0.ゲームの内側
最近、毎日が楽しい。
これまでも楽しいことはいっぱいあったけど、ここ最近は格が違う。
夢を持つことは素晴らしいし、それを叶えたらもっと素晴らしい。
けど一番は、夢を叶え続けることだ。
私は今、夢を叶え続けている。
自分の作り出した最高の世界で、最高の夢を生み出しては叶え続けている。
私の名前は中野 翠。
この世界の魔王であり、最強のプレイヤーであり、創造主だ。
私の一日は0時から始まる。
寝る時間はない。まぁそれも『睡眠不要』のスキルのおかげの訳だが、これにより実際にプレイヤーとして活動する時間と、創造主としてゲーム内を管理することの両方を可能にしている。
「えーと、最近プレイヤーの中で流行っているバグを....って無限経験値バグってやめてよそんなことするの。やってる奴のレベル全員修正だ修正!」
この世界はまだまだ不完全だ。少しずつでも完璧に近づけないといけない。
特に環境を犯す程の不具合は直ぐに修正しないといけない。楽しむ分にはいいが、ゲーム崩壊レベルのものが発覚、利用されればこの世界は簡単に崩壊する。
でも別に大きなペナルティをプレイヤーに課すつもりはない。これも全て、この世界を生み出した私の責任だから。
そもそも2Dドットのゲームが突然ド〇クエ8みたいな3Dゲームの世界になったんだ。
バグなんて起きて当然。
それでも.....
「一体対象者何人いるのよこれ....。」
潰しても潰しても減らないバグ利用者に対し、憤りがないという訳ではないんだ。
今回発生したのは、これまでも数多くのバグがあった経験値に関わるもの。
みんなモンスターを戦うことが嫌いらしいから、素振りとか、ダミー人形とかに武器を振るったら微小の経験値が得られるようにしたのだが、それを利用されたらしい。
的の超至近距離で弓を構え、その状態のまま矢じりを的に当てる。そうすると的に矢が多段ヒットした判定になり、結果として大量の経験値を得られるという方法だ。
数分、数時間矢を的に触れさせ続ける人の絵面はなかなかシュールで面白いが、実際に行われている演算は少しも可愛くない。
このバグはきっとモンスターとの戦闘でも起きてたはず...。でも戦闘では敵が動くから、露見しなかったんだろう。
「よくバレないと思ったな。一日でレベル5アップとか怪しまれるって考えないのかな。」
いややろうとしたらできないこともないんだけど、当然チェックはされてるに決まってるでしょ。
....違うか。
なぜ修正されると知っていても経験値を不正入手しようとするのか。その理由は分かる。
一時的にでもレベルを上げ、それによって得た力でモンスターを倒し多くの経験値を入手。
不正分は回収されても、正攻法で得た経験値は無くならない。
結果として、レベルを上げられるという訳だ。
問題は私がどこまで修正するかだ。
この場合、バグの修正と不正分を回収するのは必須として、既に正攻法で得た経験値を幾つまで回収すべきか。
これまでは回収しても数割。もしくは数日間の経験値無効といった対策を講じてきたが、それでもこういったことをするなら最早手段を選んではいられない。
「やっぱりもっと痛い目を見ないと分からないんだろうな。」
そう思い、これまで「いや、それは流石にやり過ぎじゃ...」と思い講じてこなかった策を実行に移す。
今日はきっと、バグプレイヤーにとって最悪の一日となるだろう。
うーんこのカタルシス。
いやはや、とても愉快。




