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私は自分の部屋で目を閉じていた。


侍医が私の手首の脈を測ったり熱があるか確認したり体を見て傷がないか調べたあとに口を開いた。


「旦那様、どこにも悪いところは見当たりません。メイドが言うに階段の下部で足を滑らせたようですし、軽く床に頭を打って気を失っただけでしょう。頭部に傷も出血もありませんし大丈夫と思います。意識がもどったあと1日は、安静にするようお伝えください。万が一吐いた時にはもう一度…」


「んーーっ…」


私は医師の話を遮って伸びをした。

そしてゆっくり目を開けると


「あれ…私なんで眠って…?」

と、しらじらしくも何もわかっていないふりをした。


「お嬢様…!良かったです!」


シャーロットが私の手をガシッと掴んでそう言った。


「私がついていながら、守れなくて申し訳ございません!」


「え?なんのこと…?」


そこでお父様が私をなぜか抱きしめてきた。


「ララ…良かった目を覚まして…階段から落ちたそうだよ。どこも痛くない?大丈夫?」


心配そうにそう言うお父様を見て、またドキドキしてしまいそうになったけど設定を思い出してキョロキョロと辺りを見渡してみた。


「どうしたの?」


「あの、オリバー卿はどちらですの?」


「えっ」


私の問いかけに侍医、執事、メイドたちがざわつきはじめた。


「私今夜婚約するんですよね?ここはオリバー卿の部屋ですか?あれ?私のお母様は?お母様と一緒に婚約パーティーに来たと思うのですが…まさか、パーティー前に階段から落ちたのでしょうか?」


もしや頭を打って記憶を…?

なんてかわいそうなお嬢様なの…!


と言った声が四方八方から聞こえる。


あのねそんな都合よく記憶を一部だけ消せる訳がないのよ。

記憶を失うとしたら全てか、何年間もゴッソリなくなるものなのよ。


「旦那様、もしかしたら一時的にお嬢様の記憶が混乱しているのかもしれません。1ヶ月様子を見てください。すぐに思い出すこともありますので」


記憶が混乱だなんてね。

私にとっては都合の良い解釈だわ。


良かったねお父様。

これで私とお父様の一夜は″なかったこと″に出来たわよ。

もう苦しむ必要はないわ。


また安堵の表情を浮かべているんでしょうね、と思ってチラッと目の前のお父様の顔を見上げたら私の体に腕を回したまま、ひどく傷ついた目で私を見ていた。


どうしてそんな顔をするの?

傷ついたのはこっちよ。

解放してあげるのだから喜んだらいいのに。


「ララ…目を覚ましたばかりだから、温かいお茶でも飲んで。今日は安静にするように」


そう言ってお父様は侍医を連れて部屋を出て行った。

傷ついたように見えたのは私の願望で、どうせ私のことを哀れんでいただけだわ。

もう何も期待しないし、早くここを出ていく準備をしないとね。


そう思っていたのに。

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