13
新はあらかじめお金を持たされてたがこれからの生活を考えると十分な量では無かった。
馬鹿らしく成る程あったコアも、魔物によって大きさや純度が違い人界で売りに出せば騒ぎになる様な物しか無かった。
(ダズの予想)
よって旅のための旅費は、働いて稼ぐしか無かった。
帰る方法を探しながら稼ぐには気軽に移動が出来るマーセナリーが最適だったのだ。
取り敢えず見つけた安宿で、改めてこの世界の事を考えていた。
この世界はエネルギーを魔力に頼っていると言うだけで、元の世界とそれ程差はない。
しかし一般人の能力が新の世界と同じなのに、魔物がいると言うのが脅威だった。
また、現在この人界は過飽和気味であり未開領域まで人界を広げようとしている様だ。
国は一国のみで国名をキセンラルナルク王国と言う。
元の世界でいえば、アジアからヨーロッパ、アフリカまでを含めた様な大きすぎる国だ。
こうなったのも魔物という大きすぎる脅威のために纏まっている結果である。
その為、戦える者が前の世界以上に必要なのだ。
そこで規律に縛られる事を嫌って軍に入らず、民間で戦闘をこなす者たちがいた。
それがマーセナリーと呼ばれる戦闘屋である。
数が増えた時に当時最大だったクランが声を掛けてユニオンという互助組合を設立した。
この事は国も歓迎しており、獣や魔獣による間引きや被害の軽減になるからであった。
今日新が登録したのはそんな組織だった。
ユニオンの大きな目的は、未開領域開拓の為の人材確保。
戦力を確保する為に各地に支部を置き、人材発掘、一般人からの依頼を受け付けそれを受託した者の人材育成に使う。
ただ、ユニオンは互助組合の側面が強く出ており、元々が束縛されるのが嫌いな者たちが集まっている為、登録者の移動などには強く言わない。
マーセナリーという職があって良かったと安心した新であった。
次の日、新は依頼を受けに来ていた。
早い内にお金を稼いでおこうと思ったのだ。
「すみません、依頼を受けられますか?」
「登録証を拝見します。…承りました。少々お待ちください。」
そのまま待っていると、少しして紙を手渡された。
「現在5級の方が受けられるのはこのくらいです。」
仕事内容の大まかな種類と報酬が記載されている紙を見る。
・自然素材の収集
・上級マーセナリーの移動に伴う雑務
・近くの山での警邏、可能なら害獣の間引き
1番目と3番目は、この世界では魔物がどこに出現するか分からないため、幾ら人界でも未開墾の土地には入ったりしないため、マーセナリー用の仕事しては理解できる。
この世界では危険度が大きい為、資源の確保がかなり難しいのだ。
焼け石に水な気もするが猫の手でも借りたいと言う所だろう。
2番目は恐らく遠征へ向かうクランへ帯同しての雑務と言う所か。
向かう先が、ここから西と書いてあるため戻る事になってしまう。
この依頼は却下だった。
少し悩んで1番目を選んだ。
「分かりました。素材としてはここに記載されている物が依頼として出されている物なので確認下さい。それではお気をつけて。」
「はい、ありがとうございます。」
軽く会釈をすると、新は支部から出ようとした。
その時、昨日の試験で評価をしてくれた男性が声を掛けてきた。
「お、もう依頼か?偉いな、えーっと…」
「アラタです。昨日はお世話になりました。」
「そっか。気を付けてな?このあたりは最近獣が多いからな。」
新は感謝して会釈をしつつ、支部を出た。
特に問題も無く、素材を集め終わり山を降る。
しかし新の事を支部からずっと付けている者の事には気付いていた。
こちらに何かする素振りも無かったので、放って置いたが。
ユニオンに戻って素材を提出して、報酬を貰う。
これが一般的な依頼の流れだったはずだ。
なのに新は今、頭を下げられていた。
「すみませんでした。」
今、頭を下げているのはユニオンの職員だった。
あれから帰るとき、後を付けていた者が後ろから近寄って来たので、どうしたのかと思っていると、カバンから素材を抜き取り去って行った。
「??」
別に新の報酬が減るだけで、大きく目立つ事も無いかと犯罪を取り締まる組織には通報もしなかった。
するともう一度近付いてきて、今度はよく分からない固まりを入れてきた。
ユニオンに到着して、カバンを確認するとと、取ってきた鉱物の代わりに石が入っていた。
意味のない事をするなと思った新だったが、石を取り出して提出した。
提出を受けた受付嬢は、提出用のカバンの中身を確認したのだが、軽く首を捻ってもう一度確認した。
その時、隣から男性がやってきて鉱物素材を置いた。
「合格だ。こいつは信用できるよ。」
出るときに声をかけた者で、新を付けていた人物でもある。
よく分からなかったが、受付嬢を見ると、すこしびっくりしたような表情でこちらを見ていた。
「あの?」
「あぁ、申し訳ありません、アラタ様。ユニオンには最初の依頼までが登録試験として含まれているのです。今日はアラタ様の試験を担当したのが、彼です。」
「坊主、お前は提出する前にカバンを確認したのは上出来だった。山の中の歩き方もお手本にしたいくらい素晴らしかったよ。」
「えっ何のことですか?」
「今日は俺がずっと付いてたってことだ。これも返すぞ。」
男性は先ほど抜き取った鉱石を返してきた。
「えっそうだったんですか?これは…鉱物と思って採取したんですが、ただの石を取ったと少し落ち込みました。試験てそういうことだったんですね。いつすり替えられたかもわかりませんでした。」
「…………そうか。」
「すみませんでした。これにて登録試験は終了になります。」
「いえ、信用してもらえたなら良かったです。これもし気付かずに提出していたらどうなっていたんですか?」
「それは…ユニオンの特別講座を受けてもらう予定でした。色々な基礎知識を学べるように。」
「そうですか。では今日はもうこれで。」
「はい。お疲れさまでした。」
去っていく少年の背を見ながら、2人は会話をしていた。
「偉いですね、提出前に素材の確認が出来るのは。大抵が引っかかるのに」
「……」
「でもどうしてカウンターで?合格でも普通は別室に呼びますよ?」
「…あいつ、よく分からない奴だ。」
「え?」
「試験の事は知らないとしても、俺が今日一日付いてたことも、気配を消して近づいたことも気付いていたと思う。」
「いや…それはいくら何でも。アルナックさんは3級ですよね?」
「そうだが、あいつ試しに殺気飛ばしても反応しなかったくせに、獣が近づいたらきっちり反応してた。それも大型や毒のある奴に限ってだぞ?そんな敏感な奴が、少しの殺気に気付かない訳ないと思うが。」
「そんなに、ですか?いやでも…考えすぎじゃ?」
「かもな。ただ、俺は普通じゃないと思うぜ。」
「…どうしますか?」
「別に今すぐどうこうはないが、拾い物かもしれん。目をかけてやってくれ。」
「分かりました。」
どう考えても不可抗力で目を付けられた新だった。




