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有罪愛  作者: 臣 桜


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31/91

兄への不信感

 結局、春佳は行こうと思った喫茶店に行かず、適当に入ったファストフード店でぼんやりと昼食をとったあと、佃のマンションに戻った。


 冬夜は用事があり外出していて、夜まで戻らず留守だ。


 春佳は思考の迷路に嵌まったあと、頭を使いすぎて疲れを覚え、少し眠った。






 二十一時過ぎに冬夜が帰宅した時、春佳はリビングのソファに座り、テレビをつけたままスマホを見ていた。


「ただいま」


「……おかえり」


 春佳は一瞬兄を見てから、ボソッと返事をする。


 冬夜はバッグを床に置き、スマホをダイニングテーブルの上に置いてから「あっち……」と呟き、冷蔵庫にある麦茶をグラスに注いで飲み干した。


「飯は食ったか?」


「うん、カップ麺食べた」


「まだ暑いしバテるから、もうちょっと栄養のあるもん食えよ」


 そう言ったあと、冬夜はバスルームに直行した。


 水音が聞こえる間、春佳はソファの上で体育座りをして、ろくに見ていないテレビの液晶画面を見つめる。


 バラエティ番組でドッと笑い声が湧き起こったが、春佳はニコリともしない。


(小村さんが言っていた事を話すべき? ……そんな事をしたら、あの人に言われたみたいに『暴走』ってとられる?)


 悶々としていた時、ダイニングテーブルの上にあった冬夜のスマホがピコンと鳴った。


 ハッとそちらを向くと、冬夜のスマホにメールが入っていたのが見えた。


 春佳は「いけない」と思いながらも無意識に立ち、足音を忍ばせてテーブルに近寄った。


 そして画面を覗き込み、瞠目する。


 バナーに出ているメールの送り主は〝小村沙由紀〟で、文頭にはこうあった。


【今日、たまたま神保町で妹さんと会ったんだけど……】


 いてもたってもいられなくなった春佳は、スマホを持ってバナーをタップする。


 悪いと思ったが、パスコードは一緒に暮らしていて見えてしまったので、覚えている通り打ち込んだ。


 そして春佳は夢中になって小村からのメールを読む。


【今日、たまたま神保町で妹さんと会ったんだけど、私が瀧沢くんを好きだと誤解してるみたい。お父様が亡くなられて妹さんも精神的に不安定だと思うし、支えてあげてね。きっと今は瀧沢くんだけを頼りにしていると思うから。瀧沢くんも会社ではいつも通りに過ごしてるけど、何かつらい事があったら話を聞くからね。では、また月曜日に。小村】


 一瞬、小村が〝暴走妹〟を告げ口したのかと思ったけれど、違った。


 メールの内容に安心したものの、これでさらに小村の主張に真実味が増してきた。


 小村はこのメールが春佳に見られていると思っていないだろうから、書かれてある事に偽りはないと思っていい。


(……なら、お兄ちゃんは私に嘘をついてた? 何のために?)


 急に冬夜に対する不信感が湧き起こり、春佳は動揺する。


 胸の中がザワザワするが、とりあえずメールを見た痕跡を消すために、思いきってメールを削除し、ゴミ箱からも消去した。


 そのあとスマホをもと置いてあった場所に戻し、いつ冬夜が風呂から上がってもいいようにソファに座る。


 春佳は体育座りをして自分のスマホを開き、カモフラージュしながら思考に没頭した。


(お兄ちゃんの事を疑いたくない。だってこの世でたった一人の味方だもの。疑ったら駄目だ)


 そう自分に言い聞かせるものの、心の中でもう一人の自分が囁いてくる。


 ――どうして、お兄ちゃんなら何もかも〝正しい〟って思ってるの?


 ――お兄ちゃんは聖人君子じゃないんだよ? ちょっと優秀なだけの普通の男性。秘密にしている事だってあるだろうし、私や家族に言えない事情を隠しているかもしれない。


(そんな事、あるはずがない。こんなに良くしてくれてる人を疑ったら駄目だ)


 必死に心の声を押さえつけようとするが、コポリ……とあぶくが湧き起こる。


 ――どうして疑ったら駄目なの?


 ――今の自分を精神的に支え、生活の面倒もみてくれている人だから、信じられなくなったらどうしたらいいか分からないから怖いんでしょう?


 ぐうの音も出ない正論を言われ、春佳はギュッと目を閉じた。

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