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第4話 処刑台・召喚・ラブソング

「今夜終わったら、みんなでご飯行こうぜー。」

とイトゥルスが言うと、「いいですね。」とオピリニアが答えた。

するとラヴェルニクスが

「あたしあのお店行きたい!店長さん素敵だもの!」

少しあきれながらもキギョドンが笑う。

「ラヴェルニクスはいつも変わらんな。」

「はは、本当に恋する乙女って感じ・・・いったあ、殴んないでよ。」

ラヴェルニクスにぶん殴られてるノーヴェインを見て面白そうにヒロヴェイルが呟いた。

「お前たち、いつも楽しそうだな。」

「ヒロヴェイルも夕飯一緒にどう?」

「ふむ、たまには部下と食卓を囲むのも悪くない。私がご馳走しよう。」

いつもの5人と一緒に、ヒロヴェイルは大廊下を歩いていた。


すると、反対側から真っ黒の長いローブに身を包んだ集団が歩いてくる。

ヒロヴェイルが嫌そうに問う。

「魔界審判会が何の用だ?」

集団は6人の前に並ぶと、その真ん中の人物が口を開いた。

「ノーヴェイン・ベルディング。貴様を反逆罪で処刑にかける。ヒロヴェイル・ライジェット。貴様はその被害者として保護する。」

その言葉に6人は茫然とした。

「は?ノーヴェインが反逆罪?なんかの間違いやろ?」

「深夜に魔王城執務室にて魔王を脅したとの密告が入っている。」

「私は脅されてなどいな・・・。」

ヒロヴェイルが言いかけたところで、先ほどの人物が右手を挙げて下ろしながら言った。

「捕らえろ!」

「「「はっ!」」」

魔界審判会が一斉にノーヴェインを取り押さえる。

「わ、なんだ、離せ!離せよ!!」

「抵抗するな!」

途端に騒ぎになる廊下。

他の軍人たちは手を出そうとしない。それもそうだ。魔界審判会は魔界の絶対的正義。

逆らえば今度は自分たちが犯罪者だ。

「ヒロヴェイル、貴様を保護する。」

「いや・・・私はノーヴェインになにもされてない!その密告も本当かどうかわからないじゃないか!離せ!離せぇ!!」



それから数日後。

裁判の結果、ノーヴェインは死刑となった。

反逆罪はたちまち噂になり、ヒロヴェイルは、魔界審判会の所有する部屋で一人落ちながら呟いた。

「あの時、私が甘えたりしなければ・・・。」

淋しげなそれは誰かに届くこともない。

何もない部屋では安心して眠ることも出来ない。

ノーヴェインがいてくれたあの夜は今まで感じたことないくらい優しさに包まれていたというのに。

コンコンと扉をノックする音が響いて、ヒロヴェイルは顔を上げた。

「ノーヴェイン・ベルディングの処刑が始まります。来なさい。」



処刑台は遠く、ノーヴェインの表情は見えない。

両手が震え、体は冷え切り、まるで世界がモノクロに見える。

彼を失ったら、私はまた・・・。

そう思ったヒロヴェイルを両側から魔界審判会の魔人が囲った。

「これより死刑を執行する。」


ぽたり


「いやだ、いやだよ。」


ぽたぽた


涙が零れ落ちる。

ヒロヴェイルは、そのまま泣き崩れた。


「いやだ、ノーヴェイン。私を置いていかないで!!」


泣きながら暴れだすヒロヴェイル。

「おい、押さえつけろ!」

「はっ!」

魔界審判会が押さえつけようと人数を集め始めたが、手に負うことが出来ず辺りは凍り始めた。


「ヒロヴェイル・・・?」

処刑台の上にいたノーヴェインからもその騒ぎは見えた。


「オレ、まだ君といたい。」


するとその言葉に応えるように、ノーヴェインの右手とヒロヴェイルの立っている地面が黄色く輝きだした。

「わ、なんだ!これ!」

「召喚魔法か!?巻きこまれるぞ!離れろ!!」

処刑どころでなくなった魔界審判会の人たちは、ノーヴェインを縛り付けたまま処刑台から散り散りに離れていった。

この声が届くだろうか。届かなくてもいい。

ヒロヴェイルはそう思うと深呼吸を一つした。

「私を召喚して!ノーヴェイン!」

召喚インボカシオン!オレに応えて!ヒロヴェイル!!」

強く光る黄色い光。

ノーヴェインの前に現れた魔法陣の中からヒロヴェイルが姿を現す。

もうその顔は泣いていなかった。

氷の剣を作り出すと、そのまま一振り。ノーヴェインの拘束具を破壊した。

そして余裕の笑みを浮かべると深呼吸一つ。


「私が最恐、私こそが最強。全てを氷漬けにする魔族の王!ヒロヴェイル・ライジェット、ここに見参。」


「ヒロヴェイル、オレに応えてくれたんだね。」

「ノーヴェイン、私は・・・。」

このことが意味することは2人ともわかっていた。

それでも、どちらかともなく繋いだ手を離すことが出来なかった。


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