第六話 慰霊祭
今回、ちょっと長いです。
聖羅先輩の無事を確認して、一先ずホッと胸を撫で下ろす。
――無事で良かった。
早速、おばちゃんにもっと細かい情報を聞くことにする。
「それじゃ、その人間は食料を沢山持って出て行ったんですね?」
「そうさ。でっかい袋にたんまり詰めてニコニコして出て行ったよ。一人なら一ヶ月は余裕でもつんじゃないかね?」
なら取り敢えずは大丈夫か……いや、大丈夫か?
あの人、計画的に見えてちょっと抜けてるところがあるからな。
調子に乗って食い過ぎて後で泣きを見る、なんてのもありえる。
まあ、成るようにしか成らないか。
ちなみに、時間の単位と暦の見方は地球と全く同じであった。
地球と類似点が多い理由は分からないが、便利だから気にしない。
一から暗記しなくて万々歳である。
後は居場所の確認だが――
「ジャニラちゃんに一つお願いがあるんだけど良いかな?」
「……なぁに?」
「地図を持ってるって聞いたんだけど本当?」
「……うん」
「ちょっとでいいから見せてくれないかな?」
「……わかった」
ジャニラちゃんに交渉すると、あっさり了承してくれて、自宅へと案内を開始してくれた。
最初は、聞き分けのない我侭な子と思ったが、素直な良い子である。
だがさっきと比べて口数が少ない。
そういえば人見知りだったっけ。
「こっち……」
大樹から西に向かって、トコトコと歩いていくジャニラちゃん。
その後ろ姿を見ると、不思議な感情が沸き起こってくる。
これが父性という奴だろうか。何か護ってやりたくなる。
前を進むジャニラちゃんの後ろを、俺とピーラおばちゃんが付いて行く。
数分歩いたところに、一軒の家が見えてきた。
そこそこの大きさの大木に扉が付いたような造りである。
進むにつれて、家の前に人影があるのを発見する。
あれは……猿ボスか。長老との話はもう終わったのだろうか。何しに来たんだ?
「よ、よう!」
猿ボスは、片手を上げて、ぎこちない挨拶をしてくる。目が若干泳いでいることからも、かなり気まずいと見える。
その視線がジャニラちゃんを捉えると、泣きそうな顔をして向かい合う。
「お、お嬢ちゃん。……その、親父さんの事……謝りたくてな」
「……」
「本当に済まなかった! こんなもんじゃ何にもならねぇが、せめてもの気持ちだ!」
今度は、直立不動の姿勢で立ったまま、上半身を斜め80度くらいまで下げる。
誠心誠意という奴である。
小柄な図体で柔らかい身体、やはり猿にしか見えない。
人間イコール猿という誤解も頷けるというものだ。
下げられた頭と膝の距離は、そのままくっつきそうな程である。
傍目からは、何らかの柔軟体操にしか見えない。
その体制では深すぎて逆にアホに見えるぞ。
心の中では、そうつっ込むが、もちろん口にはしない。ここはシリアスシーンだ。
そのまま、猿ボスはジャニラちゃんの答えを待っている。
死刑宣告を待つ囚人のような緊張感がある。
俺とおばちゃんは、無言でその場を見守る。
ジャニラちゃんは、数秒見つめると、猿ボスの目の前まで近づいていった。
何をする気だろうか。
一同が見守る中、ジャニラちゃんは予想外の行動に出た。
猿ボスの頭を撫で撫でし始めたのだ。
「……もういい。おじちゃん、がんばった」
その言葉を聞いて、猿ボスはガバッと勢い良く頭を上げる。
おい、ジャニラちゃんに当たったらどうするつもりだ。
猿並みに知能が低い、流石、猿ボスだな。
「おじちゃん、わるくない……」
ジャニラちゃんが、辿たどしく言葉を繋げていく。
ええ子や。それに幼いなりに事情を察しているし、頭もよろしい。
涙が出そうになるが、ここはグッとこらえる。
当の本人達が泣いていないのに、外野が泣いてどうするのだ。
「すまねぇ、ホントにすまねぇ」
こらえていた涙が決壊して、号泣しだす猿ボス。
腕で涙を拭うが、次々に溢れてきて止まらないようである。
