第21話:委員会活動
■星曆一九〇七年(光分四〇年)・五月:月輪皇國/平坂吸血鬼學園/裏山の入り口/時刻は昼
害獸驅除委員會に入会届を出し、俺は正式に害獸驅除委員となった。
すぐ翌日から委員会活動があると知ったのは石橸ハヤトに声をかけてもらったからだった。昨日は囎唹サユリのことで頭がいっぱいでまったく話が頭に入ってこなかった。
今日は午前中で授業が終わりだ。吸血鬼學園は授業が午前中で終わる日のほうが多い。それからは部活動や委員会活動の時間となる。
薄暗い裏山の入り口に赤榕コズエ先輩の可愛らしい声が響く。『地面まで届く長い髪』という見た目のインパクトが強いので、一発で名前を覚えた。
「は~い、新入生の皆さん聞いてくださ~い。最近、裏山のほうで鬼オオカミの目撃情報が相次いでいます。そのため、これから裏山で駆除活動を行います」
鬼オオカミというのは吸血鬼ウィルスに感染したオオカミである。その体躯は成体でバイクと同じくらいある。
吸血鬼が自分の血液を動物に投与して鬼獸化させたものを使役獸と呼ぶ。こいつらは感染させた吸血鬼一族全員の命令に従うので問題はない。
問題は野生の鬼獸である。こいつらは平気で人間や吸血鬼に襲い掛かってくる。
吸血鬼が貴族として領地を持ったキッカケというのも、まさに人間を鬼獸から守るためであった。
「ちゃんと体中に日焼け止めを塗っておいてくださいね~。特に首筋は重点的に~」
今日は結構日差しが強い。
空を見上げると、雲一つない晴天の上を協和國軍の高高度偵察機である《卅八式司令部偵察機『飛天』》が飛んでいた。四発プッシュプル機だからすぐに分かる。
まあ、山の中に入れば少しはマシになるだろう。
いくら制服に頭巾が付いているといっても、戦闘に突入したら簡単に脱げてしまう。俺はいつもの要領で首筋、手首、足首に日焼け止めを塗った。
「ねえ、お兄ちゃん。私の首に日焼け止め塗ってくれない?」
声がした方を見ると、サオリが日焼け止めのチューブを持って立っていた。
「ああ、いいぞ。髪の毛持ち上げててもらえるか?」
「うん。……ぁん、冷たぁぃ♪」
「おい、変な声出すな」
周囲の連中がこっちを見たので、俺は慌てて弁明した。
妹のきれいな項に日焼け止めクリームを擦り込んでいく。白磁の肌が磨き上げられ、透き通るような柔肌から藍色の血管がうっすらと見えた。
チラッと囎唹サユリの方を見やると、女中の曾我部モモカに日焼け止めを塗ってもらっていた。今のところ、こちらに話しかけてくる様子はない。
他の人たちが日焼け止めを塗るのを待っていると、先輩から護身用のリボルバー拳銃を渡された。
ろくに整備されていないのか赤錆が浮いている。
渡された拳銃――《PR md.50回轉式拳銃》はリボルバー拳銃のくせに雷銃彈を使用するバカみたいな拳銃だ。本来は人間側から鹵獲した雷銃彈の有効活用という名目で開発されたにもかかわらず、現在ではすっかり定着したサイドアーム扱いになっている。
しかも、よく見ると日乃本軍が使用する6.5×58mm雷銃彈ではなく、アージェンティア軍が使用する7.65×63m雷銃彈仕様だった。
ヴァラヒア帝國から輸入した中古品だろうか?
大柄なアージェンティア人と比べて小柄なヤシマ人からすると7.65×63m雷銃彈は反動がキツくて使いづらい。
「なんと今回は駆除成功で内申点が貰えちゃいます! それではB班の皆さん、はりきって行きましょ~」
なんとも現金な台詞とともに、一同は昼下がりの裏山へと入っていった。




