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子カフェ  作者: 絶対完結させるマン
彼女のこと

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初めてできた友達

 陰気で周りと仲良くやることが苦手な私にも、1人だけ友達と呼べる子ができた。

 同じ施設で暮らす須美(すみ)ちゃんという、私よりも一つ年下の女の子だった。


 須美ちゃんと私が仲良くなった経緯は、私が須美ちゃんの秘密を知ってしまったことがきっかけだった。


 ある夜、私は変な時間に目が覚めてしまった。

 せっかくだし一応トイレに行っておこう——と布団を出ようとした時。

 隣でゴソゴソと誰かが動く気配がした。


 施設では、幼児と小学生は大部屋で寝ることになっている。中学生になると2人部屋。高校生になると1人部屋が与えられる。まあ高校生は、帰ってこないことが多いんだけど。


 5歳までの幼児は、東側の大部屋に。6歳から12歳までの児童は、西側の大部屋で寝かせられていた。

 西側には、大部屋が二つある。一方では女子が寝ていて、もう一方では男子が寝ている。


 女子部屋には、20人以上が並んで眠っていた。私は隅っこが落ち着く根っからの日陰者なので、出入り口から一番遠い位置に布団を敷いていた。


 須美ちゃんは、いつも私の隣で眠っていた。私も隅っこの方が落ち着くんだ、と前に話していた。

 一番端の位置を譲ろうか? と言うと、そこまでしてくれなくても良いよ、と言ってくれたので、ありがたかった。


 隣の須美ちゃんは、若干息を荒らげて、両手を掛け布団の中に入れて、喉を天井に差し出すように頭を反らせていた。

 掛け布団の動きから、布団の中で何かしていることだけはわかった。


 私は須美ちゃんが夢中になってやっていることが気になって、すっかり目が覚めてしまった。


 しばらくして、須美ちゃんの動きが止まった。ふうっと一際大きな息を吐いて、それから少しずつ穏やかな呼吸に戻っていく。


 何と声をかけたものか悩んでいると、須美ちゃんがキョロキョロと周りを見回し始めた。

 私と目が合った。


 須美ちゃんは、なんで、と驚いた声で言いかけて、慌てて口を塞いだ。

 それから小声で、私に尋ねる。


 「なんで起きてるの」

 「トイレ行きたくなっちゃって」

 「見た?」


 何を? ととぼけるのが須美ちゃんのためだったのかもしれない。

 でも私は、さっき見たものについて須美ちゃんの口から教えてもらいたかった。


 「見た」

 「ああ……」


 須美ちゃんは、両手で顔を覆って穴があったら入りたい、という感じだった。


 人に知られたら、恥ずかしいことをやっていたのか。わざわざみんなが眠った時間帯にコソコソやっている時点で、そのことには気づいていた。


 私は、誰にも言わないしからかったりもしないから、何をしていたのか教えてほしい、と須美ちゃんに頼んだ。


 ここじゃ話しにくいから、と須美ちゃんは私をトイレに連れ出した。

 絶対に誰にも言わないでね、と前置きして、須美ちゃんは語ってくれた。


 「その……実はちょっと……ここを触ってたの」


 須美ちゃんは、おずおずと股に手を当てた。


 「バレたら先生に怒られるから絶対に内緒にしてね。このこと喋ったりしたら、私死んじゃうから。ねっ、お願いだからね」


 須美ちゃんの真剣さはわかったけれど、どうしてそこを触ることにあれほど夢中になっていたのかが理解できなかった。

 なので、それの何が楽しいのか尋ねてみた。


 それを聞くと須美ちゃんは、眉を寄せてうんうん唸りながら、随分と悩んでいたけれど、やがてボソボソと説明し出した。


 「あのね…………。エッチなことを考えながら、ここに手を当てるの」


 そう言って須美ちゃんは、片手を股に持っていった。


 「オシッコするところに手を当てて……?」

 「うーん、微妙に違うかな。オシッコが出る場所からは、すこーしズレたところ」


 私はひとまず頷いておいた。


 「それで、パンツ越しに手を当てて擦るの。それを続けてると、だんだんぬるぬるしてくるんだ」

 「ぬるぬるに? 股が?」

 「そう」


 私は自分の股に手を当ててみる。何度か擦ってみたが、到底濡れそうにもなかった。

 須美ちゃんの体が特別なのか。


 「ただ擦っても濡れないよ。エッチなこと考えながらじゃないと」

 「須美ちゃんは、どんなことを考えながらやってるの?」

 「それは……さすがに恥ずかしいよ。それに、そういうことを考えるのは悪いことなんだよ」

 「そうなの?」


 私は、自分が何も知らないのに驚いた。年下の須美ちゃんは知っているらしい色々なことが、私にはちんぷんかんぷんなことに焦りを感じ始めていた。


 「最初の頃、私先生の前でやっちゃったの。それが悪いことだって全然知らなかったから」


 真っ昼間、先生のいる部屋で須美ちゃんは例のことを始めたらしい。部屋には須美ちゃんのほかには先生一人しかいなかった。

 須美ちゃんの姿を見た先生は、須美ちゃんを白い目で睨み、やめなさい! と取り乱した様子で命令した。


 先生は何してるの、とか、信じられない、という言葉を投げつけ、最後に汚らわしいものを見るような目で言った。


 『あなたがそんな子だとは思わなかった』


 須美ちゃんは、この言葉に深く傷ついた。

 そして、自身のマイブームは、誰にも知られてはいけないのだと理解した。


 悪いことだから、先生はあんなに怒ったのだと、須美ちゃんは思った。

 きっと自分は、とんでもなく悪いことをしてしまったのだと。

 自分がやったことは、先生を怒らせ、悲しませ、失望させるものだったのだと。


 こんなことをしていると周りにバレたら、きっとみんなに嫌われてしまう。

 以来、須美ちゃんはこっそりやるようになった。


 「はるかちゃんも嫌いになった? 私のこと……」


 須美ちゃんが、目をウルウルさせながら訊いてきたので、私は正直に「嫌いになんてなってないよ」と答えた。


 「ホントに? 嘘じゃないよね? ホントのホントに嫌いになってないの?」

 「なってないってば。なんで嫌いにならなきゃいけないのかもわかんないし」

 「だって先生は、私のこと嫌いになったし……」

 「それは……先生がなんでそうなったのかは謎だけど。私は須美ちゃんのしてること、何が悪いのかわからない。先生が怒った理由も意味不明だし」


 須美ちゃんはポロポロと涙を流した。

 何か傷つけるようなことを言ったのか、とギョッとしたけれど、須美ちゃんの涙は感動から出たものだった。


 嬉し泣き、というものには縁がないので、私は須美ちゃんを泣かせてしまったことを謝罪した。

 すると須美ちゃんは、激しく首を振って否定した。


 「ううん、違うの。私嬉しくて……話すんじゃなかった、って不安になってたところだったの。ありがとう、はるかちゃん。ありがとう……」


 そこまで感謝されるようなことを言ったつもりはなかったから、こそばゆく感じる。


 「ねえ、須美ちゃんがやってることについて、また別の日にでも、もっと質問していい? 誰もいない時に。私、気になるんだ」

 「いいよ。私のこと嫌いにならない、馬鹿にしないって約束なら」

 「わかった。絶対に大丈夫だから安心して」


 こうして、私は須美ちゃんの秘密を知った。

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