第1話:ダメな俺
今日は俺の嫌いな日ベスト3には入る最悪な日。
教室に入ると心なしか男子がそわそわしているように見えた。
クラスのイケメンはいくつかの小さく綺麗な箱をカバンの中に入れる作業をしている。
フツメンは朝きて自分の机のなかを不自然に覗きこみ、
何もないのを確認してすぐに廊下に出て机からあえて離れて仲間と話をしている。
そう。今日はバレンタインデーなのだ。
そんな奴らをしり目に余裕な男が1人・・・この俺[金子圭介]だ。
この余裕は絶対もらえるという安心感からくる余裕ではなく絶対もらえないという諦めからくる余裕だった。
そのバレンタインデーに1人余裕な男は、最高にモテなかった。
理由はわかってる
不細工オタクだから。
オタクだけでも致命的なのに更に不細工が組み合わさったハイブリッド体だ。
「キモイ」
何回いわれたかわからない。
むしろおはようより多く言われてるかもしれない。
でもいい…三次元の女なんてこっちから願いさげだっ!
二次元の方が性格いいしキモイなんて言わないし二次元サイコー!!ウヘ!ヘヘヘ…
「おい金子!!!おい!キモオタ!」
クラスの中心的存在の奴らが俺をよんでる。
どうせまた女子を笑わせるためにイジられるだけだろう。
「何?」
しかなく返事をする俺。
「お前机の中みてみろよ!チョコあるかもよ!?」
後ろの奴らがクスクス笑っている。
もう読めた。コイツらがチョコいれたな・・・
案の定机を調べると箱が出てきた。
「おー!金子チョコ入ってるじゃーん!」
気づくとクラス全員が俺をみている。
「あけてみ?早くあけてみ?」
俺はオチはわかっていたが付き合ってやった。
中には
「ドッキリ大成功!」と書かれた紙とゴキブリの死骸が一つ。
「ドッキリ大成功〜!!」
クラス中が大爆発につつまれた。
「お前にチョコわたす女いると思った??クスクス」
俺も全然楽しくないのに笑っている。
キモオタがクラスで生きていくには何をされてもキレてはいけない。
俺はそこらへんの空気を読めるオタクだった。
「あんたら小学生?」
「あ?」
静まり返る教室・・・
思わず汗がでてしまうような嫌な空気がながれる。
「山崎?何かいった?」
「だから小学生かって言ってんの。ドッキリまでは良かったよ。けど、お前にチョコわたす女いると思った?って何?金子はコレがドッキリなの気づいてたよ?」
ドッキリ大成功で浮かれていた男たちはびっくりした顔をかくしきれていなかった。
そりゃそうだろう。今まで俺みたいなキモオタをかばう奴なんていなかったのだから。
この女子は同じクラスの[山崎千夏]。俺の幼なじみだ。
確かに気は強いが今まで俺をかばったこともなくむしろ一緒に笑ってたのに何故?
だから一番びっくりしていたのは俺だった。
「お前・・・気づいてたのかよ?」
チキンな俺は千夏が作ってくれたチャンスを潰した。
「いやいや!気づいてなかったよ!マジびっくりした〜」
「ほらみろ〜!コイツマジ気持ち悪いわ〜!もらえるワケねーのに!」
クラスが再び笑い声に溢れた。
その時俺はどうしようもなく情けなくて千夏の顔を見ることができなかった。
その日の放課後、
部活(アニメーション研究部)を終えて帰ろうと下駄箱に向かうと誰かが俺の下駄箱の前にたっている。
どうやら泣いているらしい。
オタクの俺は泣いている女子に話かけられるワケもなく隠れながら様子をうかがうダメな男。
顔を確認しようにもうつむいているし、何より校舎入り口から入ってくる夕焼けの逆光でシルエットしか見えない。
女子は俺の下駄箱を開けると中から小さな箱を取り出して、自分のカバンの中にいれた。
リボンのようなものがついたあの適度な大きさの箱・・・まさかな。
俺みたいなキモオタにあげる女子なんているわけねー
しかも万が一にあの箱がアレだとしてもなんで一度入れたものを回収するんだよ?
「おーい!」
向こうから下駄箱で待ち合わせしていたオタ友の[中村泰明]がやってきた。
「すまん!またせた!」
「おお…」
もう一度下駄箱の方をみるとあの女の子はいなかった。
自分自身も不細工オタクなんで自分の妄想を書いた作品でもあります。
文章もまだまだなのでコメントやアドバイスを心待ちにしています!