親として
隆也に確認され、琢磨と侑子も頷いた。
「勿論」
「ようこそ、北條家へ」
温かな新しい家族に迎えられ、冬夜と春佳は手を取り笑い合う。
「……最後に、あまり愉快な話ではありませんが、皆さんは三神丈司をどうお思いですか?」
樹が尋ねると、琢磨と侑子は顔を見合わせ溜め息をつく。
「……優那が亡くなる直前まで、頻繁に『三神さんが……』と言っていたのは耳にしていた。三神銀行は大きな企業だし、御曹司の丈司さんは美形だというから、優那が惹かれたのは無理もないと思っていた。……いなくなった孫の父親は三神丈司さんだと見当はつけていたが、本当は誰の子なのかは最期まで分からなかった。娘は男に捨てられたあと音信不通になり、住居も変えた。……遺体となって発見され、警察から連絡があるまで、私たちは娘が三田にあるマンションに住んでいた事すら知らなかった」
琢磨が言い、侑子は疲れたような顔で笑う。
「……優那をあんな目に遭わせた男には、今も消えない怒りを抱いているわ。……けど、娘を捨てたのが三神丈司さんだと知ったのは、樹くんから手紙をもらったつい最近の事。私たちはまだ気持ちの整理がついておらず、どうすべきか決断できていないの。……二十四年経って、やっと娘を喪った痛みに慣れてきたと思ったのに、今になって憎む相手が分かった……。……でも私たちの人生はそう長くない。……今後、三神さんに新たな憎しみを燃やして生きるべきか、樹くんと春佳ちゃんを迎えて前向きに生きていくべきか……」
溜め息をついた侑子の手を、琢磨はテーブルの下でそっと握る。
「だが何もせずにこのまま泣き寝入りするつもりはない。ずっと憎み続けて生きるかはさておき、三神さんに連絡を入れて娘の事についてちゃんと侘びを入れてほしいと思っている」
「仰る通りですね。僕は自分なりの決着をつけましたが、お二人の想いはまた別です。ですから三神さんと接触して、お気の済むまで話し合ってもいいと思います」
冬夜は穏やかに話しながらも、心の奥底で三神の破滅を願った。
〝自分は〟約束通り彼との親子関係を他者に言わないし、マスコミにもリークしない。
だがオフレコで〝家族〟に報告しないとは言っていない。
琢磨と侑子がどんな行動をとるかまでは責任をとらないし、二人が接触したあと、三神の妻や子供がどのような反応をするかなど知った事ではない。
(因果応報だ)
冬夜は心の中で呟き、しおらしく謝った。
「僕のせいですみません」
すると、人のいい夫婦はパッと笑顔になって首を横に振る。
「樹くんは気にしなくていいのよ。あなたが北條家に戻ってきてくれた事と、三神さんの事はまったく別の話だわ」
「そうだとも。三神さんの事は私たちに任せ、若い君らはこれから楽しく生きていく事を考えなさい」
「ありがとうございます」
その後、年末年始に一緒に温泉旅行をしないかという誘いを受け、樹と春佳は楽しい予定に花を咲かせた。
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そしてほどなくして三神の秘書から連絡があり、樹と三神丈司との親子関係が認められたとの報告があった。
再度秘書と会った樹は、二度と三神丈司の前に現れず、彼の家族にも接近せず、この事をマスコミやその他の人に他言しないと誓約書を書き、望む金額を手にする事となった。
〝示談金〟の名目は「三神銀行の営業下において著しい精神的苦痛を与えてしまったため」という事になり、普通に考えればあり得ない話だが、裁判所に提出するものでもないのでよしとした。
北條夫妻は年を越した一月になったあと、三神夫妻に連絡をとると言っていた。
想像するも楽しみな修羅場となるだろうが、冬夜と春佳にはもう関係ない事なので、北條夫妻が結果報告をしてくれるのを大人しく待つ事にした。
「春佳ー。どっか行きたい所はあるか? 外国とか。住みたいマンションでも構わないし」
佃にある樹のマンションにて、春佳がリビングでスマホを弄っていると、樹が肩を組んで尋ねてくる。




