プロローグ
それが始まったのが西暦何年のことだったか、よくわからない。
すでに記録の類はそのほとんどが焼かれ、紛失し、歴史の彼方へと埋も
れてしまったからだ。
突如として異世界から襲来した通常の人間を遥かに超越した身体能力を
持った少女たち______通称、≪魔法少女≫と呼ばれるそれは、そこにいた
人間達を何のためらいもなく殺戮し始めた。人は瞬く間にその数を減らし
ていき、築き上げた文明も破壊し尽くされてしまった。
最早、人間の絶滅は避けられない。生き残った者たちも、ただただ≪魔
法少女≫の恐怖におののく日々を過ごすばかり。誰もが自らの運命を悲観
し、世界を呪った。
カイオ・シーラスもその一人だった。まだ17歳と若い彼であるが、荒
廃した母国で日々の食い物と水を手に入れるため、危険な≪魔法少女≫の
徘徊する郊外へと出向く日々を送っている。親は既に死に、姉と二人で生
き地獄を渡ってきた。すすれる物は、すすり尽くしてきた。
そんなカイオはたった今まで、自らの命運を悟りかけていた。いつも飲
み水を調達する川のほとりまで出向いたところで≪魔法少女≫とばったり
遭遇。終わった。ごめんよアネキ、俺は戻れそうにない。遺言なんて考え
てないし遺書ももちろん書いてないけど、PCのロックはがっちりかけて
るし我が秘蔵コレクションが漏れることはないだろう____そう思ってい
た。
・・・目の前の紫紺の髪をした愛らしい≪魔法少女≫が言葉を発するまで
は。
「あのっ、、一目見た時から好きでした!付き合ってください!!!!!!
ゑ? なんて?