名案
シグレからダリアに会っては駄目だと言われて3日。
思い出すダリアの真っ赤な顔とか奇妙な悲鳴などが僕の疲れを癒してくれている事に気がつき始めた。
ダリアに会いたい。
だけど、ダリアに軽蔑されるのは嫌だ。
それを防ぐにはシグレの言いつけをまもり、仕事を頑張るしかない。
僕は通常業務を午前中に終わらせる勢いでしていた。
「失礼します。頼まれていた資料をお持ちしました。」
「!」
魔法局に頼んでいた資料を持ってきてくれたのはダリアの父親のマイルズだった。
「………マイルズ!」
「はい。イディオン様。」
「………質問しても良いかな?」
「はい。イディオン様。」
「………君の娘さんなんだけど…」
「?どの?」
「ああ、ダリアなんだけど…」
「何か失礼をしましたか?」
マイルズは驚いた顔で僕の顔を見た。
「違うよ!とても素敵な人だ!家の天使二人が姉の様に慕っている。だから、婚約者とか居たり結婚が近かったりしたら家には来なくなってしまうのかな~って心配になってね‼」
「………………ダリアは一年前まで婚約者が居たんです。しかし、その相手はダリアに『お前は母親にしか思えない!』っと言われて婚約破棄されてしまったんです………ふさぎこむダリアに希望をくださったのがシグレ様です。アカリ様の家庭教師をさせていただくようになってあの子はまた笑える様になったのです。………それなのに、あの糞男は新しくできた女との結婚式にダリアをよびやがって………ダリアはダリアで意地になって結婚式に行くって言いはるんです!相手の女はダリアを目の敵にしていた同級生で……………スミマセン‼余計な事を言いました‼失礼します‼」
マイルズは慌てて僕の執務室を出ていった。
ダリアにそんなことがあったなんて………
僕は暫く考えると、仕事をさっきよりも素早く終わらせたのだった。
仕事が片付くと僕は魔法陣で家まで異動するとダリアを探した。
ダリアはシグレの部屋でアカリとシグレに囲まれてお茶を飲んでいた。
「お邪魔しても良いかな?」
シグレに睨まれたが気にしない。
「お兄様!どうしたの?」
アカリが首をかしげた。
「マイルズに話を聞いてね‼ダリア近々友人の結婚式に行くらしいね?」
デリカシーのない言葉に空気が凍るのが解ったが、僕は続けた。
「その結婚式に着ていくドレスを僕に買わせてもらえないかな?」
「は?」
「君の美しさを最大限にいかせるドレスを僕に用意させて欲しいんだ!こないだのお詫びもかねてね‼」
僕の言葉にシグレは何を言いたいのか解ったみたいだった。
「それは素敵な考えですね!」
「だろ?」
「ダリアさん!イディオン様の気持ちに甘えてしまいましょう!」
「ですが………」
「ダリア僕はね、君がとっても素敵な女性だって思っているんだよ。糞男の結婚式に行って糞男と一緒にならなくて幸せだって思ってほしいし、糞男には綺麗な君と結婚出来なくて悔しいって思って欲しいんだ!」
「お兄様、性格悪い。」
「性格が悪くなくちゃ宰相なんて務まらないんだよアカリ。」
僕が笑うとアカリは呆れたような顔をした。
「ダリアさん。私もイディオン様に賛成です!ダリアさんは家にはなくてはならない存在です!だからこそあんなのと決別できて幸せだって思って欲しい!イディオン様はかなりお金持ちですから甘えてしまえば良いです!」
「ですが‼」
躊躇うダリアに僕は笑顔を向けた。
「家の天使達はファッションには煩くてね!二人に任せれば世界一美しくしてくれるよ。」
「お兄様!アクセサリーも良いでしょ?」
「勿論だよ。」
「!?だ、駄目です!私ごときにそんな…」
「だから、こないだのお詫びだって言ってるんだよ‼二回も失神させてしまうなんて重罪だ!ドレスとアクセサリーぐらいで許してもらえるなら万々歳だよ。」
ダリアの困った顔も物凄く可愛くて僕は笑っていた。
「そうと決まれば直ぐにでも仕立て屋さんにいきましょ!お母様!」
「ダリアさん。私達のためにも御願い。一緒に仕立て屋さんまでついてきてくれる?」
ダリアは困った顔でゆっくりと頷いたのだった。
お兄様、シグレちゃんの言いつけを3日で破る。