第42話 (第一章最終話)
帰りの馬車で私は、子供のようにはしゃいでいた。
ブルーと腕を組んで寄りかかっては何度も″楽しくて幸せだった″と笑顔で話した。
「あの、男爵夫人になれたら、月に一度は領地視察へ行かせてくれませんか?茶畑の様子を見たいんです!もう楽しくて仕方ありませんでした。」
「そう…それは良かった」
ブルーは私の頬をさすって寂しそうに笑った。
「どうしてそんな顔をするんです?」
「ララは、きっと茶畑に行ったら帰ってこないだろうなと思って」
「えっ!?私がですか?」
「ああ。″ここに住みます!″って言いそうだからね」
「そんなわけありません!」
私は腕に力をこめてギュッとブルーにしがみついた。
「私はブルーが大好きなんです!離れたくありません!月に一度の視察には一緒に連れて行ってほしいって意味で言ったんです!」
「なんだ。そうなの?それなら喜んで一緒に行くよ。」
「嬉しいです!ありがとうございます!」
私は組んでいた腕を抜くと、ブルーの膝の上に跨ってキスをした。
「馬車でも、キスできますものね」
ふふっと笑ってブルーを見つめたけど、ブルーは何も言わなかった。
「毎日子種が欲しかったのに、あちらで過ごした3日間はシませんでしたね。私たち疲れ切っていたようです。」
「うん。そうだね。」
「今夜も、また移動で一日が潰れてしまいますから…その、ブルー…今から…」
そう言って私はブルーの股座に手をそっと置いた。
「ほしいの?」
ブルーの問いかけに顔を熱くしながらコクッと頷いた。
「ララは、私のことが好きなのかな」
当然のことを聞かれてキョトンとしてしまったけど、すぐに笑顔で頷いた。
「お慕い申しております!いえ…それよりもっと…愛してます」
「記憶を取り戻したのに?」
「そ…ーーーーーー…え…?」
「やっぱり、戻ったんだ?」
私は背筋が凍ったかと思った。
きっと一気に顔が青くなったと思う。
怖くて震えて、離れようと膝から降りようとしたら、お尻を掴んで動けないようにされた。
「医者が″ 1ヶ月様子を見てください。すぐに思い出すこともありますので″って言っていたよね?ララがなくした記憶は二週間。その期間に、3日で庭園の花を咲かせたんだよ。医者の言った通り、すぐに思い出したんだね。どうして黙っていたの?」
違う。
思い出したのではなく記憶を失くしていないだけ。
嘘をついただけ。
どうすればいい?
嘘をついたと告白すればブルーまで
″私も嘘をついたから全て演技で君のことは好きじゃないよ″
なんて言い出すかもしれない。
今から別れを切り出されるの?
怖い。
全身が震えて涙も止まらない。
「ねぇ、記憶を取り戻したことを、どうして言わなかったの?私が嘘をついたことが分かったよね?私たちは恋仲ではなかったって」
ああ…。
だからこの3日間、私を抱かなかったのね。
農作業で疲れてたって、する元気はあったのに、あえて抱かなかったのね。
おしまいだわ。
今度こそ本当に終わってしまった。
夢から醒めてしまった。
助けてシャーロット。苦しい。
私と共にここから一緒に消えて。
********第一章終わり********




