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クレイジー俺たち  作者: 日向 零
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一時間目 作家

ある日の放課後、俺と進はハンバーガーショップで飯を食べていた。

「突然だが、俺……小説家になろうと思うんだ!」

さあ始まりました。進さんの進さんによる進さんの為の思いつきです。

「ちょっとまて、急にどうしたんだよ?」

「実は昨日の夜に、ある漫画を読んでいたんだ。漫画の主人公たちは中学生でありながら…………」

話が恐ろしく長いので割愛しよう。

「つまり、バクマンを読んで絵が書けないから小説家になりたいってことか?」

「話が早くてラスカル。あ、今のは助かるとラスカルをかけたんだぜ!」

あれ? なんでだろう? 手に持っているハンバーガーを進の顔に投げたくなってきたぞ。

というより、説明するくらいならボケるな!

「結論から言うが……小説なめんな」

そんな進を一喝する。

「いや、なめてないって!」

「本当か? 小説家の大半の人は人生かけているんだぞ? 言っとくが小説をなめると言うことは人生をなめることと一緒だ」

我ながら良いことを言った気がする。

「空夜……俺は本気なんだ!!」

「!?」

そこには、いつもとは違う。やる気に満ち溢れた進がいた。

「小説をなめるということは人生をもなめる……いい言葉だ。だが、空夜! 俺はなめていいのは黒飴だけだと思っている!」

そこにはいつもと同じ。バカとアホの闘気に満ち溢れた進がいた。

「それはさておき、どんな小説を書くんだ?」

まずはそこからだ。人間誰しも、何かを作成するときは何かしらテーマを決めるものだからな。

「ラノベを書こうと思う」

「なるほど……」

ライトノベル、通称ラノベ。若者向けの小説であり比較的狙いやすいジャンルであろう。

「ラノベって言っても、デビューするのが難しいに越したことはないぞ」

「ふぁ!? そうなの!?」

進は何もわかっていないようだ。

「ラノベに限らずだけど、そういうのって編集部の人に面白いと思わせることが大事だろ? つまらなかったら普通は落ちるだろ」

「でも、ヒロインがいない高校生活をテーマにした糞つまらないラノベをネットに投稿している人だっているものじゃないか?」

「そういう人は新人賞の審査員にも読者にも『つまらないって自覚しているなら書くな糞野郎』と言われているに違いないだろ」

「小説って厳しいんだな……」

進はハンバーガーの包装紙をクシャクシャに丸め、ため息をつく。

「でも俺、頑張ってみるよ!」

「そうか」

どうやら進は本気らしい。

「今日はありがとな!」

「別に大したことはしてないさ」

「いや、励みになった! まずは原稿を書き上げるぜ!」

進は学校にいる時とは見違えるほど、たくましく見えた。

「じゃぁな! 空夜!」

「がんばれよ!」

「おう!」

進は走って、店を出た。

「……がんばれよ」


そして一週間後。俺と進は学校の横に設置されているポストの前にいた。

「受賞……するかな?」

「バカ! まずは一次審査通過だろ?」

「そうだった!」

俺たちは笑いあい、そして運命の第一歩の時が来た。

「い、入れるぞ?」

「ああ」

進はゆっくりとポストに原稿の入った封筒を入れる。そして、進は手を合わせた。

「どうかデビューできますように!」

「お参りじゃないんだから」

「念のためだって」

そこには今までで一番の笑みを浮かべた進がいた。

進には一次審査だけでも通ってほしい。素直にそう思った。

「あぁ! 一次発表が待ち遠しいぜ!」

「全くだな!」

発表まで一ヶ月後、そう思っていたのだが、結果はなんと二日後に訪れた。


「まさか封筒に自分の住所しか書かないとはな……」

結局、締め切りギリギリだった為、今から送っても間に合うはずがなく、進の原稿は一次審査どころか郵便局すら通過することが出来なかった。

「ふひひ……アホでさーせん……」

そして、魂が抜けたかのように落ち込んだ進の姿がそこにはあった。

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