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「こんな綺麗なお方に…ましてや領主様である閣下の許嫁様に手伝っていただくのは恐れ多いです。」
茶農家さんであるアドルフが丁重に断ろうとしてきた。
「何をおっしゃってるんですか?私も平民です。ほら見てください?この手、少し傷がついてるでしょう?葉を揉んで茶葉を作ってるからなんです。」
アドルフは驚いたようにまじまじと私の指先にある傷を見た。
そうは言っても植物と対話できる私にとってはどう揉めばいいのか簡単に分かるし、そんな大量には作らないから傷は少ないのだけど。
「お嬢様が、茶葉を作られると…?」
「はい。植物博士って呼んでくださいね?私の手にかなえば、どんな植物も3日で綺麗に咲き誇りますから。」
「そうそう。うちの庭園の一部も3日で生き返ったんだったね?」
「はいっ!」
ブルーが覚えててくれたことが嬉しくて、振り返って笑顔で頷いたら、ブルーは目を見開いて固まった。
3秒くらい見つめあったかな?
無言で動かないブルーを見て私が不思議に思って首を傾げたら
「ああ、あまりにも笑顔が可愛くてね。すまない…」
なんて言うものだから、私もアドルフも笑ってしまった。
「この寒い時期ですと、白い花が下向きに咲くのですが、それは水不足だったり適正肥料が少なかった時、つまり茶樹が弱ってる時に咲くんです。子孫を残すために、生殖生長を起こして花を咲かせると言われています。」
と私はブルーの表情を深く考えることなく、アドルフと茶葉について話し合った。
後ろでブルーが深刻な顔で考えごとをしているなんて気付かなかった。
アドルフと彼の奥様と一緒にさっそく茶畑に行って私は説明した。
ブルーも一緒に聞いてくれた。
「この時期からもう追肥が必要なんです。これからしましょう。あとは、水やりのタイミングを間違えると乾燥してしまうので何時が適正か、後ほど紙に書いて渡しますね。」
私はアドルフたちと肥料を散布していった。
土壌と混ぜ合わせたり、茶樹の周りの草を刈り取ったりもした。
葉が揺れて″嬉しい!気持ちいい″と叫んでいた。
ものすごく楽しかった。
時間を忘れて夢中になって、泥だらけになるまでがむしゃらに作業を続けた。
″領主自ら茶葉を育てる″ことは前代未聞のようで、アドルフや茶農家の人たちを驚かせ、感動させた。
夜にはもう動けないくらいに疲れていて、私もブルーもすぐに眠りについた。
そして約束の3日後、見事に茶畑が生き返った。