今回の件はこれで一件落着か。
恐らく何らかのペナルティーは長老との話し合いで課されたと思われる。
あの猿共も、これからこの集落のために頑張ってくれることだろう。
人手――この場合は猿手か――と食料の分け合い、持ちつ持たれつの関係って奴だ。
猿ボスは去り、三人でジャニラちゃんの家に入っていく。
なかなかに広い空間だが、一人では寂しい感じがする。
俺の関知する事ではないが、この子はこれからどうするのだろうか。
しばらくは辛いだろうが、できれば、時と共に悲しみは薄れ、集落の皆と楽しくやっていくことを祈る。
家の奥からジャニラちゃんが宝箱のような物を持ってきた。
俺の目の前まで来て、その場に座り込む。場の流れで皆も座ることにする。
早速宝箱が開けられた。
覗き込んでみると、何やら一杯入っていて、これがジャニラちゃんコレクションか、と微笑ましくなる。
そういえば俺も小さい頃は色々と集めていたっけ……ふと昔を懐かしんでしまった。
「これ……」
ジャニラちゃんが、宝箱の中から一枚の紙切れを取り出して渡してきた。
渡された地図を開き、中身を確認して、予想していた展開に知らずと溜息が出る。
「う~ん、やっぱり見たことのない地形だ。はぁ~、異世界決定か……」
今までの展開で、ほぼ異世界説は決定していた。
最終確認のために見てみたが、やはりだ。
「これからどうしよう……」
「何だい? 行く宛てがないのかい? だったら此処にいても良いんだよ」
「いえ、探し物の見当がつかないだけで、ここは明日にでも発とうと思ってます」
「そうかい。何だかアンタが息子のような気がしてきてねぇ。寂しくなるよ」
「……」
おばちゃんの優しい言葉が身にしみる。
こんな良い人がいる世界だ。捨てたものじゃないのかもしれない。
一瞬、ジャニラちゃんが思惑げな顔でこちらを見ていたのだが、別れが寂しいのだろうか。
そう思うと、俺も切なくなってきた。
トントン
俺達が三人でお喋りしていると、扉がノックされる。誰だろうか。
代表しておばちゃんが返事を返す。
「誰だい?」
「俺だ! やっぱりピーラか?」
「ピッツンかい? 今開けるよ」
どうやら、あのいちゃもんオヤジが来たらしい。何の用だろうか。
「ここにいたのか人間」
「俺に用ですか?」
「というか、全員だな」
「全員ですか?」
「ああ、長老からの言伝で今日慰霊祭を行うということだ。賑やかに行うから楽しんでくれとの事だ」
慰霊祭って、確か死者の魂を弔う鎮魂の祭りの事だったな。
ジャニラちゃんを見るとやはり落ち込んでいるように見受けられる。
これで気持ちをリセットしてやり直そう、という集落の者達の気遣いなのかもしれない。
「あら、確かまだ先じゃなかったかい?」
「まあ、あんなことがあったからな。エルナーの供養も含めて執り行うらしい」
「そうかい。それじゃ準備しないとねぇ」
「女連中は料理を振舞うってんで、もう集まっているぞ」
「あら、そうかい。アタシも行きたいけど、家の片付けがねぇ」
「それなら俺がやっといたぞ」
何やら話がとんとん拍子に進んで行っているが、それ以前に気になることがあった。 ピーラおばちゃんといちゃもんオヤジが、妙に仲がよろしいような……。
「あのぉ~」
「何だ?」
「お二人はどういったご関係で?」
「何だい、言ってなかったかい? アタシらは夫婦だよ」
「夫婦!?」
俺の中では、水と油のような相容れない存在だった二人。
その二人が夫婦とは、驚きが隠せない。
いや、別に二人の仲が悪かった訳ではないから、俺の一方的な思い込みであったか。
「そういえば人間、お前の名前を聞いてなかったな」
「えっ? あ、はい、神楽楽世と言います。名前は楽世の方です」
「ほう、珍しい名前だな」
「そ、そうなんですよ。人から良く言われるんですよねぇ……ハハハ」
「お前、何か怪しいな」
「うっ」
