなの大っきくしたりして防ぐのか。」


「そうだ。マナの感知はしっかりできてる見たいだな。」


 ともあれこれで新は戦技、魔技を使う為の準備が整った。


「おし。これからは組手、戦技、魔技の訓練に入るぞ。基礎は整ったからな。あとは修行だな。」


「まだスタートラインかよ…この世界つくづく危なっかしいな…。」


「あぁ、アラタの魔力量も測っとくか。」


「魔力って…エナの量か?」


「そうだ。魔技はマナに干渉する分エナの消費が激しいからな。調子乗って使い切ると身体強化も使えなくなる。戦闘中なら即死亡だ。」


「こわ!?」


 ダズは棒の様な物を新に差し出した。

 中が空間になっていて下部に球の様な物が付いており青い液体が入っていた。


 地球で言えば温度計の様な物だった。


「下の球を握って、中でエナを物質下させろ。そうすりゃ液体が押し上げられて水が上昇する。止まった所でアラタの魔力量が分かる。」


「ハイハイ。」


 ダズから測定器を受け取ると早速エナを込め始める。 

 上昇が止まって値を読むと、そこには45と書いてあった。


「…どれもこれもハナクソだな。」


「うるさい!」


「よし、始めるぞ。」


 そして地下に移動し鍛錬が開始された。






 先ほどの測定器には上部に×100の文字が付いていたが、新は気付かなかった。

 つまり新の魔力量は4500である。


 ダズはしっかりと理解していたが、彼からすると少ない事は事実であるため言わなかった。


 この数値の意味を後日理解した新は、違う意味で凹む事になる。















 半年後

 洞窟内時間で7年半が経っていた。


 




 新は魔技を戦闘に利用できる様になるまでにかなりの時間でが掛かった。

 戦闘中に明確なイメージをする事が出来ないと発動しない上に、新は発動箇所の指定が苦手だった。


 高速で動き回る中で、発動箇所に意識を集中させると戦闘に意識が回らなくなる。

 これが出来る様になるまでに、何回も自分への暴発を繰り返し自傷する事になった。




 


 




 そして、戦技もすべの技を習得ししたが、ここで何気なくした質問でこの世界の常識を知ることになる。

 新が習得した戦技はこの世界のものではない。

 「仙勁漆花流せんけいしっかりゅう」といい、新の世界の仙人らしい人物が広めたものをもとにしているらしい。




「この流派って有名なのか?」


「いや、使ってんの俺とアラタくらいだな。シンも習得してないしな。」


「は?なんで?」


「身体操作が面倒だからだろ。」


「ん?」


「あ?」


「…戦技は身体操作が必要なんだろ?」


「あ?いや、戦技を身体操作によって自力で発動すんのは、この流派くらいだぞ?」


「いや、いやいやいやいや…この世界の戦技は身体強化、武装強化、身体操作によって発動するんだよな

?」


「いや、武装型ギアにあらかじめ組み込まれたプログラムから音声認識で発動する。発動中はギアが勝手に体を操作する感じだな。」


「ちょ、っと待て。返しは?『すすき』は?」


 仙勁漆花流  伍流ごりゅうすすき

 見切り、浮身を使って攻撃に対し受け流し、時に返すことである。


「あんなのプログラムじゃ対応出来ねぇだろ?」


「…身体操作は?必要ないのか?」


「強くなるならいるな。ただそれを使いこなすまでが面倒だが。」


「…何でこの流派にしたの?」


「アァ?強ぇからだろ?」


新は確かに強くなった。

しかし武装ギアなどの事はもっと前に教えて貰いたかった。

というかギアが勝手に動かしてくれるならそっちの方が楽だと思った。


「なんで身体操作がいるの?」


「面倒くせぇな。漆花には必要だからだよ。」









その日は久々に夢を見た。

新は夢の中で一生懸命組手を行なっていた。

まだ見た事もない剣型武装ギアを使用して格好良いと思った技名をさけんでいた。



「ひてんみモガモガ!」


その目からは涙が流れていた。


















 8カ月後。


 洞窟内時間で10年と少し。














 新は戦技、魔技共にある程度は使える様になり、組手ではダズの本気の動きに付いていけるようになっていた。


 森の獣とも戦い慣れ、実戦の中で油断する様な事もなくなった。




 新が驚いたのは獣の巨大さだ。

 どれもこれも姿は地球の生き物と似ていたが、大きいもので4mを超える物もいて総じて強靭な身体を持っていた。


 




 そして今現在、新は




「…チクショウ。」


「惜しかったな。いい所までは行ったけどな。」



 ボロ雑巾よろしく倒れていた。


 いくらダズに付いて行けるとは言え、最後は必ず地面に転がされる。


 両手は目も当てられないほどに損傷しており、骨折、裂傷、火傷などあらゆる種類の外傷と、特に胴体に袈裟懸けに走る傷は明らかに致命傷である。



 対するダズは傷を負ってはいるものの、平然と新を見下ろしている。


「オラ、今回はここまでだ。水汲み行って来い。」


 ダズは新を治療して、いつもの水汲みを命じた。


「ハイハイ。」


 スタスタと歩いていく新を見ながらダズは考えていた。

(反応速度も粗方限界まで行ったか。これだったもう大丈夫だな。)








「明日は魔物と戦うぞ。」


「っ!…また急だな…。」


「今のアラタだったら大丈夫だ。」


「んで、制限は?」


「全部外せ。あと武器を使ってもいい。」


「要はギリギリってことか。分かった。」


 ダズはいつも詳しい事は説明しない。

 獲物の詳しい情報などは伝えないまま実戦に臨むのである。


 ダズは新に武器の使い方も仕込んでいた。

 といっても大太刀のみだが。

 仙勁漆花流はその特性から、無手でも武器を所持しても変わるのは間合いのみである。

 新は身長が167cmで、無手の間合いが小さいため遠間の攻撃に苦労していた。

 それ故の大太刀であった。







「…覚悟はいいか?」



「出来てる。」


「ハッ上等だ!今日はもう休め。」



 新は少し震えながら眠りについた。









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