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つながる世界  作者: hyrot
はじめまして、異世界
19/30

16


 ギャルトライス市に到着した新はその足で、ブエナ総都へ近い港街リグエルへの定期船チケットを買いに行った。


 ただ出発まで2日あるという事で図書館での情報収集とユニオンで採取依頼を受注した。


 得られた情報は特にないが、船賃で減った懐には有難い報酬は得ることが出来た。










 この世界で移動とは、命がけを意味する。

 総都や首都の近くならまだしも、地方なら隣街まで行くのさえ危険があるのだ。


 その中で海路は空路に比べてまだ安全と言われる。

 何故なら水の中ではマナへの干渉難易度が高く、魔物が使う魔術に対する心配があまりいらない。

 ただ水棲の大型の魔物は只々巨大である。

 普段は深海で暮しているそれらに運悪く捕捉されると、確実に死ぬ。




 そんな背景もあり、船に乗る際はお守りを買うと言う風習があるらしい。


 根っからの日本人気質な新は早速お守りを購入したが、購入した時に聞いた謳い文句を思い出して苦笑する。






(龍神様に守って貰うんだってさ?タクナどう思う?)


(む?ご主人が願うなら、我が海域ごと支配下に…)


(わー!?冗談だって!てかタクナ森を出てから食事してないけど、幻想種って何食べるの?)


(マナだ。それさえあれば人種の様な経口摂取は必要ないが…)


(そっか。ずっと腕に巻き付いてて疲れない?船から離れるなら、水の中で遊んで来ても良いよ?)


(む、そうか?別に疲れはしないが、暇ではあった。少し羽を伸ばして来よう。)


(はいよ。俺は少しデッキに出てるよ。)


 窓から小型になったタクナが出て行くのを見届けてから、デッキに下りる。



 新は現在、船旅の真っ最中である。

 なんの問題もなく、3日が経過しており早ければ4日後にはリグエルへ到着する。


 船は航行速度よりも、安定性を重視しているのかかなり横幅が大きく高さはあまりない。

 その大きさから貨物積載量はかなりの物で、上には申し訳程度に客室が付いている。

 動力は魔力で前方から水を吸い込み、後方から吐き出す事で前に進む。


 そして人界に来て初めて新が驚いたのが、魔導鎧と言われる鎧だ。

 人型のアーマードスーツの様な物らしく、船の護衛に付いているクランが船のデッキに4台並べて置いていた。


 大きさは高さ3m弱もあり、人型を模している事から、その名の通り中に人が入るのだろう。




 新は男の子である。

 そんな物を見て、心が騒がない訳がない。






 とは言ったが、関係無いのにいきなり話しかけるのも、と躊躇している間に3日も過ぎてしまった。


 デッキに出るとちょうど、護衛クランのマーセナリーが鎧の近くで休憩していた。


「あ、あの、ちょっと良いですか?」


「あん?どうした?なんかあったか?」


「俺、その鎧初めてみて、話聞けないかなって思ったんですけど。」


「おう、兄ちゃんも同業か?魔導鎧見るの初めてってのも珍しいな。」


「はい!あの、これ中に人が入るんですよね?」


「そこからかよ…中等学院は…っと出てない奴もいるか。そうだぜ。」


「動力はこの船みたいに魔力ですか?」


「そうだ。ってもギアとは違って船や鎧はコアが消耗して行くがな。大型の魔物や空戦で使用するから、マナに干渉させるのと同時にコア自体のエナも使うんだ。そこら辺は知ってるか?」


「いや初めて知りました!でも人の魔力じゃ足りないんですね。コアのエナ自体を使うって発想が無かったです。」


「兄ちゃん…この世界の魔導製品は大体そうだぞ?ちゃんと勉強教えて貰わなかったのか?」


「え…えぇ、そんなんです。ハハッ」

(ダズの奴、さては機械系全然分かんないから触れなかったな?)


