表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/71

第7話

「こちらは私が作った茶葉でございます。ぐっすり眠れる葉を使いましたので…飲んで頂けませんか?その、初夜ということもあり大きな声を出してしまうかもしれません。恥ずかしいのです。」


声を聞かれたくないと言いたかったことを察してくれた男爵閣下は


「私にそんな趣味はないけど、可愛い娘が作ってくれたお茶は頂きたいね。」


と言ってシャーロットからカップを受け取ると口をつけてくれた。


「前と香りも味も違うね?たしか前回はカモミールに蜂蜜を入れたものだったかな。」


「その通りでございます。さすが男爵閣下ですわ。」


「閣下だなんて呼ばないで?もう婚約したんだから、お父様と呼んでくれないか?で、今回は何をブレンドしたのかな」


「眠っていても元気になれるものですわ」


「ん…?元気に?ああ、起きたら元気になっているということかな?疲労回復?」


「まあ、そんなところです。…お父様。」


「あ、いいね。慣れるまで頑張って」


私はずっと男爵閣下をお父様と呼びたかった。

父親のいない私は、父親という存在に強い憧れをもっていた。

幼い時だったけど、初めて会った時のことを鮮明に覚えている。

なんて素敵なお方なんだろうと思った。

格好良くて優しくて、なんでこの方が私のお父さまじゃないんだろうと。

オリバー卿がものすごく羨ましかった。

私のお父様になってほしかった。


「あ…もうすでに瞼が重くなってきたよ…すごいね、私の娘が作ったお茶は…」


「お褒めの言葉をありがとうございます。倒れてはいけませんので、寝台へどうぞ」


「ははは、悪いね。心配してもらって」


お父様は嬉しそうに微笑んだあと、寝台へ足を動かした。


横になったのをしっかり見届けると私たちは一度部屋を出た。


「さあ、布を取りに戻りましょう。」


不安なのか卿は、一言も話さなかった。

失敗するのが怖いのかしら?

それともお父様を騙すことや私を利用することへの罪悪感でつらいのかしら。

胸を痛める必要はないのに。

こっちだって利用するのだから。


あらかじめ用意していた、お父様を拘束するための布をもつと、もう一度寝室へ向かった。


静かにドアを開けると、そこには気持ちよさそうに寝息をたてているお父様の姿があった。


寝ていても素敵だなんてずるい人だわ。


シャーロットが見張りをしてる間に手早く私と卿はお父様の手をベッドの両脇にあるサイドレールに縛りつけた。


「よし、これで大丈夫ね。追ってこられないわ。今のうちに逃げてください。あとで起こした後にお父様を説得しますから。」


「…本当に、いいの?」


もう、しつこい人ね。

優柔不断なんだから。


「安心して行ってきてください。子を孕みましたら手紙で報告します。領地で待っていてください」


私は仕方なく最後まで背を押してあげた。


卿は私を抱きしめると礼を言ってお父様の部屋を出た。


これで邪魔者はいなくなったわね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