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拉致・のち、放置&放浪記  作者: 七草 折紙
『修行の旅』編
12/30

第八話 森を抜けて

今回はまったりです。

 ビラトの集落を出発してから三日は経過した。未だ森を抜ける気配はない。

 西方面への道をひたすら進んでいるが、変わらない景色に、いい加減飽き飽きしてしまう。


 移動は徒歩ではなく、万能球を使用している。

 オープンカー状態に屋根を開放したおかげで、新鮮な空気がおいしい。


 木々の間からは太陽が顔を覗かせて、日差しが射し込んでくる。

 森の静けさと涼しさ、そして日の暖かみが、丁度良い調和を奏でて、全身が喜びを表す。


 我々は現在、日光浴の真っ最中である。ひんやりポカポカと気持ちが良い。


「はぁ~、気持ちええのう……」

「……うん」


 ふと呟いた独り言に、ジャニラちゃんが律儀に返事をする。良い子だ。


「静かだなぁ」

「……しずか」


 出発直後は、モンスターが出るとビビっていたが、蓋を開ければ平和そのものだ。

 気を抜きすぎて、このまま寝てしまいそうになる。


 隣では、ジャニラちゃんが俺の真似をして、同じ仕草をしていた。

 兄弟というより、親子のような感じがする。


 椅子状にした背もたれにおっ掛かり、オヤツをかじりながら、くっちゃべって、足をぶらぶらと漕ぐ。これぞ完全リラックスモードである。

 俺がやるとだらしない気がするが、ジャニラちゃんがやると可愛らしい。


 集落を出て以降、ずっとこんな調子である。


「これ、おいしい」

「ぐっ」


 相手は草食系の十歳ぐらいの子供。

 味のお供にマヨネーズ、味噌などを出してあげた。地球文化のお披露目である。

 無意識にドヤ顔になってしまうのは否めない。


 当のジャニラちゃんは、それらを野菜スティックにちょちょい、と付けて食べている。

 ほんわりとした笑顔で、はむ、と食いちぎり、もぐもぐ噛み砕いている様は、まるでハムスターのような小動物を思わせる。


 それを見た俺に、物凄い衝撃が襲ってきた。

 成程、これが萌え……か。俺でもグッと来るものがある。


「……おかわり」

「ふはははははは、苦しゅうない! 今日から毎日、この俺直伝のスペシャルメニューをお送りしてあげるぞ。覚悟しておくのだな」


 ジャニラちゃんには遠慮するな、と言い聞かせてある。

 その言葉通りに追加を要求してきた。子供に遠慮は無用だ。

 万能球からおかわりを取り出し、ジャニラちゃんに渡す。


 流石は万能球のお力、味のお供は好評のようである。子供の懐柔など朝飯前であった。

 しかし、野菜か果物限定となると、レパートリーは極端に減る。

 何を出そうか……そういえば漬け物系がウケるんじゃないかな。

 次回試してみよう。






 さらに数時間後。


 未だ、のんべんだらりとした道中を継続していた。

 異世界の深い森の中を移動中、とは思えない程にくつろぎ中である。


 横を見るとジャニラちゃんがお昼寝をしていた。

 とは言っても、もうすぐ日が落ちるので、お夜寝になってしまう。


 この分だと、今日も野宿になりそうだ。暇なので、俺も寝ることにする。

 安全のため、万能球の屋根は閉じておいた。




 つんつん……つんつん


「んぁ? あれっ? もう日が落ちてるな」


 何かにつつかれて意識が覚醒する。


 はっきりとしない頭で、つつかれた方を確認すると、ジャニラちゃんが既に起きていた。

 俺はどうやら寝坊してしまったようである。


「ごめんごめん。夜ご飯にしようか」


 今夜は慰霊祭の時の料理を出してあげた。

 馴染み深い料理の方が良いだろう。故郷の味って奴だ。

 野菜に野菜を加えて、色々な訳の分からん調味料を混ぜ合わせた料理である。

 作り方は分からないが、万能球のお力で一発。便利すぎるぞ、万能球君よ。


 ちなみに俺はお肉たっぷりの牛丼セットにしました。


「それでは、頂きます」

「……いただきます」


 手を合わせて食べる前の恒例儀式「頂きます」をする。

 俺の行為を真似してジャニラちゃんも同じように動く。


 その後、二人同時に食べだし、食事タイムは滞りなく終了する。


「御馳走様でした」

「……ごちそうさまでした」


 俺に合わせようと懸命についてくる姿が微笑ましい。


 食後、再び万能球に乗って移動を開始する。

 夜は冷えるので、屋根は閉じたままである。




 三時間くらいはくだらない話をしていただろうか。

 そろそろ眠る時間帯になってきた。自然と無言になってゆき、眠りを誘ってくる。


 そのまま就寝することにした。


 …………

 ……


 朝の時間帯に自然に起床する。

 ジャニラちゃんはまだ寝ていた。お寝坊さんである。


 起こさないように、しばらくボーッとしていた。


「……ん?」


 鳥達の囀り以外は何も聞こえず、静かな朝であったが、しばらく移動していると、俺の耳が水の流れる音を捉える。


 その方向に移動すると、川を発見した。


「水浴びでもするか……ジャニラちゃん、起きろぉ~。朝だぞぉ」

「んにゅ?」

「朝だ。食事の前に水浴びするぞ」

「みずあび?」

「ああ、川を発見した」


 ジャニラちゃんが、寝惚け眼で、辿たどしく言葉を綴る。

 心中の萌えを抑えつつ、今後の予定を簡潔に伝えることにする。