 ダズは色んな事を教えてくれたが、原理などはあまり触れなかったためギアの細かい仕組みさえ新は知らない。


 ちなみに2人の生活はありとあらゆる物を自前の魔力で発現していた。

 料理に使う火や、水、お風呂を沸かしたり、洗濯などもだ。


「ってもこの鎧はかなり大食いで、2級以上のコアじゃないと起動すらしないがな。まあ、ドラゴンなんかと戦うからパワーも必要だしな。」


「へぇ…じゃあ、このクランの人達はみんな上級なんですね!すごいなぁ。」


 マーセナリーで5級を下級、4、3級を中級、それ以上を上級と呼ぶ。


「おう、雑務には中級もいるが大体そんなだな。兄ちゃんは…まだ初級かい?頑張れよ!」


「はい、有難うございます!」


 そこで話を終わらせようとしたが、後ろから話掛けられた。


「君は、何をしてるんだい?」


「え?」


 振り向くと金髪を短く結った中年の男性が立っていた。

 背中には戦斧を背負っている。


「隊長!?この子は、魔導鎧に興味があるらしくて…」


「あ、アラタって言います!この方に色々教えて貰っていました。」


「そうか。ところで君はクランに入っているのかい?」


「いえ、まだ初級なのでこれから頑張りたいです!」


「……そうか。頑張りな。」


「有難うございます。」


 そうして新は客室へ上って行った。











 その後ろ姿を、隊長と呼ばれた男は見つめていた。


「隊長、あの兄ちゃんがどうかしたんですか?」


「いや…」


(あれが、初級…か。ランクから考えて身体強度がかなり貧者そうだが、あの筋肉のつき方は長年戦って来た者の証だ。)


「面白い子だな。」


 男はそう言って少し笑った。



 男の名はアルガンズ

 かの有名な特級、ライナーをトップに据えるクラン「閃光獅子」の第15部隊を統べる1級マーセナリーである。

 この船自体がクランの運営する下部組織の持ち物だというのだから、その規模は推して知るべしである。








 そんな御仁を新から見ると


(うーん、あれで1級か2級か。本当に未開領域開発できるのかな?)


 これである。

 これは、新の基準があの森になっているからである。


 わかりやすく例えると、新を殺しかけたあの狼に苦戦するレベルである。

 この世界の総人口はおよそ、23億人。

 これで戦闘に従事するものが2億人以上というのだからこの世界の危険度は分かろうものだ。

 その中でマーセナリーは5千万人ほどで、日本で言ったら国民半分が傭兵である。

 完全に狂っている。

 (元の世界の軍事評論家から見れば、逆に魔物の脅威度が推定できてしまい、おそらく脱糞ものだ。)

 また内訳として1級は5千人ほどしかいない。



 それでこのレベルなのだから、人類が滅んでいない事が奇跡である。

 魔物に対する最強の起動兵器の原動力が、その魔物のコアなど理不尽すぎる。

 

 


 この事に新は気付いていない。










 船旅は何事もなく済んだ。

 平和な1週間を過ごした新はそのまま、ユニオンの支部に直行した。



 ちなみにタクナが持ってきた拳大のコアは氣を使って強化した腕力ではるか彼方に投げ捨てた。

 どう見ても暴れたらシャレにならないレベルの魔物の物だった。

 タクナ曰く『少し苦労した』

 ということはやっぱりやばい奴である。


 アルガンズが見れば、額を地面にめり込ませて

「ください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 といわれただろう。

 その後に間違いなく人界すべてにニュースとして報じられたはずだ。


 


