第9話 ♡
「ララ…っ」
何をしようとしているのかわかったお父様が必死に起きようと頑張っている。
「ご存知ですか?公爵家の長男である公爵閣下には子種がなかったので、公爵夫人は閣下の次男からもらったそうですよ」
「…待ち…なさ…」
「みんな、そうやって一家の繁栄を守ってきたのです。変なことではありません。」
「…ちが…う…こんな…ことは…」
「私はお母様から、子を産むことが女の仕事だと教わりました。大丈夫です。私にも知識はありますから、最後まで出来ます」
「…だめ…だ…息子のことは…必ず…戻すから…」
「戻しても意味がありません!オリバー卿は他に恋仲の方がいらっしゃるんです!私とはできないと、はっきり言われました!その方の元にもう行ってしまったので、私はこうするしかないんです…っ」
あたかもかわいそうな若い婚約者と思われるように言えたかしら?
ちゃんと両手で顔を覆って泣き真似をしたし、大丈夫ね。
「…そん…な…」
「私…魅力ないですか?私がだめだから、卿は出て行ってしまったのでしょうか…」
指の隙間からこっそりお父様を覗くと、悲痛の面持ちで私をみて首を振ろうとしてくれた。
「本当ですか?私、ちゃんと綺麗ですか?」
お父様は上手く頷くことができないから、か細い声で
「ああ…」
と肯定してくれた。
嬉しい。すごく嬉しい。綺麗って思ってくださった。大好きなお父様が。
「じゃあ、できますよね?」
私はお父様の顔に自分の顔を近付けた。
私の長い髪がお父様の鼻先にかかってしまったから、耳に掻き上げて色っぽくみえる演出もした。
お母様に教えてもらった技を惜しみなく出していくわよ。
「…待…」
そして、初めて唇を重ねた。
ついに長年恋焦がれていた人とキスができた。
これだけでもう、幸せだった。
胸がいっぱいで熱くて、唇を離すと自然と吐息が漏れた。
なんだか気持ちがいい。
体がさらに熱くなってきた。
「もっとしますね」
信じられないとばかりに目を見張るお父様をそのままに何度も重ねた。
舌の入れ方はよくわからなかった。
ちろちろと出して入れてを繰り返してみたけど、お父様は何もしないから気持ち良くさせられているのかどうかわからない。
私はキスをやめると、今度は体に跨った。
「お父様って呼ぶと、いけないことをしている気になってしまいますので…今夜ばかりは閣下と呼ぶことにします。」
そして、閣下の上半身をはだけさせるとゆっくりと優しく撫で回していった。
「…もう…やめ…なさ…」