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「おはようララ。僕が起きる前に部屋に戻ってしまうなんて寂しいな。もしかして昨夜のキスが良くなかったのかな?」
お父様がみんなの前であり得ないことを言い出した。
「閣下…!なにをおっしゃって…」
「もう恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。みんな知ってるから。君が忘れているだけ」
お父様は余裕の笑みでそう言った。
私が困惑の表情をシャーロットへ向けると、メイド長が前に出て言った。
「シャーロット、あなたまだ説明していないの?お嬢様は、旦那様の将来の奥様になるお方ですよ。記憶を失ったのなら、1番信頼されているあなたから説明するべきでしょう?」
「はい…?」
今度はシャーロットが目を開いてメイド長と私を交互に見た。
「まさか、あなたまで記憶を失ったとは言わないわよね?将来の奥様とあなたが同時に同じ記憶を失うなんてあり得ないわ。」
「…はい…ええと…はい?旦那様とお嬢様が、結婚をするとおっしゃいました…?」
「まさか!本当に知らなかったの?お嬢様専属のメイドだから全てをお嬢様から聞いていると思っていたのに…お嬢様、申し訳ございません!!勝手に口を滑らせてしまいました…」
メイド長は深く頭を下げてきた。
何がどうなっているの?
私とお父様が結婚するですって?
私は口をあんぐり開けたまま何も話せなくなった。
「ララ、どうやら記憶を失う前の君は大事なことをシャーロットに言わなかったようだね。ここにいるみんなは知ってるんだ。リビーが出て行ったことも、僕たちが毎夜抱き合っていたこともね。」
「…!?」
「恥ずかしいことではないよ。子を産むためには必要なことなのだから。シャーロットには肩揉みをするだとか説明したのかな?あの時抱き合っていたんだよ。」
私はもう呼吸をすることさえ忘れて固まってしまった。
シャーロットも驚きすぎて固まっていた。
もう何も理解できない。
本当に私たち2人だけ記憶を失ったのかしら?
嘘をついたのではなく…?
「まあそういうことだから、ララはこれからは男爵婦人になるために色々学んでいこうね。さあ、私の部屋へおいで。仕事の説明をするから。」
お父様は手をスッとのばしてきた。
私はどうすればいいのわからなくて動けなかった。
お父様はクスクス笑うと私の背中に腕を回して、
「恥ずかしがり屋なのにみんなの前で言ってごめんね」
と謝って、私の背を押すようにして歩き始めた。
当然のごとく自然と足が動いて一緒にお父様の部屋に向かった。
やっぱり…夢?
その後、メイド長は真実″というものをシャーロットに伝えたらしい。