 ユニオン・リグエル支部


「すみません、ブエナルトまでの護衛依頼はありますか?」


 新はキセン総で学んだことを生かして、金策を平行して総都まで行くことにした。


「はい。ございますよ。ただ、5級の方ですと試験を受けて頂かなくてはなりません。」


「え?キセンでは…いや、分かりました。どんな試験ですか?」


「一緒に受ける方々が望む形になりますが、大抵は戦闘力を測ることになりますね。」


「分かりました。すぐに受注出来ますか?」


「はい。ブエナルトまでは本数が多いので。」


「じゃあお願いします。」


「それでは、クラン、パーティーなどに照会をかけますのでこの整理番号を持って少々お待ち下さい。」





 紙に番号が書かれた物を渡されて、待つように言われた。


 それから手持ち無沙汰になってしまったので併設されている食堂で食事をとって待っていると、1時間ほどして、放送で番号を呼ばれた。

 指定されたカウンターへ行くと、3人組の男女がいた。

 何故か同年代の男の子がこちらを見て胡乱気な目をしていたが。


「この子か?分かった。戦闘力をみて決めるよ。」


 一番の年長者の男が受け付けにそう伝えた。


「はい。それでは、結果の方は上の者に直接伝えれば結構ですので。」


「あぁ、分かった。それでは行こうか?」


「はい。よろしくお願いします!」


 そのまま付いて2階の鍛錬場へいく。


「私はこのパーティーのリーダーをしているナギドと言う。」


「俺はアラタと言います。よろしくお願いします。」


「お前ホントに戦えるのか?」


「よせ、カッツ。この子はカッツ、こちらの女性はアルマと言う。全員4級だ。」


「はい。俺は5級です。」


「ハァ?初級者は採取依頼でもしてろよ、図々しいな…」


 どうやら実力も無いのに上の者に寄生しようとしてると思われているらしい。

 新は少しだけイラっと来たが我慢した。


「カッツ、いい加減やめなさいよ。最近あんた酷いよ?ハァ…」


「うるせ~な。アルマだって、こんなガキに戦えるとは思えないだろ?」


「カッツ、やめろ。」


 ナギドに注意されるとカッツは少し大人しくなったが、それでも蔑むような目を向けて来る。


「すまん。それでアラタの能力を確認させて貰ってもいいか?実戦形式が良いと思うんだが。」


「はい。大丈夫です。」


「じゃあ…カッツお前がやれ。年も同じくらいだしちょうどいい。」


「ハァ?メンドくさいな~…ヤるだけ無駄だよ。」


「カッツ、そろそろ人に対する態度を学べ。依頼人と揉めたばかりだろう?それに実力が下の者と戦うのもいい刺激になる。」


「ハァ、分かったよ…オラやるぞ。すぐ終わんなや?」


 そう言って模擬剣を手に取るカッツ。


 新は腰の大太刀を外し構える。


「…オイ、お前武器はどうした?」


「俺は無手だよ。あれは大事な人からの貰い物だから持ち歩いてるんだ。」


「…ならあんなガラクタ…あ~一気にメンドくさくなったわ…」


「カッツ、始めろ。」


「ハイハイ、んじゃいくぞ。」



 2人は構えた状態で合図を待つ。


「始め!」


 合図と同時にカッツは片手で振り被った剣を新に振り下ろす。

 それを右足を横にずらし、半身になって躱す。


「っ?」


 一撃で決めるつもりだったのかカッツが驚くが、新は半身になったまま様子を伺っているだけだ。


 振り下ろした剣はそのまま床を叩くが、カッツは両手に持ち直し、切り上げを放つ。

 しかし、一歩横にズレた新には届かない。


 カッツは以降も攻撃を仕掛けるが、擦りもしない上に新は大きな動きを見せずに躱していく。


(こいつ攻撃が雑過ぎるな。一撃の後にどう繋げるかも考えてないのか?)


 多少ガッカリしたが、このまま終わらせようと思った時、魔力の揺らぎを感じた。

 恐らく戦技を放つつもりだ。


「カッ「うるせぇ!黙ってろ!」、」


 アルマがこの後の行動を予測して止めようとするが、カッツは聞こうとしない。


「死ね!スラッシュ!」


 この時、新は初めて仙頸以外の戦技を見たが、音声起動で放たれたそれは余りに遅かった。


(これが戦技?嘘だろ?)


 さっきから見れば多少早くなっただけの斬り降ろしだった。

 それを先程と変わらずに避ける。


   ガン!


 床を大きく叩く音が聞こえた。

 追撃が来なかったので、不思議に思っているとカッツが剣を落とした。


(まさか…)


