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「領地なんだけど、こことここにあって…」


お父様は地図を広げて領地の説明をした。

私はうまく頭がまわらないまま、聞くしかなかった。


「ああ…悪いね。まだ14なのに仕事の話なんてしてしまって。今まで家内はいなかったから私とリビーでやってきたし、ララは別に何もしなくていいからね。ただどのようなことをするかだけ知っていてほしい。」


「…はい…」


「男爵家の押印はこれね。デスクの右側の1番上の引き出しに入ってるから。あと招待状への返事の仕方はメイド長から後日聞いてもらえるかな?家内がいないから社交界にほとんど無縁だったけど、今後私とララが婚姻したらきっと誘われるようになるからね。」


「…婚…」


私はようやくそこで頭が回転した。


「結婚ですか!?私と閣下が?」


「うん。約束したからね。」


してない!

とは、記憶を失ったふりをしてたことがばれるから言えない。


それに、なんだか全て私の願望通りにコトが運んでいるし、もうこのままでいい気がしてきた。


私はお父様と結婚できて、男爵夫人になれる。


だからお父様の仕事の手伝いがしたいし、ちゃんと説明も受けて覚えたい。


「お父様!…あっ結婚するから、あなた?」


お父様は目を丸くすると大きな声で笑った。


「いいね。そう呼んでもらおうかな?あとは下の名前は知ってる?」


知らないわけがない。

幼い時からずっとずっと恋焦がれていた人の名を。


「ブルーノ様…」


「そう。愛称はブルー。よんでみて」


「ブルー…」


私がそう呼ぶとお父様は甘い笑顔を向けてくれた。

ああ、眩暈がしそう。

そんな視線を注いでもらえるのなら私が記憶喪失を起こしたという体のままでもういい。

シャーロットには悪いけど一緒に騙されてほしい。


私はお父様、もといブルーに抱きついた。


どうせなら嘘がバレるまでこの関係を満喫したい。


「今夜も一緒に寝ても…?」


「ああ、もちろん。これから夫婦の部屋を作り直さないとね。教会へ一度婚約破棄をしに行かないといけないから、リビーにもいずれ署名をもらわないと…」



そうだ。そうだった。

なぜかメイドや執事が私とブルーの結婚を認めていたけど、オリバー卿は何も知らないはず。

私とシャーロット以外にも現実を知っている人がいた。

ブルーはオリバー卿がどの領地に行ったか知らない。

なんとしても私が先に行って″お父様が言ってることに合わせて″と言わないと。


手紙では、誰かに読まれてしまうかもしれないから直接行った方がいい。

それに、郵送も執事に頼むことになるから居場所が特定されてしまう。

領地に行く準備をしよう。



「ララ、青い顔してどうしたの?もしかして、私と結婚するのが怖くなった?」


「そっそんなわけありません!嬉しいです!夢のようで…まだ現実とは思えないくらいです」


「可愛いことを言うんだね」


執事がいると言うのにおかまいなしにブルーは触れるだけのキスをしてきた。


怖いよ…

すっごく怖いのブルー。

このありえない幸せが何か一つでもピースが合わないと完成しないパズルのようで。

いつかほころびが出てパラパラと崩れ落ちてきそうで、とっても怖い。


私はギュッとブルーに抱きついた。

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