ショッピング
お買い物です。
シグレとアカリの行きつけの洋服屋につくと二人はダリアの手を掴んで案内していた。
シグレの白い肌に黒い髪と似た、日に当たるとうっすら緑色に光る黒髪に白い肌の美幼児のアカリはニコニコとドレスを選んでいる。
ああやってちょこちょこと動くアカリは本当に天使の様で微笑ましい!
「お兄様!このワインレッドのドレスとナイトブルーのドレスはどっちが良いと思う?」
「どっちも似合いそうだね。」
「じゃあ、キープ!このピンクのドレスは私に似合うと思うでしょ!お兄様!」
「そうだね。」
アカリはちゃっかり自分のドレスもキープしているらしい。
「黒が似合いそうだけど結婚式には不向き?」
「奥様!あの、」
「ダリアさんはとりあえずこれとこれとこれの試着をしてください。」
シグレは大量のドレスを彼女に押し付けた。
シグレの瞳が輝いている。
「シグレは楽しそうだね。」
「解ってしまいましたか?ダリアさんを自分の思い通りに出来ると思ったら楽しくなってしまいました。」
シグレのウキウキした雰囲気にダリアは少し怯えているように見えた。
ダリアはそのあと物凄い量のドレスを試着させられていた。
僕は色々なドレスに身を包むダリアが見れて幸せな気がした。
ダリアがぐったりした頃シグレがワインレッドのドレス、アカリがミッドナイトパープルのドレスを持って睨み合っていた。
「「絶対こっち!」」
天使二人の論争にダリアがオロオロしている。
「二人とも!」
「「お兄様はどっちが良いですか?」」
白熱しすぎてシグレまでお兄様呼びになっていて僕は苦笑いを浮かべた。
「どっちも似合いそうだね。」
「お兄様~‼」
「………両方買おっか?」
僕の言葉に二人は可愛いエンジェルスマイルを作った。
「ドレスに合ったアクセサリーも2つ分ですからね!」
アカリが生意気にそんなことを言うとダリアの顔は真っ青になった。
「そ、そんな事ダメです!私なんかに無駄遣いしないで~‼」
ダリアの泣きそうな顔にまた苦笑いを浮かべてしまったのは許してほしい。
「気にしなくて大丈夫だよ。」
「宰相様!無駄遣いです!私へのお詫びはもう十分ですから‼」
僕は少し考えて言った。
「ダリア………じゃあドレスとアクセサリーの分、僕の我が儘を聞いてくれないかな?」
「………」
「勿論簡単な我が儘だよ。」
「………解りました。」
「じゃあ、名前で呼んで!」
彼女は目に見えて真っ赤になった。
「ほら、イディオン!」
「………い、イディオン、様。」
なかなか良い。
僕が、耳まで真っ赤なダリアが可愛くてニマニマしているのをシグレとアカリが呆れ顔で見ていたなんて、その時の僕は気が付いてなかった。
ジュエリーショップでは、ネックレス、ピアス、指輪の類いを中心に見ていく。
髪止め見ていたダリアがシグレとアカリが手に持っているジュエリーの数々に青くなる。
「二人とも!私はイミテーションで良いですから‼」
「「ドレスに合わせてるの!」」
似た者親子にピシャリと言われてダリアがビクッと体を跳ねさせた。
「ああ、本物ばかり~。」
ダリアは鑑定が出来るのか?
「本物が解るの?」
僕の言葉にダリアは苦笑いを浮かべた。
「家の妹達は可愛いので、理不尽なデートを申し込まれる事が度々ありまして……宝石やるからデートしろ!みたいな………そこで、私の出番です!私が鑑定して偽物なら妹達に偽物を渡そうなんてデートは100年早いと追い返し、本物ならこんな高価な物は受け取れないと追い返します‼」
「僕のプレゼントはちゃんと受け取ってね!」
「ですが………」
「君が断ればアカリもシグレも泣いてしまうよ!」
ダリアは難しい顔をして項垂れてしまった。
僕はそんなダリアの頭を撫でた。
「宰相様…」
「イディオン!」
「………イディオン様。」
「うん。」
「なぜ………私にこんなに良くしてくれるんですか?」
「………君が………素敵な女性だから。」
「?」
「仲良くなりたいんだよ。」
ダリアは暫く黙って言った。
「友達?」
「うん。………駄目かな?」
本当はもっと近い存在になりたい。
「イディオン様と………友達………」
「良い?」
「………うん。」
「じゃあ、様無しね。」
「へ?それはダメダメダメ!」
僕はダリアの指先を掴んで言った。
「御願い。」
ダリアは顔を真っ赤にして困った顔だ。
「………解った。」
「やったね!じゃあ、早速呼んで!」
「ふぇ!………い、イディオン………様つけちゃダメ?」
「ダメ。」
「………イディオン!」
僕は嬉しくなって、今も掴んでいる彼女の指先にチュッとキスをする。
ダリアの驚いた顔に可愛いな~って思ってしまった。
「何イチャイチャしてるんですか?」
「シグレ、決まったかい?」
「はい。バッチリです!ダリアも気に入ってくれると良いんだけど?」
シグレの差し出したアクセサリーの数々にダリアが真っ青な顔で僕を見た。
「い………イディオン!無駄遣い!」
「必要経費だよ!ダリアの幸せは僕が作るよ!とりあえず糞男の結婚式はダリアが一番幸せじゃないと!」
僕が笑うとダリアは諦めたように苦笑いを浮かべた。
帰り間際、ダリアが1つの指輪を見つめていた。
羽が巻き付いたようなデザインの指輪だった。
「欲しいの?」
「いらない‼イディオンは無駄遣いが過ぎる‼」
「………普段使わないからね………」
「へ?」
「………城の執務室の横に小さな下働き用の部屋があるんだけどそこに今は住んでるんだ!城の食堂ならタダだし宰相の服は支給されるし、魔法局員の時に作った普段着は今も長持ちでね!あまり着ないからかな?だから、給料は貯まる一方なんだよね。シグレとアカリのプレゼントぐらいにしか使わないから気にしなくて良いんだよ!」
僕の言葉にダリアは溜め息をついた。
「ちゃんと自分のために使って。」
「うん。だから、僕の自己満足に付き合ってね。」
「………屁理屈!」
「ごめんね。」
ダリアは諦めたようだった。
僕はダリアの見ていた指輪をみてゆっくりほくそ笑んだのだった。
イディオンお兄様はダリアちゃんを甘やかし隊!