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子カフェ  作者: 絶対完結させるマン
交わる人生

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彼らの犯罪計画

 太輔たちがしきりに口にしている"あの計画"とは、実に大胆で恐るべきものだった。

 これが成功すれば、社会に大きな爪痕が残されることは明らかだった。


 50人以上のメンバーたちを全国に散らばせて、各地で無差別殺人をさせる。

 それが太輔たちが企んでいることだった。


 『できるだけたくさん殺す』をモットーに、電車の中で目についた者を片っ端から刺し殺していく。

 いや、目についた者なら誰でも、と言うのは語弊がある。


 子どもや女性など、できるだけ弱そうな存在を狙うのが望ましい、というのが皆の総意だった。


 その方が社会が注目する。ニュースで悲劇的な事件として、大々的に取り上げられる。


 同情を誘う姿をしたか弱い存在を狙うことで、「亡くなった人たちが可哀想」「なんて痛ましい事件なんだ」と世間が騒いでくれる。


 そのためには子どもを狙うのが一番良いだろう、という話になった。できるだけ幼い子の方がいいと。


 これは復讐なのだと、太輔を始めとした全員がそう思っていた。


 自分一人の力では生きていけない、簡単に殺されてしまうような子どもたち。

 ただその場に居合わせただけ、ただ運がなかっただけで本人にはなんの罪もない弱者。


 そんな子どもをめちゃくちゃに殺すことは、自分たちがされたことを再現する形になる。


 子ども時代、誰にも助けてもらえなかった。誰にも苦しんでいる姿を見てもらえないまま、毒牙にかかってしまい、とうとう人生を終わらせるところにまで来てしまった。


 そんな自分たちの人生を、世の中の呑気に暮らしている奴らに知らしめたい。


 それが彼らの意思であり願いだった。


 彼ら彼女らが憎んでいるのは、自分を幸せにしてくれなかった社会そのものだった。

 全員、生きてて良かった、と思わせてくれない世界に恨みを抱いている。


 幼い頃からずっと、理不尽な世界に怒りをたぎらせ、胸をかきむしって泣き叫んできた者たち。


 自分はこんなに苦しんでいるのに、周りの人間たちは幸せそうに笑っている。

 自分が耐えても耐えても報われない一方で、なんでも上手くいっている人間もいる。


 そう思うと、ふつふつと熱い感情が煮えたぎってくるのだった。


 ずるい。理不尽だ。なんで自分だけ。苦しい。誰か気づいて。なんで報われないの。こんなに我慢してるのに。何も悪いことしてないのに。幸せそうな人全員憎い。みんな死んじゃえばいいのに。みんな不幸になれ。


 みんな死ね!


 そんな凶暴な感情を爆発寸前まで育ててきた者たちが54人。

 全員の気持ちが一丸となって、恐ろしい計画を実行しようとしている。


 全国で無差別殺人を行う、という犯罪計画を。


 計画が終わった直後には、ある投稿がネットに公開されることになっている。


 54人全員の思いの丈だ。一人一人、世間に向けて言いたいことを発表しよう、と誰からともなく言い出したことを発端に、全員が社会へのメッセージのようなものを書くことになった。


 明奈だけは小説で伝えることにした。

 明奈の人生が綴られたその小説は、きっと世間から注目されることだろう。


 この計画で、自分たちの憎しみの深さを教えてやるのだ。

 苦しんでいる他人を放っておいたツケが回ってきたのだと、この悲劇はお前たちの怠慢から起こったことなのだと、訴えてやるのだ。


 皆、そういった使命感に燃えていた。


 自分たちがこうなったのはお前らのせいだ。

 お前らが薄々勘づいていながらも、見てみぬふりしてきた報いがこれだ。

 こだまする悲痛な叫びを、ポツポツと現れてきていた違和感を無視してきた末路が、この惨劇を生み出したのだ。


 この犯罪計画には、そういうメッセージが込められていた。


 これを実行に移すことで、ようやく自分たちは世間に苦しんできたことを認めてもらえるのだと、みんな口には出さないけれど、そういう希望を抱いていた。


 そして皆、この事件が注目されることで、社会が前よりも良くなっていくだろう、とも信じていた。

 この事件は、良い教訓になるはずだ、と。


 もう自分たちのような存在が現れないためにも、何がなんでも注目されなければいけない。だからとびきり残酷に、とびきり派手にやらなければ意味がない。


 めちゃくちゃにしてやりたいという衝動。

 過去の自分を救いたい、という願望。

 未来の悲しみをなくすため、という使命感。


 それらの思いが噛み合わさって、この計画が爆誕したのだった。


 太輔の思いつきから生まれたこの計画に、今では多くの賛同者がつき、いよいよ実行の時が近づいてきた。


 計画が無事に完遂されたのち、メンバーの半分以上は自殺することに決めていた。


 メンバーは、もう人生なんてどうでもいい、という人間しかいない。

 人生最後にめちゃくちゃやって社会に爪痕を残して死んでやる、という志を持った者の集まりだ。


 残りの面々も、別に生きる目的などがあるわけではない。自ら死ぬ勇気がないから流れに身を任せる。ただそれだけだ。


 人をたくさん殺せば、どうせ死刑になるのだし。死ぬのがちょっと遅くなるだけだ。

 

 自殺しない組も、肉体的には死んでいないだけで、心は死んだようになることは明白だった。


 どっちにしても生を諦めたのだ。

 苦しい人生に終止符を打つことを望んだ。


 失うものも何もない。生きることを諦めた54人は、何だってできる気がした。

 彼ら彼女らは、間違いなく無敵の集団と言えた。

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