再び、いちゃもんタイム開始か。懲りないオヤジだ。
そう思っていたのだが――
「……何てな」
「へっ?」
「ガハハ。そう堅くなるな。今日までの事は無しだ。楽しく行こうぜ」
二カッと悪戯が成功したかのような顔をする、いちゃもんオヤジことピッツン。
からかわれた? 何だか性格が違うような……。
「色々と済まなかったな。ピリピリしてたもんだからな」
「はぁ……」
「エルナーは俺の親友でな。良い奴だった」
「……」
「そんな顔をするな。過ぎた事だ。あの猿共は精々こき使ってやるさ。ガハハ」
どうやら今のが素の性格であるらしい。
人間ということで、必要以上に警戒されていただけのようだ。
誤解が解けていきなり馴れ馴れしくなったという訳か。
終わりよければすべてよし、まあ良いか。
「さあ、準備だ、準備。やるよぉ」
パンパンと手を叩いて、ピーラおばちゃんが立ち上がる。
そこで、俺とジャニラちゃんを見て、何かを思い立ったかのように、言葉を残していく。
「楽世といったね。アンタは慰霊祭が始まるまでジャニラちゃんと一緒に居ておくれ。ジャニラちゃんもそれで良いね」
おばちゃんの確認にコクンと頷くジャニラちゃん。
何故かすっかり懐かれたようである。
そんなに大層な事をした覚えはないのだが……。
「よし、じゃあ何かして待ってるか。簡単な遊び……そうだな、メジャーな所からあっちむいてホイでもやるか」
「……うん」
こうして夜は更けていった。
夜も更けた頃、慰霊祭が開始される。
集落の中央にそびえる大樹。
その周りで皆が一斉に訳の分からない歌を歌い始める。
俺もそれに則り、歌っている振りをする。俗にいう口パク、俺の十八番である。
大樹はこの集落の民を恩寵するマットゥ。
それが歌に合わせて輝き出す。
輝く大樹から生えてきた光の蔓が形を成し、それぞれが人の姿に変わっていく。
どういうことだ?
「クレンツ!」
「ああ、ビッケル!」
「おお、カータスじゃないか!」
一部の者達が一斉に誰かの名前を叫んでいる。何が起こっているのだろうか。
「おとーさん!」
その時、横にいたジャニラちゃんが突然叫びだした。
お父さん? お父さんはお亡くなりになった筈では?
「うわぁぁぁぁぁぁん、おとーさぁ~ん!」
「こらこら、ジャニラは泣き虫だな」
ジャニラちゃんがお父さんとやらに飛びつくように抱きつく。
それを優しく受け止める推定お父さん。
あれはジャニラのお父さんなのだろうか。
しかし理解が追いつかない。異世界常識は分からんのですよ。
幽霊か? オカルトには縁のない人間でしたので、そちら方面はNGでございます。
「慰霊祭はね……」
いつの間にか隣にいたピーラおばちゃんが静かに語り始める。
相変わらずタイミングの良いおばちゃんである。
「今年亡くなった死者があの世に逝く前に行うお別れの儀式なんだよ」
「お別れの儀式?」
「そう。恩寵を受けた民の魂はね、亡くなっても直ぐにはあの世には逝かないんだ。
恩寵を与えてくださるこのマットゥの中に呼び戻されるんだ。
そして時期が来たらあの世へと旅立つ。
今回はこの慰霊祭でその魂を呼び寄せたって訳だね。
呼び出せるのは一回きりだけどね」
「呼び戻される?」
「そうさ。人間はどうだか知らないが、恩寵を受ける者の魂は"マットゥ"から呼ばれてこの世に受肉すると言われているんだ。
つまりアタシらの魂は"マットゥ"から呼ばれ"マットゥ"に戻っていく。そういうことなのさ」
「ということは、一生ここで暮らさないといけないと?」
「そうじゃないよ。世界で"マットゥ"は繋がっている。
基本的にどこに居ても"マットゥ"を通してここに戻ってくることが可能なのさ」
う~ん、流石異世界。不思議ワールドって訳か。
深く追求するのはやめよう。そういうものだという事だ。
ん? ジャニラちゃんのオヤジさんがこちらを見ているぞ。俺に用か?
