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「ララ、おいで」
ブルーが、助けに来てくれた。
大きな腕を広げてくれた。
言葉は必要なかった。
涙でぐちゃぐちゃになった顔のまま抱きついた。
倒れた馬車からブルーが抱き上げて出してくれた。
お父様も追手を片付けたようで、馬車に駆けつけてお母様に手を差し出した。
「遅すぎるわよ!!逆に殺してやる!!」
お母様は怒り沸騰でお父様の胸を叩いたり引っ掻いていた。
「ブルー、シャーロットが、私たちを守って…弓で…!!」
「ああ、ひとまず治療しにいこう。これは…毒弓か?」
シャーロットは右胸の上部が緑色に変色していた。
「そんな…解毒、解毒しないと…!吸って吐けば…」
自分で作った解毒作用のあるお茶は家にある。
だが、それよりもまず先に毒を抜かないと、体に回ってしまっては遅い。
お腹に赤ちゃんがいるのに、私が口で吸って吐く方法をとって大丈夫だろうか…
「ララ、私がやる。毒には耐性があるんだ。」
お父様がお母様から離れると、弓矢をそっと抜いてシャーロットの傷口に唇をつけた。
「それであなたが死んだら逆に殺すからね!早く吐きなさい!」
元王子とはいえ、今は夫のような存在だからか、お母様は容赦なく暴言を吐き散らしていた。
死んだら殺せないけど、それくらいお父様のことを大事に思っているんだと思う。
「毒の耐性…やはり、殿下か」
私を抱き抱えたままボソッとブルーが呟いた。
どうやらブルーはお父様を知っているみたい。
シャーロットは無事に一命を取り留めた。
家に戻っても追手はいなかったので(おそらくお父様とブルーがあの時に全員始末した)シャーロットを寝かせて、医者を呼び寄せている間に解毒の茶葉をとりだして、傷口に当てた。
シャーロットは肩も斬られ、弓矢まで刺さり重症だったのに、驚異的な生命力でもちこたえてくれた。
医者の治療も間に合った。
本当に良かった…。
「シャーロットが死んだらあなたを殺すから」
とお母様はずっとお父様に怒りをぶつけていた。
「それで、殿下がどうしてここにいるんです?ララとはどんな関係で?」
シャーロットが無事とわかり、安心してからブルーはお父様に問いかけた。
「ララは私の娘だよ。」
「…」
お父様の回答に、ブルーはお母様とお父様を交互に見て、ため息をついた。
「ララを危険な目に合わせたくはありません。籍は入れないでくださいね。殿下はこの先、権威を取り戻しますよね?」
「その話は後日詳しく話すから今はやめてくれないか?」
「えっ廃皇子になったのではないのですか?」
話が中断される前に私は聞いた。
お母様は全部わかっていたのか、全く動じなかった。




