14
「お父様、寂しくて眠れません。どうか夢を見るまで、側に居てくださいませんか?」
苦しそうに、今にも泣き出しそうな顔で閣下を見上げてそう言った。
「本当に息子が申し訳ない…執事たちに誤解されないよう、明日話をするからひとまず2人とも入りなさい。」
「旦那様、誤解されない為にも私は部屋の外で立っています。誰かが来たら上手く言っておきますので。」
シャーロットは作戦通り、私と閣下を2人にしてくれた。
「ララが前にくれた、よく眠れるお茶を今夜は私が淹れてあげよう」
閣下は私をソファーに座らせるとお茶を淹れてくれた。
いつもメイドが淹れるところを見ているのか、とても上手に見えたし、手の動きも慣れているようにスムーズだった。
私はね、それを飲んでも寝れないのよ。
こうやって同じ部屋にいるだけで胸が早鐘を打っちゃうんだからね。
「どうぞ」
「お父様ありがとうございます」
どこからどうみても娘想いの優しい父親だわ。
なんて素敵な方なの。
「美味しいです」
「そりゃあ、自慢の娘が作った茶葉だからね」
「お父様が淹れてくれたからです」
「ははは、可愛いことを言ってくれるね」
可愛い…って言ってもらえた…。
嬉しい。
「お父様、私は魅力的ですか?」
カップを置いて閣下を見上げて聞いた。
閣下は微笑んで
「ああ、誰よりも美しい淑女だよ」
と言ってくれた。
婚約者に逃げられた私を同情してそう言ってくれたと頭ではわかっているのに、心は喜んでしまう。
もう、籠絡したいのに私が振り回されてどうするの!
「お父様、飲んでも眠くなりません。一緒に寝てください。お願いします。」
私は腰を上げると向かい側に座っていた閣下に抱きついた。
「ララ…ごめんね。息子の婚約者と一緒に寝るのはいくら父親でも許されないよ」
「私が眠ったら、夫婦の寝室に運んでくれたらいいので、お願いします。つらくて寝れないんです…グスッ」
得意の泣き真似で震えながら閣下の胸に顔を押し付けた。
「かわいそうに…」
ため息をつくと閣下は私を抱き上げて、ベッドに連れて行ってくれた。
「お父様、眠りにつくまで何かお話をしてくださいませんか?」
もう14にもなるから、さすがに絵本は無理だし、仕事でも家のことでもなんでもいいから閣下の話が聞きたい。
「息子の幼い頃の話をしようかな…」
「いやです。お父様の幼い頃がいいです。」
「私か…つまらないと思うけど」
「手を握ってもらえませんか?」
またわざと手を震わせて伸ばしてみたら、閣下は床に膝をついて、ベッドで横になっている私の手をそっと包んでくれた。
だめだわ、これだけで胸が痛い。
ちゃんと演じないと。




