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拉致・のち、放置&放浪記  作者: 七草 折紙
『修行の旅』編
13/30

第九話 捕食者

今回は戦闘ありです。

 目の前には、ボロボロの布服を着た人型の生物。


 変な顔をした小坊主といった風貌で、外見だけなら人畜無害そうに見える。

 顔は言うなれば"へのへのもへじ"を無理やり人にした感じだ。

 手足の指は五本、二足歩行で、肌の色も人間と酷似している。


 これが人間であろうか。今までに見た唯一の目撃例が、猿ボスだけなので、イマイチ判断がつかない。


「え~っ、こんにちは。人間の方ですか?」

「……」


 もへじ生物はこちらの問いかけに無言を貫く。言葉が通じないのであろうか。

 まさかその顔で人見知りではないだろうな。


 ボコッ


「ん? 何か音がしたような――」


 ボコボコボコボコッ ボコボコボコボコッ ボココココココーッ


 一瞬の間に、俺とジャニラちゃんの周りにもへじ生物が湧き出てきた。

 地面の下から穴を開けて出てきたのだ。


 ゾンビ、いやモグラかよ。人間確率が急下降した。

 いや、それよりも――


「増えた!? 何だ、この数は!」

「お、おにぃちゃん……」


 数は十体から二十体はいる。穏やかに会話できる雰囲気ではない。

 俺達を逃がさないように、包囲したといった感じだ。


 ジャニラちゃんが怯えて、俺の腕をギュッて握ってくる。


 無言で包囲するもへじ集団を見て、頭の中で警報が鳴る。

 反射的に開いていた万能球の屋根を閉じる。


 ガチンッ


 閉じるのと同時に、激しい衝撃と音が、万能球の内部にまで伝わってくる。

 それは、もへじ生物が俺達を噛み砕こうとした音だった。

 巨大に変形した大きな口を、いっぱいに広げて食べようとしてきたのだ。


「なっ!? や、やばっ」


 間一髪で防御に成功。

 万能球ごと、もへじ生物の口で挟まれていた。


 外は口内なので真っ暗で何も見えない。

 明かりを点けようと思ったが、暗闇の鎮静効果を利用して、一旦落ち着くことにする。


「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」


 深呼吸を数回繰り返すが、心臓がドキドキと鼓動が鳴り止まない。

 むしろ、どんどん速まってゆく。


 人生初の、死を予感させた一幕。死ぬ、という実感が湧かない。

 だが、どうなるかは予想できる。痛みにもがき苦しみ、のたうち回るのだ。

 そして永遠に意識が戻ることはない……。


 ゾッとしたせいか身体が寒く感じる。

 俺と同じ気持ちなのか、ジャニラちゃんが抱きついてくる。

 肌の温かみが、震える心を少し癒してくれた。


「だ、大丈夫だ。この中にいれば安全だ」

「うん」


 防御を展開するのがあと一瞬遅ければ、あるいは食べられていたかもしれない。


 万能球を得たとはいえ、所詮、危機に疎い弱小一般人。

 ぬるま湯で生きてきた、只の学生であったのだ。

 反応できたのは、ある意味奇跡である。


 次回も、こう運が良いとは限らない。


「と、とにかく、この場を離脱するぞ。ここは危険だ」

「わかった」


 時間の経過と共に、徐々に冷静になってくる。

 霞がかっていた頭がはっきりと覚醒してきた。


 このもへじ集団が恐らくおばちゃんが言っていたモンスターの類だろう。


 だが、森を抜けた途端に遭遇、それもあんな大所帯でやってくるとはおかしくないか。やけに準備が良い。まるで待ち構えていたかのような……。

 見つからるようなマネは――まさか、ジャニラちゃんが飛んだ時!?


「くそっ、狙われていたか」


 俺はおいしくないぞ。ジャニラちゃんもまだ食べ頃ではないだろう。

 こんな二人では腹の足しにもならないと、分からないのか。

 草食オンリーのジャニラちゃんを、少しは見習ってもらいたい。


「よし、行け、万能球――」


 ピキリ


「って、ヒビ!?」


 万能球に亀裂が走っていく。

 もへじ生物が噛み砕こうとしていたが出来るわけないと安心しきっていた。


 このままではまずいっ!


「万能球! 山に向けて全力で移動、行け!」


 万能球に命じて、強引に振り切ることにする――が、動かない。


「どうした? まさか、力負けしているのか?」


 噛んでいるもへじ生物を筆頭に、全方位を囲まれて、その場に押し留められる。

 亀裂はもう限界を迎えようとしていた。


 やばい、やばい、やばい。

 こわい、こわい、こわい。

 どうする、どうする、どうする。


「ジャニラちゃん、耳を塞いで!」

「うん!」


 考えている暇はない! 強行突破の一点のみだ。

 動けないなら、排除するまで!


「縦横360度に雷を発射!」


 ピシャアアアアアアッ


 雷を撃っているのに、もへじ集団は怯む気配がない。どんだけ打たれ強いんだ。

 雷に耐性でもあるのか……いや違う、そういうことか。雷の出力が弱いんだ。

 この球、万能だが器用貧乏だ。戦闘には使えない。

 この状況で万能球の欠点が判明するとは、最悪のタイミングだ。


 ピキピキピキピキピキピキッ――パリィィィィィィン……


 そして、球は砕けた。


「ジャニラちゃんっ、ごめんっ!」


 迫り来る死に、ジャニラちゃんをギュッと抱き寄せて、目を瞑る。

 来るべき痛みに備えて覚悟を決めるが、……いつまで経ってもやってこない。


 恐る恐る片目を開けると、


――そこには、鮮血に濡れた漆黒の刃があった。


「ひっ」


 詰んだ、と思ったら、目の前数センチ程の距離に、刀の鋭い切っ先が突きつけられていた。訳がわからない。


 刀からは歪な異臭がしてくる。これは……血の臭い!

 自然と身体が硬直して、ガタガタと震えてくる。自分が息をしているのも分からなくなった。


「き、き、き、緊急退避!」


 慌てて再び万能球を展開したが――


 スパンッ


「はへ?」

「妙な真似はするな」


 展開した万能球をあっさりと斬り裂き、今度は、首筋に突きつけられる刀。

 少しでも動いたら、首と胴体がおさらばしそうである。


「お前、何者だ! その力はどこで手に入れた?」


 聞こえてきたのは、貴族の令嬢を思わせる可憐で熾烈な声。

 後光が眩しく、顔が見えなかったのは一瞬の事である。

 眼前には、血なまぐさい戦場には相応しくない程、麗しい女性が立っていた。


期待させてしまった方もいたかもしれませんが、俺TUEEEものではありません。

主人公チートですが、戦闘はまだ弱いです。

今後の展開でチート強化と成長していけたらと思ってます。


次回、現れた女性の正体は? 万能球の謎が一部解明されます。

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