1章 初告白
人生初、全ての男子にとっての夢のイベントは。
「あ、付き合うのはヤ?な・・・ならいきなりその・・・・・・その、
お、お嫁さんってやつになってあげなくもn
「待て待て待て待て待て待てMATEまてまてまてええええぇえええええ
ぇええええええええええェェェェ勢いで俺の将来決定的にすんなよぉぉぉ
ぉおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ?!???!」
人類全ての敵からやってきた。
「わたしゼーベルカ・ノイシュテッター。世界一の美魔女よ!よろしく
ね!!」
そう名乗った≪魔女≫は、見事な紫紺の長い髪を真っ直ぐになびかせ、
勝ち気そうな大きな瞳とこれまたふっくらと形のいい唇を満面の笑みに形
作っている。その笑顔の輝きで、周囲の気温が上昇したような錯覚を覚え
るほどだ。あるいは自分の顔が紅潮しているのだろうか?
「美魔女って・・・そりゃ年の割にキレイなオバサンに言われるやつだ
ぞ」
「な、何だってーーーーー!?」
困惑しつつの突っ込みに大げさなリアクションを返してくる。案外楽し
い奴かもしれない・・・って、いやいやちょっと待て。
「(やべぇ、早くムラの奴らに、アネキに伝えねえと!!)
自分たちのムラのこんな近くまでついに≪魔女≫の魔の手が迫ってき
た。一刻も早くそれを伝えなければならない。何やら「ポルトガル語てム
ズイのね・・・」などとへこんでいる少女は、自分たちを滅ぼす存在だ。
今すぐ背を向けて逃走すべきか。しかしそんなことをしてこの≪魔女≫
の逆鱗にでも触れたら自分は果たしてどうなるのか・・・?とぐるぐる思
考を巡らせていると、またゼーベルカ・ノイシュテッターが話しかけてく
る。
「ねーねー、ねーねー、あんた、名前はなんてゆうの?」
カイオは今しがた抱いていた焦燥も一瞬忘れポカンとしてしまう。呆れ
つつ、
「カイオ。カイオ・シーラスだよ。本名はもうちょい長いけどな」
「カイオ…カイオね。ふふっ」
名前を知れたことが余程うれしいのか、はにかむ≪魔女≫に不覚にもカ
イオは目を奪われてしまう。先程、自分に突然向けられた言葉・・・それ
が恐ろしい≪魔女≫を、ただの魅力的な女の子に見せてしまうのには十分
で。
しかし、そんな弛緩した空気は一瞬で冷えた。
「失せろ」
心底ゾッとする低い声を発したのがゼーベルカだと一瞬わからなかっ
た。そして初めて明確にするその殺意は、自分に向けられたものではなか
った。
そこにいたのは、
「アハッ★虫けら一匹+1・・・・はっけーん♡」
ヤツらに共通する、白基調の幻想的な衣装。
≪魔女≫による殺戮の、始まりの合図だった。