ハイテク
案内された部屋は、高級ホテルのスイートルームみたいな所でした。
ネコ足付きの風呂とか、天蓋付きのベッド、ウェルカムフルーツにお酒、テーブルには鳴らしたらメイドさん来ちゃうんじゃない?っていうハンドベルっぽいのまである。
あの人達は、俺に何を求めてんの?扱いが良すぎだよね?
結局、一睡もできずに朝をむかえて、わりと朝早い時間に朝食が運ばれて来た、リアルメイドさん(なんかウサミミの)が運んで来た。
なぜか和食、大変美味しゅうございました。
あ~……メシ食べたら、凄いどうでも良くなってきたなぁ……
とか、考えてたら魔王さんが部屋まで訪ねて来た。
魔王さんは、肩書きこそ怖いけど、見た目は白人系のナイスミドルっぽい。
しっぽ生えてる以外は。
「朝食はお済みになられましたか?」
「あ、ハイ、いただきました。美味かったです。」
魔王さんは向かいのソファに座り、軽く頭を下げて改めて自己紹介してくれた。
「それはよろしゅうございました、改めて名乗らせていただきます。
当代魔王を務めさせていただいております、『傲慢』のべリアルと申します」
「ご丁寧な挨拶ありがとうございます、え~……東京在住35歳、無職。
趣味は読書の疋田進一でございます。」
こちらも自己紹介し直すと、魔王さんは姿勢を正してゆっくりと頭を下げた。
『傲慢』とか言うわりに、やたらと腰の低い感じだね。
「昨晩はお疲れのところ、気配りが足りずお恥ずかしいかぎりでございます。
改めて現状をご説明させていただきたい、と思いお伺いしました。」
正直、昨日はこちらもパニック気味だった、どうするにせよ正確な情報は聞いておきたいと思う……理解できるかは置いておいて。
「ありがとうございます、最終的にご協力できるかは、わかりませんが……
是非、お話いただきたいと思います。」
魔王さんは、深くうなずいて身振り手振りをまじえて話はじめた。
ここが異世界だってのは良い、俺からしたら自宅の外なんて異世界みたいなもんだし。
この人達が魔族だってのも、それほど問題じゃない、下半身があからさまに蛇な女性とか、その鼻輪オシャレですね?っていうミノタウルスっぽい人とか、頭重くない?って聞いてみたい鹿のツノ風の何かはやした幼女とか……色々なんか人間っぽくない方達も見かけたし。
ご先祖さまが初代魔王陛下……了解しました、400年も前だしそんな事もあるかもしれない、日本人?あ、そうですか……あるかもね。
複製ゴーレム。
……ハイ、ちょっと待って。
なんか、サラっと流しちゃったけど詳しく、出来るだけ詳しく説明プリーズ。
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3Dプリンタというものをご存知だろうか。
PCなどで作成した三次元データを立体として出力できる装置の事で、輪切り状態のデータを樹脂や粉末なんかを薄く何層にも積み上げる感じで立体物を作成する。
固形物から切り出したり削り出したりするタイプは3Dプロッタというそうだ。
ハイテクだね。
初代魔王陛下の残した秘宝『万象の軸』
隔てられた世界を魔術的にふにゃふにゃ、対象の組成を魔術的にゴニョゴニョ、思考や感情を魔術的にモゴモゴ、読み取った対象には影響を与えずに魔術的ににょろにょろ出力できる装置。
魔術的だね。
良くわかった。
つまり、魔王さんの言う『万象の軸』ってのは、魔術的な3Dプリンタみたいなものって事なんだな……
つまり、アレかな?ココにいる、存在してる、我思うゆえに我あり、の俺は複製だと。
俺、複製なのっ!?
えぇぇ……?マジで?
3行で
魔王さんが来た
説明を受けた
俺、複製だった