 戦技を使用して、思いっ切り床を叩いたため手が痺れている様子だった。


 その様子をみて困惑気味にナギドとアルマを見ると、彼等は唖然とした表情でこちらを見ていた。


 これで終わりかと思っていたのだが、カッツは剣を拾い、怒り狂った様にこちらに向かってきた。


 新は足払いをして、カッツを転ばせて一度大きく距離をとりナギドに話しかける。


「あの…どうすれば終わりますか?」


「え、あぁ、もうじゅう「フザケンナ、格下の癖にぃい!」、おい、カッツ…」


 カッツはもう聞こえていないようで、さらに戦技を放とうとしている。


 新は埒が開かないと思い、発動前に近づく。

 そして振り下ろす瞬間を狙って、鼻に一撃を入れた。


「ぶっ!?」


 しかしギアにプログラムされた戦技は、使用者の身体を操作しながら発動してしまう。

 仰け反った状態で後ろ足に力を込めたので、滑った様に転びながら、剣を上に向かって振るう。


「はぁ…もういいですか?」


「……あぁ…」


「…何、これ…」


 新は悩んでいた。

 このカッツと言う子とは、上手くやれる気がしない上に戦い方が雑過ぎる。


「あの、「でめぇ、まだ終わってねぇ!」…ハァ。」


 今度は立ち上がり様に、横薙ぎをしようとしたカッツの握りに向けて蹴りを放つ。

 剣は明後日の方向に飛んで行った。


 そして、腕を抑えて蹲っているカッツを放ってナギドに話しかける。


「すみません。この人とは上手く依頼を終えられる気がしないのでお断りしてもいいですか?」


 場外の2人は言葉を発せずにこちらを見たままだ。


「??」


 その時、近くにいたユニオンの者が様子を見に来た。


「すみません。鍛錬での戦技の使用は…」


 そこでナギドが漸く再起動する。


「っ!あぁ、すみません。あの、アラタ少し話をさせて貰えないか?」


「いやでも…」


 カッツは射殺さんばかりに新を睨んでいる。


「カッツ!いい加減にしろ!」


「っ!?でも、こんな雑魚に…!」


「ハァ、ホントいい加減にしなよ?」


「あの、俺はお断りしようかと…」


「すまん。取り敢えず、これで話を聞いてくれ。」


 ナギドは腰を折って謝罪をする。


「ハァ、分かりました。」


 そのままユニオンに別室を借りて椅子に腰掛ける。

 一応様子見にユニオン職員も同席している。

 カッツはふて腐れた様にそっぽを向いていた。

 ちなみにアルマに怪我をは治療されていた。


「すまん、こんな事になって。取り敢えず俺はアラタに一緒に依頼を受けて欲しい。」


「いや、俺は、カッツ君とは…」


「カッツはこの依頼を外すよ。」


「なっ!?ナギドどう言う事にだよ!?」


「あんた、ホントに分かんないの?これ以上問題起こしたらパーティー解散するって私達話したよね?」


「そう言う事だ。人に向かって戦技を放つ奴は一番タチが悪い。」


「…いや、そこまでは…」


 新が面倒になりそうだと逆にカッツを擁護しようとするが、横から職員が口を挟む。


「カッツ様に関しては、ユニオンにも幾つか苦情が寄せられております。今回の事に関しては、ユニオンとしても登録証の凍結と講習への参加義務を考えております。」


「ハァ!?ふざけんなよ、それならユニオンなんか辞めるわ!!」


「なら、これ以前に失敗した分の損失を補填して頂きます。正直、このパーティーは問題に上がっておりまして、何件か依頼人へ依頼金の返金を求められている案件があります。以前内密に調査した結果、その原因はカッツ様にあると報告書が上がってきておりますが。」


「なんだと… ナギド、アルマあんた達知ってた…のか?」


「正直最初に組んだパーティーだから思い入れもあったが、もう、手に負えん。」


「私も。この依頼が最後のつもりだったし。」


「…そうかよ!幾らだ、幾ら補填すりゃいい?!」


「53万シル程です。」


「え…?そんなにあんのか?」


「ちなみ払えない場合は、総督府に報告する事になっております。」


 ここまで蚊帳の外の新だが、正直ついて行けない。


(何したら、そんなになるんだよ…)


「…あんたらの、言う通りにするよ…。」



 依頼の時間もあるので、そのままナギドとアルマは新と一緒に出ていった。


 その後ろ姿を、仇の様に見つめるカッツに対して


「これ以降、あなたがユニオンを介さずアラタ様に接近しただけで、ユニオン条項の適用範囲となり特務隊があなたを拘束しますが、理解していますか?」


 それを聞いたカッツは青い顔をして、首をブンブンと縦にふるのだった。








「改めて、ナギドだ。よろしく頼む。」


「アルマよ、お願いね!」


「あの、なんかすみませんでした。」


「いやいや!こちらこそ本当に迷惑を掛けた!申し訳ない。」


「私も止められなかったからね。ごめんなさい!」


「いえ、そんな!」


「このまま依頼を受けてくれてホントありがとう。助かったわ。」


「いえ、じゃあ少しの間よろしくお願いします。」







 そしてブレナルト行きのバスに乗り依頼を遂行する3人であった。


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