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新は数日をアルダ市で過ごしていた。
たまに採取の依頼を受けるが、それ以外は図書館で調べものをしていた。
ちなみに、依頼1回で報酬は6万シルほど。
1ヶ月に必要な生活費が10万シルだと考えると、やはり割が良い。
それだけ危険も多いということだが、まだ依頼中に戦闘になった事はない。
体が鈍らないように人目がない時は、自己鍛錬に勤しんでいる。
主に調べた項目としては
・異世界人について
・次元震について
・900年前にあった主な出来事について
である。
・異世界人について
歴史上で初めて確認されたのはおそよ840年前。
中国から来たと言う者、スペインから来た者、イギリスから来た者が有名で、それぞれ身体操作と身体強化の概念、羅針盤、魔導力の活用方法に関連した可能性があると記されていた。
仙人以外の2人は名前も、容姿や人物像すら分からなかった。
また確認出来た者で狩猟での狩を行う者や裸の者もいたために、本当に元の世界の世界中から来ている事が考えられる。
また次元震が未開領域で起こった場合は、もし来てもすぐに死亡するだろう為分からないともあった。
・次元震について
分かっている事は殆どない。
ただ、どの次元震も恐らく同一の世界と繋がっている事が考えられる。
次元震はマナに大きな揺らぎが出来るので起こった事は簡単に分かるが怒る前に把握する方法も、起こる理由も分かっていない。
・900年前にあった主な出来事について
今と違い3つの国があった。
ただその時期に1つの国が戦争によって滅びている。
その時の教訓から1国は魔術に力をいれ、もう1国は魔導工学に力をいれるようになった。
それ以外に大きな出来事は無かった。
と言うよりもかなり悲惨な戦争だったらしく、起こった事件など全てその戦争が原因だったりしたほどだった。
これが数日の結果だった。
焦っても仕方が無いとは分かっているが、帰還方法についてはやはり穴に飛び込む以外は思いつかなかった。
ただ専門用語や訳の分からない式が書かれており、新に理解するのが難しいと言う事にもあり、自分1人では難しいと分かった。
この世界には専門の研究機関として学術院と言う大学の様なものがある事は知っていたので、有名な学校に行って見ようと思い立った。
簡単に内部で調べ物が出来るとは思えないが、まずは行ってみる事が先だと思ったのだ。
新は図書館の司書に聞く事にした。
「すみません、国で有名な学術院って言えば何処ですか?」
「あら、興味があるんですか?…やっぱり 有名なのは総立学術院ですね。目指しているのは、何処です?」
「えーと、悩んでいて…次元震や異世界人なんかに興味があるんですけど。」
「あら、それならブレナ総立学術院でしょう?後の2つは魔術と、魔導工学に力をいれてますし。」
「やっぱりそうですね、ありがとうございます!」
「いえいえ、頑張って下さい。」
挨拶をしたあと、すぐに学術院へと向かう事を決めた。
大きすぎるこの国は、1番大きな行政区分が3つに別れている。
その1つにブエナ総があるのだが、そこの総都へ向かうとなると海を渡る必要があった。
現在のシエン総から目的地までの距離を調べると、約8000キロ。
森の中を走破した時と違い、今回が海がある。
また、さすがに人外の速度で走るのは目立ちすぎるため、ユニオンに相談をすることにした。
ユニオンに付くと、新は案内の人に尋ねる。
「すみません。ここから移動をしようと思ってて、それについて相談に来たんですが。」
「はい、少々お待ちください。」
案内の男性は、手近なカウンターで話をした後、戻ってきた。
「それでは4番カウンターへどうぞ。」
「ありがとうございます。」
そのまま、カウンターに向かうと早速要件を伝える。
「ブレナ総まで行きたいのですが、どうすれば良いですか?」
「具体的には、ブレナのどこになりますか?」
「ブレナルトまでです。」
「そうすると早いのは航空機ですね。かなり高いですが。」
「それは、どのくらいですか?」
「120万シルほどだと思いますが…厳しいなら陸路、海路の複合になりますが2週間ほどかかります。」
高高度を飛行する魔物は総じて危険なものが多く、空の上だと戦闘手段も限られる。
その為、空戦能力を持つ専属マーセナリーを乗せ、少人数で移動するため航空機はとても高い。
新の現在の所持金は36万シル。
どう考えても空路は無理だ。
「海路を利用する場合、船の費用は?」
「そちらは12万ほどでしょう。陸路で魔導バスを使用するともっとかかると思います。ただ…」
「それにしようと思います。港までは徒歩にします。」
「えっ?あの…失礼ですが、アラタ様のランクは?」
「あぁ、5級になります。」
「…ここから一番近い船が出る都市はギャルトライス市になりますが、その近くに魔物の目撃例がある山があります。開発が遅れており、1本道なため迂回路もありません。」
魔物が生息するこの世界は、マーセナリーでさえも道が引かれていない場所に入ったりはしない。
依頼以外でそんな危険を冒せば、死ぬこと事が分かっているからだ。
新にとって問題はないのだが、ユニオンに所属している以上、忠告として聞く事にした。
