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有罪愛  作者: 臣 桜


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自由になるために

 十八歳になった俺は自分で契約して賃貸物件に住む事ができるが、そのためには連帯保証人が必要となる。


 新しい住まいを父親に教えるのはごめんだったので、俺は祖父に頭を下げる事にし、勇気を出してこれまで自分が性的虐待を受けていた事を打ち明け、どうしても実家から離れたいと思っている旨を訴えた。


 祖父は筋の通らない事を嫌う厳格な人であったが、悪い人ではなかった。


 だからこそ、祖父は息子の行いに怒り狂った。


 祖父は父の昇進を取り消し、自宅に息子を呼びつけて数時間説教したらしかった。


 祖母は泣き、すさまじい修羅場だったと、祖父の家に通う家政婦からこっそり聞いた。


 事が済んでから祖父から正式な詫びがあり、今後俺が一人暮らししていくのに、十分な保証をするという約束をもらえた。


 他にも祖父が死んだあとの遺産相続について、父の取り分を大きく減らすなど色々言っていたが、その辺りはどうでも良かった。


 ただ、何も知らない妹が心配なので、定期的に実家の様子を見て春佳を気に掛けてほしいと、頭を下げてお願いした。


 祖父に大目玉を食らった父は反省したのか、その後、家を出た俺につきまとう事はなく、ひとまず安心する事ができた。


 家に残された春佳が心配だったが、幸いにも父親が性的に興味を示したのは、俺だけだったようだ。


 普通なら女の子に興味が向くはずだが、なぜかあいつは俺だけを狙っていた。


 俺は春佳が成長すれば、いつかあいつは彼女に毒牙を向けるのでは……と思い、注意深く目を光らせていたが、とうとう娘に興味を持つ事はなかった。


 とはいえ、自分一人だけ鬼の棲まいから脱出できたとしても、妹の安否が気になって仕方がないのは変わらない。


 俺は彼女にスマホを買い与え、日々の報告を求めて頻繁に連絡をとった。


 俺にできるのは【父さんと母さんに何か嫌な事をされたら、すぐに言うんだぞ】と注意を促す事だけだ。


 だが春佳からのメッセージは【お母さんにこう言われて悲しかった。でも自分が悪いから次から同じ事を繰り返さないようにする】という内容ばかりだ。


 たまにこちらから【父さんに何もされてないか?】と水を向ける事もあったが、聞く限り、奴は基本的に春佳に興味を持っていないらしく、とりあえず安心した。


 俺は大学で勉強しながら春佳と連絡をとり、将来彼女と一緒に住むための基盤を整えていった。


 祖父からは自分の会社に入るかと気遣われたが、父親と同じ会社に勤めるなど論外だ。


『俺は自分の力で生きるから、気にしないで』


 やんわりと断ると、祖父はそれ以上無理強いしてこなかった。


 やがて俺が大学生活を満喫するいっぽうで、春佳に初恋が訪れたようだった。


 相手は野球部の坊主らしく、春佳はメールで【告白されちゃった】と照れている。


 ――は? ふざけんなよ?


 ――誰がクソガキに春佳をやるかよ。


 怒り狂った俺は但馬というガキについて調べ、卒業間際、彼の自宅近くで待ち伏せして圧を掛けた。


『あのさぁ、春佳に近づかないでくれる?』


 坊主頭の彼は、いきなり現れた大学生に面食らっていた。


『な、なんですか? 瀧沢さん本人からOKをもらったんだから、あなたには関係ないでしょう』


『へぇ。これでも春佳を一途に好きだと言えるワケ?』


 俺はスマホを出し、但馬に写真を見せた。


『な……っ』


 画像には野球部員と他校生の女子が酒を飲みながら騒ぐなか、マイクを持った但馬が春佳ではない女子とキスをしているのが映っていた。


『ストーカーかよ!』


 とっさに但馬は俺を罵倒する。


『事実だからそうやって知性のない悪口しか言えないんだよな? ……それで? 二股しておきながら、まだその口で春佳が好きだって言うワケ? 図々しくねぇか?』


 見下ろすように睨むと、但馬は歯噛みしたあとに大きな声を出した。


『別れるよ! それでいいんだろ!』


 言ったあと、捨て台詞のように『やべぇ奴!』と言って走っていった。


 これで害虫は駆除できたと安堵したが、可愛い春佳に目を付けない男がいない訳がなかった。


『お兄ちゃん、助けて……っ! 私、汚れちゃった!』

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