第4話
美しい貴公子と呼ばれている卿は、その名の通り女性のように美しい。
そして、私のことを愛していないのではなく愛せない。
前に、眠れないと相談を受けた日に、一度家に帰ってよく眠れる茶葉をもって男爵家へ戻ったことがある。
その時に、私は見てしまった。
オリバー卿が、男性と唇を合わせているところを。
相手は恰幅の良い筋肉質の男性で、制服からして王宮騎士だった。
王宮騎士と、男爵卿の秘密の恋を、目撃してしまった。
私はなんて都合がいいんだろうと笑いそうになるのをこらえて、騎士がお帰りになるまで静かに見守った。
帰った後、鼻を啜るふりをして卿の前へ現れると、顔を両手で覆い、泣き真似をして話しかけた。
激しく狼狽える卿に、私は泣き真似をしながらも冷静に伝えた。
「私、貴族になることが夢でしたの…。オリバー卿が私をそのような目で見ていないことは存じておりました。ですが良い関係を築けていましたし、結婚した後は必ず男爵家の跡取りを生もうと決めていました…。それが、私の使命だと疑わず…」
卿は私を抱きしめながら何度も謝ったあと、結婚はできてもどうしても子作りはできないと言ってきた。
女性を相手に、昂ることができないと。
だから貴族にはしてあげれるけど、子供は養子をもらうことを許して欲しいと言われた。
私はもちろん許さなかった。
「子の産めない女だと白い目で見られてしまいます。ただでさえ私は平民です。それにオリバー卿のことを大切に思うからこそ、卿の幸せを応援したいのです。」
「でも、それでは君の夢が…」
「大丈夫です。私たちが幸せになる方法が一つだけあります。」
私はある提案をもちかけた。
卿は渋い顔をして、3日考える時間がほしいと言った。
考えるだなんて、もう答えが決まっているようなものだった。
想定通り、3日後にいい返事をもらえたのだから。
あとは可愛い植物たちに協力してもらって、作戦を決行するのみ。