「そうですか…ちなみに魔導バスの料金は?」
「ユニオンとして護衛契約を結んでいるので、依頼を受ければ無料ですよ?少ないながら報酬も出ますし。」
「その依頼を受けます!大丈夫ですか?」
「はい。4級の数名と同時受諾になりますが?」
「お願いします!!」
「分かりました。次の契約魔導バスの出発は午後2時です。早速依頼を受けますか?」
「はい!」
「それでは手続きをしておきます。また食費や、宿泊費などもあちら持ちですので装備の整備だけで結構です。依頼の1時間前には現地に集合してください。また件の魔物については3級以上の方限定となっておりますのでお気をつけください。」
「はい、ありがとうございました!!」
お金はいくらあっても構わないので、移動と金策につながる依頼に飛びついた。
マーセナリーになって本当に良かったと、新は思った。
昼ご飯を食べて、宿を引き払い集合場所に到着した。
長距離移動のバスの駅は、かなり賑わっていた。
カウンターにて、依頼について尋ねると別室に案内された。
しばらく待っていると、4名の女性が入ってきた。
2名ほど新を見て顔を蹙めたが、気にせず立ち上がり挨拶をする。
「こんにちは、アラタといいます。今回はよろしくお願いします。」
すると1人の女性が挨拶を返してくれた。
「こんにちは。今回はよろしくね。それでは打ち合わせをします。準備は大丈夫ですか?」
「はい!」
打ち合わせの内容は新の能力把握と役割だった。
5級というと、すぐさま荷物運びに決まった。
と言っても4人はパーティーを組んでいるらしく、持ち歩くのは予備の武器と軽食が詰まったバックパックのみだった。
またバス内ではもしもの時の乗客の誘導をお願いされた。
仕事内容を確認し終えた後はバスが到着するまで待機となった。
それぞれに新は挨拶に回ったが特に問題もなく済んだ。
最初に挨拶をしてくれたのがラナ、その他前衛がリアス、フィヤ、魔術師がシータといった。
その後乗客と共にバスに乗り込み出発した。
バスは運転席を除いた四隅にスペースがあり護衛が外の様子を伺っている。
街を発ってから5時間ほど走った頃、小さな街に付いた。
今日はここで一泊する様だ。
荷物をもってラナ達の後に付いていくと、宿泊施設に付いた。
依頼では護衛の部屋は1つのみらしく、5人で1部屋だった。
(俺が嫌だったんじゃなくて、多分男が嫌だったんだな。)
初めて顔を合わせた時の様子を思い出していると、ラナに食事に誘われた。
「一緒に食べない?アラタは護衛依頼初めてでしょう?」
「ありがとうございます。ご一緒させてもらいます。」
施設の中に食堂があり、席に座って注文をした後、新は黙って4人の話を聞いていた。
するとシータが新に話しかけてきた。
「アラタはいくつ?私と同じくらいに見えるけど。」
「俺は16歳になりました。シータさんは魔術師なんですよね?」
「そうだよ。前衛志望かな、装備を見ると。」
「はい。まだ魔力が少なくて…」
すると他の3人も会話に入ってきた。
「16歳でソロってのは珍しいけど、パーティー組んだりクランに入ったりしないの?5級で一人ってのはあぶないよ?」
リアスは新を心配してくれているようで、アドバイスをくれる。
実はユニオンでも勧められていたのが、クランまたはパーティーへの加入だ。
ほとんどの場合、ユニオンに登録したばかりの初級者はパーティーを作る。
新のような例外を除けば登録したてのマーセナリーは5級、よくて4級程度だ。
この程度の実力で5級の魔物に遭遇したら、パーティーでも危険な上にソロなら確実に死ぬ。
運悪く4級、3級と遭遇したら対処など不可能だ。
ユニオンが進めてくるクランなどは新人育成にも力を入れており、上級者が指導に当たるが、そこに引っかからない新人などはパーティーを組み地力をつけるのだ。
「ありがとうございます。ただ、色々目的もあって移動が多くなることが分かってたので、迷惑になるかなと思って…」
「目的って何だい?」
蓮っ葉なしゃべり方をするのはフィヤだ。
「ちょっと興味があって、次元震なんかの事について調べてるんです。」
「次元震って言ったら…あの異界から色々流れ着くっていうやつかい?」
「はい。そのためにお金を稼ぎながらブレナの学術院を目指していて。」
「そらまた遠いとこまで。んじゃ、ギャルトに付いたら船か。」
「最初は男の子と一緒は少し不安だったけど、アラタがおとなしい子で良かった。」
「え?」
「男のマーセナリーは乱暴者や軟派な奴も多いから、女性は結構迷惑すんだ。」
「そうなんですか。…色々大変ですね。4人はパーティーを組んで長いんですか?」
「もうすぐ4ヶ月かな?同じ時期に4級に上がったから、ユニオンの紹介で。」
リーダー格のラナが答えると、リアスが嬉しそうに付け加える。
「ほんとに偶然なんだけと、相性いいんだ私達!この間も魔物倒したんだよ、4人だけで!!」
「まぁ、たまたまうまくいっただけさ。けどこの4人は楽しいね。」
すると4人の会話が盛り上がり始めたので、新はおとなしく座っていた。
しばらくして食事も終わり、部屋へ戻って全員そのまま寝てしまった。
4人の女性が同部屋で寝ており、少し緊張した新だった。