 その後、ジャニラちゃんが完全に覚醒したのを確認すると、手を引いて川へと向かった。


「ん? 妙に水位が低いな……まっいっか」


 川岸付近には水がなく、中心付近に寂しいくらいの水位が確認できる。

 満水の半分もないぞ、と疑問に思ったが、異世界事情ということで納得することにした。

 そこまでこの世界に干渉する気はない。


「良し、行くぞぉ。ジャニラちゃん、準備はできたかぁ」

「うん」

「よぉ~し、おっ、はぁ~!」


 野生児の如く、全裸になって、いざ行かん。

 そのまま川に飛び込み、肩まで浸かる。


 ジャニラちゃんは身長が低いので、岸辺近くで同じように沐浴する。


 万能球で身体を洗うのも良いが、やっぱり大自然の中では開放感が違う。

 この場にレディーがいないため、安心して裸一貫で佇む。

 ちなみにジャニラちゃんはまだ幼いので、カウントには入らない。

 幾ら見られようとも、もう一人の俺が猛ることはない。


 川に浸かりながら、改めて周りを見渡す。どの方向を見ても、森の外の光はない。

 結構な速さで移動してきて未だ出口が見えないのだ。

 ということは、この森は意外と広いと思われる。


 樹海くらいの広さは悠々とあるんじゃないだろうか。

 いや、もしくはアマゾンレベルかもしれない。万能球様様である。


 あまりの広さに、つい、感嘆の声が出てしまう。


「しっかし、この森ってかなり広いよなぁ。あとどれくらい進めば、森を出るんだろうな?」

「……みてくる」

「見てくる? そうか、そういえば飛べるんだったな」


 独り言で呟いたつもりだったが、ジャニラちゃんには聞こえていたようだ。


 ジャニラちゃんが気を聞かせて、背中の羽を広げて空へと舞い上がる。

 羽をパタパタと慌ただしくさせながら、すっぽんぽんで空高く上昇していく。

 その姿は表現するならば、でっかい妖精みたいである。

 どこか幻想的で、嫌でも異世界だと再認識させられる。


 しばらくすると、ジャニラちゃんが戻ってきた。

 俺の眼前まで降りてきて、小さな口で伝えてくる。


「……もうすぐ」

「そうか、身体も洗ったし、もう行くか」

「うん」


 いい加減、森の景色には飽きた。

 森の出口が近いというのであれば、さっさと行こうではないか。


 万能球の上で、風に乗って進んでいく。

 風になびいて、ついでに髪を乾かす。この時間帯は風が心地よい。


 しばらく移動していると、ようやく外の光が見えてきた。

 そこへ向けて一気に加速しようとしたが、ふと前方の樹に珍しい色合いを見かける。 あれは、果物であろうか。朝食に丁度良い。


「おっ! あの実、食えそうじゃないか?」

「……だめ。あれ、どく」

「どく?……毒!?」


 折角異世界にいるんだ。異世界産の食い物を味わいたい。

 そう思っていたが、今危険な単語を耳にした。


 毒というと、人を一瞬で死に追いやる悪魔の言葉。

 あんなに美味しそうに実っているのに、毒とかありえないだろう?

 これだから異世界は怖いんだ。常識が全く通用しない。


 見れば、得体の知れない生物の骨が近くに転がっていた。

 あの実を食べてご臨終された方のようだ。同じ末路はゴメン被りたい。


 いや、待て。万能球で毒抜きできるんじゃないか? 名案だ。

 だが毒が抜けたとどう判断する?


「毒ってどんなの何だ?」

「……とける」


 溶ける、ということか。それならば確認方法はある。

 そこら辺の草にでも掛けてみれば良い。試しにエキスをかけてみるが……溶けた。


「よし、大丈夫だ。あれは……この球で取るしかないか」

「……まかせて」

「えっ?」


 ジャニラちゃんの首に、花輪のようにして掛けられていた苗。

 それがニョキニョキと伸びてゆく。おお、恩寵の力か。

 蔓が果物に巻付き、戻ってくる。


「おお、凄いな、ジャニラちゃん!」

「えへへ」


 照れながらも、無邪気にはにかむジャニラちゃん。

 ぐはっ。このインパクトは何だ。幼女おそるべし。


 受け取った果物を解毒、安全を確認して、問題ないことを確認後、パクリと一口味見をする。

 美味いっ。酸っぱすぎず、甘すぎない。

 食べたことのない不思議な味だが、俺の好みに一致する。


「ほら、ジャニラちゃんも食べてみ? 美味しいよ」


 勧められて、ジャニラちゃんもその果物を口にする。


「おいしい」


 ジャニラちゃんにも好評のようだ。

 俺も食べたので、次回からは万能球で出せる。コレクションが増えたわけである。

 これで思い残すことなく、森を後にできる。


 果物をかじりながら、やっとのことで森の出口まで到達する。

 森を抜けた先にはまた荒野。前方の彼方にはうっすらと山が見える。でかいな。


 山まではかなり距離がありそうである。

 これだけ遠いということは――


「あんな遠くから地響きが伝わってきたのか? とんでもないな」


 目的は先輩の捜索だ。

 まずは、西の火の民とやらに情報を聞いた方が良いだろう。


 目の前の山に向けて出発することにする。

 地道に進むしかないだろう。


「よし、あの山が次の目標だ。行こう――っ!」


 いつの間にか、目の前には、変な顔の人種不明の生き物がいた。


ジャニラちゃんは物語の重要な人物です。

ネタバレになっちゃうかな?

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