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有罪愛  作者: 臣 桜


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冬夜

 これが親にバレたら、また何か言われ、酷く叱られるだろう。


 バレないように育てていく方法を考えなくては。


 万が一知られてしまった時は、私が女性を妊娠させてしまった事にすればいい。


 その女性――仮名カナコは子供を産んだあと、私のところへ来て子を置き去りにした。


【あなたの子供です】とメモに書かれていたなら、私も育てざるを得なくなる。


 カナコとは仕事がうまくいかなかった時に深酒して出会い、私の家で関係を結んだ。ゆえにカナコは私の家を知っている。


 加えて、私の子が行方不明になった北條樹と同じ名前であれば、すぐに疑われてしまうので、彼の事は冬夜と呼ぶ事にした。


 私にとって優那は、北天の中心に位置する北極星(ポラリス)のような存在だった。


 優那は誰に対しても明るく分け隔てない女神のような存在だったが、私だけが知る孤独と苦悩を抱えている。


 心の底で欲している親の愛と期待を得られない彼女は、周囲の人たちに愛され、皆の中心になる事で一際輝いていた。


 だから私は、いっそう彼女を北極星だと思っていたのだ。


 クリスマスイブに一人で樹を出産したあとも、優那は泣き止まない子供をあやしながら、冬の空を見上げていたに違いない。


(……よし)


 私は頭の中で素早く〝理由〟を考えながら、冬夜を自分の子供にする算段を立てていく。


 親がDNA鑑定を勧めてきても、『どんな形であれ私の子だ。疑いたくない』と言い張って、愛情深い父親のふりをすればいい。


 そして今後、いっさいDNA鑑定はしないし、周囲に勧められても応じない。


 私は片手に重たい荷物を持ち、片手で慎重に冬夜の後頭部を支えて歩いて行く。


 通りを歩く人たちは、私をただの〝子育てパパ〟としか見ていないようだ。


 そもそも、東京の人は他人にさほど注意を払わないし、生活感のある荷物を持った私を連れ去りの犯人と思わないだろう。


 加えて、私は陰気ななりをしているが、生まれてこの方職質を受けた事はない。


 誰かを害するようなタイプに見られない事が、今は味方してくれている。


(家に帰ったら育児書を買いに行かなくては。それから同じ粉ミルクや紙おむつのストックも買って、ミルクの作り方を練習する)


 私は頭の中でこれからすべき事を考えながら、自宅へと歩を進めた。






 育児は未知と苦難の連続だった。


 子が泣きやまない事で優那がノイローゼ気味になったのも分かるし、意思疎通のできない彼が、何を望んでいるか分からない事が一番つらい。


 私はトライアンドエラーを繰り返し、育児書を頼り、何とかして必死に冬夜を育てていく。


 冬夜のために稼がなくてはならないので、最初はベビーシッターを雇うために電話帳を捲り、方々電話を掛けまくった。


 ようやく連絡のついた女性は五十代の人の良さそうな女性で、私が家に帰る頃には私の分まで作り置きの食事を用意してくれていた。


 彼女から子育てのいろはを教わった私は、平日夜や、土日祝日は冬夜にかかりっきりになる。


 助かったのは、ベビーシッターが緊急時の相談役として電話対応もしてくれた事だ。






 冬夜が一歳になる頃、両親に「様子がおかしい」と訝しがられ、彼の存在がバレた。


 勿論、大目玉を食らったが、あらかじめ考えていた事を説明すると、母が「仕方がない」と言って認めてもらえる事になった。


 その後、母は頻繁に私の家を訪れ、冬夜の面倒を見てくれた。


 ベビーシッターとの契約は切り、冬夜を保育所に預けて働き、仕事が終わるとまっすぐ迎えに行く。


 不思議な事に、冬夜を相手に四苦八苦する毎日は確かに大変なのに、優那や三神をつけ回して悶々としていた頃より充実していた。


 泣きっぱなしの冬夜を前にすると、こっちこそ泣きたくなる事も多かったが、命を預かり大切に育てていく行為はとても尊い事だと思えた。


 それに冬夜の中に優那の血が半分流れていると思うだけで、大切に思えてならない。


 だがたまに育児に疲れ切った時、悪魔のような私が顔を覗かせる。

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