ジャニラちゃんと共にこちらにやって来る。
「君がジャニラの言っていた人間か。成程、確かに私と同じ匂いがする。
その楽観的な感じがね」
「はぁ、そうですか……」
「まあ死んじゃった私が言うのも何だが、後はよろしくね」
「はっ?」
「ふふふ。ではアデュー!」
「おい、何だそれ? ちょっと待て!」
それを合図にするかのように大樹の放つ光が淡くなってゆき、消えていく。
あれ? やけに早くないか?
「おとーさぁ~ん!」
「ジャニラ、元気でやるんだよ」
光が消え、先ほどまでの明るさが嘘のように暗く静かになる。
沈黙が訪れ、辺りの虫の声まで聞こえてくる。
「うぅ、おとーさん……」
腕で涙を拭うジャニラちゃんを、優しく胸に抱き包み込む。
ジャニラちゃんも抱き返してくる。
「短いですね」
「こんなもんだよ。メルシン様に頼んで起こる奇跡のようなものだからね。そんなに贅沢は言えないさ」
儀式も一通り終わり、待っていた食事会に移行する。
大樹を中心に、周りの木々に向かって、色取り取りの飾り付けが並び立てられている。
何かのパーティのようだ。皆楽しそうに食ったり飲んだりして騒いでいる。
大樹の周りには、様々な料理が置かれ、酒も置いてあるようだ。
未成年だから本当なら飲めないが、ここは異世界。
ちょっとだけ飲んでも良いのではないか? そう思い、ちょっとだけ味見することにする。
「う~ん、俺にはちょっと早いかな?」
俺はまだお子様舌のようだ。
酒の味に馴染めないので、普通の果物ジュースを頂くことにする。
後は食いもんだが……お肉様が見当たらない。
野菜、野菜、果物、野菜。おい、肉がないぞ。こいつら草食系種族か。
料理を配っていたピーラおばちゃんに聞いてみるが――
「肉かい? あんなまずいもの食えたもんじゃないよ。アンタ、ゲテモノ好きかい? そこらへんの蛙でもひっ捕まえて料理してやろうかい?」
「……いえ、結構です」
やはり草食系の方々のようでした。
蛙など言語道断である。俺はグルメなのだ。
というか、万能球があるじゃないか。異世界料理を堪能できないのは悔しいが、後でこっそりドンカ亭セットでも食しておこう。
奥の方を見ると、敵対していた猿ボスといちゃもんオヤジが酒を酌み交わしていた。
もう仲良くなったのか?
「おぉ~、楽世か。ほら、こっち来い!」
「ああ、坊主か……」
いちゃもんオヤジと猿ボスが、俺に気付いて手招きする。
既にできあがっているようだ。
「今、コイツと話していた所だ。何だ、いい奴じゃねぇか」
「いや、アンタこそこんな俺に良くしてくれる。憎まれても良いだろうに……」
「その話は終わっただろう? ジャニラの事は忘れろ。それに……ジャニラは家で引き取っても良いと考えている」
「えっ?」
「あの子は小さい頃から知っている。本当に良い子だ。立派な淑女に成長するぞ」
猿ボスはいちゃもんオヤジに認められたようである。
ジャニラちゃんもこの夫婦ならば幸せになれるであろう。
「そうか、それなら俺も安心だ。坊主も悪かったな。人間は信用できねぇからな……」
「そういえば、猿ボスは人間なんだろ? 何でこんな所にいるんだ?」
「ああ、俺は人間の国から逃げてきたんだ。あの猿共も西から逃げてきたって言ってたぜ」
会ったときから気になっていた事を聞くことにする。
名前は知らないので、猿ボスのまま本人に刷り込みを行う。
俺の中では既に決定事項だ。
それに対して、猿ボスの単語を違和感なく受け入れている本人。
やはり頭が弱いのか? いや、それよりも何故猿話が分かるのだ。
ある意味、頭が良いのか?
