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お母様がいつも使う馬車に乗ると、こちらに追手が駆け寄ってくるのが見えた。
なぜ私たちまで追いかけるの?
お父様は少し離れたところで剣を交わしていた。
元王子だけあって、剣裁きは舞っているように美しかったし強かった。
お父様は、私たちの馬車を追手が追いかけるのに気付き、私たちを助けるために走ってきた。
その時、木の上にのっていた者が矢を放ち、馬が射られてしまった。
私たちの馬車が激しく揺れて、馬が倒れてしまった。
お腹に子供がいるのに!!
お母様は私を庇うように抱きしめてくれ、シャーロットは馬車を飛び出して盾になろうとした。
「だめよ…!!孫を抱き上げるって言っていたじゃない…!」
「シャーロット!戻りなさい!」
私もお母様も叫んだけれど、シャーロットは戻ってこなかった。
「うっ…」
弓矢が命中してしまったのか、シャーロットのうめき声が聞こえた。
ドアの前に立ち塞がって、お父様が来るまで私たちを守ろうとしているようだった。
「そこを離れろ」
追手の声が聞こえて剣を振り上げる音が聞こえた。
「やめて…殺さないで!私のもう1人の母なの!やめて!!お父様助けて!!」
金切り声をあげたとき、グサっと人を刺す音が響いた。
その声と共に
「よくやった。もう私が来たから大丈夫だよ、シャーロット」
ずっと聞きたいと思っていたバリトンボイスが鼓膜を揺らした。
え…?
今、僕ではなく″私″って言った?
しかもこの声って…
剣と剣がぶつかる音が続いて、止んだころ、馬車のカーテンをサッと開けた手が見えた。
私に覆い被さっているお母様も私も震えながらカーテンの外を見た。
「ララがお父様と呼ぶのは私だけのはずだが」
愛おしくてたまらない、会いたくてたまらなかった人が返り血をあびた状態で私の目にうつった。




