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侍医が診た結果、どこにも怪我はなく無事ということが判り、安心したと思ったがララは2週間分の記憶を無くしていた。


つまり、私と結ばれた夜を無かったことにされた。


心に衝撃が走った。

ようやく、ララの気持ちを知ったのに。

悲しみと悔しさが込み上げてきて、どうしてこんな感情が心から生まれてくるのか少しの間、わからなかった。



侍医を帰した後、バトラーと2人きりで話し合った。

まず、バトラーにララからの手紙を見せた。

燃やすよう言われたが、そんなことが出来るわけがなかった。

皺だらけにはなったが。


「お嬢様は、旦那様をお慕いしていたんですね」


いつも柔らかい笑顔を向けてくれるバトラーが手紙を読んで一瞬眉を顰めたが(おそらく体を重ねた事実の部分を読んで)またすぐに微笑んだ。



「旦那様はどう思われたんでしょうか」


「好意は嬉しいが、私にはもったいないと思わないか?あんな綺麗な子が、こんな歳の離れた寡婦と婚姻だなんて」


「歳の差の婚姻はよくあることですので心配に及びません。伯爵様が奥様に先立たれて50になってから若い令嬢を後妻にされたことをご存知ではないですか。あとは公爵夫人も確か後継のために…」


「ああ。それはそうだな。…そうか、おかしなことではないと思うか。」


「旦那様は、お嬢様のことをどうお思いですか?」


私は少し考えた後、バトラーに言った。


「誰よりも可愛い娘だと思っていたが、思おうとしていたの間違いだった。」


「はい。」


「あの夜からはもう、女性にしか見えない」


「お嬢様はどの殿方から見ましても美しい女性ですので、当然の感覚かと。」


「そうか…驚かないんだな。反対もしないみたいだし」


「不躾ながら…私が旦那様へ何度後妻を娶ることをすすめたか、お忘れになったのですか?」


「ああ、それでか…」


やけに飲み込みや受け入れるのが早かったのは、ララとの婚姻はバトラーにとっても都合が良かったことらしい。


「それだけではございません。お嬢様はこの二週間、たくさん努力されましたし、私や他の者にも親切にしてくださいました。ましてや跡取りのために体を張るなど、男爵夫人になる器があるとしか思えません。」


ララの魅力はバトラーにもメイドたちにも伝わっているようだ。

しっかりと周りが固められていた。



「そうか、ならこうしよう」


私はバトラーにだけ真実を伝えて他の使用人たちには嘘を伝達することにした。

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