いや、同類のみが分かち合うっていうテレパシーのようなものか。
深く考えないようにしよう。
「つまり、あの猿達は西から追いやられてここまで来たと?」
「そうだ。ここ最近、妙な事が多過ぎる。俺も南のガラサウナ王国から来たんだがあそこもおかしい」
「おかしい、とは?」
「何かに触発、いや洗脳されるかのように荒れている。騙し合いなんてしょっちゅうだ。不自然な亡くなり方をした者や、忽然といなくなった行方不明者も続出している。何が起こっているのか訳が分からない。俺は怖くて逃げてきたんだ」
物騒だな。
俺が来たのが恐らく東の方向で、それで西がやばいと。
南のガラサウナ王国とやらもおかしい。
そうなると北しかないのか?
いや待て、肝心の先輩の事がある。先輩はどっちに行ったんだ?
確認しよう。
「そういえば、一か月前に来た人間はどっちに行ったんですか?」
「あの嬢ちゃんか? 確か西の方だったと思うぞ」
「西はやめておいた方が良いぞ。全ての元凶はあっちって噂もあるからな」
「元凶?」
「そうさ。西は遥か昔に恩寵の失われた災厄の地。誰もそこに何があるか知らない。だからこそ、そこが怪しいと皆睨んでいるんだ」
北か西か……どちらにするか……やはり先輩を放ってはおけない。
西に行くか。先輩と合流して即離脱、これに限る。
そもそも帰る方法を探すのが最終目標だ。
他の拉致被害者に会って事情を聞かなければいけない。
他の連中は無事なのか? 顔も知らないので何とも言えないが……。
「やっぱり西へ行くかな」
「おい、俺の話を聞いていたのか?」
「ああ、知り合いがいるかもしれないんだ。合流してから、北へ行こうと思う」
「……そうか。だけど気をつけろよ。人間は信用できなくなっちまった。俺はここに残る」
猿ボスはここに永住する気のようだ。
あの猿共が悪さしないためにもその方が良いだろう。
あと聞きたいことは――
「そういえば"魔兵器"ってどんなのなんだ?」
「魔兵器か。残念だが俺は持ってないぞ」
「えっ? でもおばちゃんが見たって……」
ここを発つ前に一度見ておきたかったんだが、おばちゃんの勘違いであろうか。
「俺も見たぞ。ほら、あの細長い棒から火を吹く物を持ってたじゃないか?」
「ああ、あれか。あれは魔兵器なんかじゃないぞ。あれは只の銃だ」
「銃? 何だそれ?」
「オヤジ、それは鉛を飛ばす道具だ」
この集落の者は銃を知らないようだ。
ああいう道具自体に縁がないのであろうか。
それにしても魔兵器はないのか。どんな代物なのか気になるな。
「魔兵器とは違うのか?」
「ああ、魔兵器はこんな生易しいものじゃない。下手すると一つの村が滅ぶ程の威力を持つ代物だ」
「おいおい、それはやばいんじゃないか? 誰がそんなもん作り出そうなんて言い出したんだ? 国のお偉いさんか?」
「俺も詳しくは知らないが、何でも得体の知れない連中が置いていった未知の技術らしくてな、誰も仕組みは分かっていないんだ」
得体の知れない連中? まさか、俺を拉致した連中と同じじゃないだろうな。
それにしても村が一つ吹き飛ぶ威力、ヤバ過ぎだろう。
「そういえば、お前ぇのその黒い球も凄ぇな。何なんだ、それ?」
「分からん。が、魔兵器と同じようなものなのかもな」
突如、万能球に話題が移るが、俺もこれの事は分かっていない。
そういった意味では魔兵器と同じであろう。
何かを察したかのような猿ボスが最後に神妙な面持ちで忠告してくる。
「……そうか。何回も言うが、人間には気をつけろ。優しそうな顔をしていても、裏で何を考えているか分からないぞ」
そこで話を一旦終わりにした。
飲み物を取りにピーラおばちゃんの所までやって来る。
「おばちゃん、これおかわり」
「はいよ」
ドォォォォォォン……
その時、凄い地響きが鳴り渡った。
次回、やっと旅立ちます。