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111 高校生三人 遭遇2

 ガゾートたちがコランダーの知る森の様子を聞いているうちに狩人たちが集まる。

 彼らの自作の地図もあって、黄角猿のボスがいそうな場所などが判明する。

 

「協力ありがとう」


 ガゾートの礼に、狩人たちはいやいやと手を振る。


「森が危険で困るのは俺たちなので、これくらいの協力なら進んでやりますよ」

「皆様のお役に立てたのなら嬉しいです」

「森のことをよろしくお願いします」

「ああ、任せてほしい。あと俺たちが森に入って戦いだすと魔物たちがいくらか外に出てくる可能性がある。それには注意してほしい。傭兵にも言うつもりだが、君たちも注意しておいた方がいいだろう」


 わかりましたと頷いて狩人たちは帰っていった。


「村長、俺たちも傭兵に会いに行き、明日からの動きを説明してくる」

「はい。よろしくお願いします」


 コランダーの家を出た四人は、村周辺の見回りに出ているという傭兵たちのところへ行く。

 ガゾートは村の外を警戒している傭兵に近づき声をかける。


「やあ、少し話を聞きたいんだがいいか」

「かまわないが、新しく来た傭兵か?」


 ガゾートは首を横に振って否定する。


「陳情を受けて神殿からやってきた者だ。黄角猿討伐を行う予定だ」


 傭兵は神殿の騎士かと少し驚いた様子を見せた。


「あんたらが出張ってくるとはな。それで聞きたいこととは?」

「明日から森に入るつもりなんだ。そういった動きをそちらに知らせておこうと思ってな。君たちをまとめている者がいるなら会って話しておきたい」


 そういうことかと頷いた傭兵は一番年上の傭兵を紹介する。


「レッセルという三十歳半ばのくすんだ金髪の男、片手剣を持ち、金属の胸当てを身に着けている。彼が色々と差配している。今も村の外を一周しているぞ。右回りで見ていくと言っていたから左回りで歩いていけば会えるはずだ」

「ありがとう」


 礼を言い、四人は左回りで歩いていく。そして十五分ほどで三人で歩いている傭兵を見つける。

 一人はレッセルだろう。もう二人は年若い男女の傭兵だ。


「レッセルという名の傭兵で間違いないか」

「そうだが、あんたらは?」

「神殿から黄角猿討伐のためにやってきた。こっちの動きを傭兵のまとめ役というお前に知らせに来たんだ」

「ああ、そうなのか。どこか落ち着いたところで話した方がいいか?」

「こっちとしてはこのままでいいが」

「だったらここで話そうか。黄角猿や森についてどれくらい知っている?」


 レッセルの質問にガゾートは知っていることを話していく。

 うんうんと頷いていたレッセルは、自分から改めて話すことはないなと返す。


「黄角猿たちに異常はなかった。そっちが知っているとおりの魔物だ。注意しなければならないのは、地形を把握している向こうが有利ということか」

「群れの数は百はいないと聞いているが、それに関してはどうだろうか」

「増えた様子はない。森の奥に足を踏み入れてないから確実な情報ではないけどな」

「見張りはきちんとしたんだろう?」

「おう」

「だったら増えていない方向で考えて動くさ。明日から森に入る。俺たちが入ったら魔物の動きが活発化するかもしれん。森から出てくる魔物に注意してくれ」


 わかったと頷き会話を切り上げようとしたとき、若い男の方が自分も森に入りたいと主張する。

 それをレッセルがお前にはまだ無理だと断言した。


「なんで!? あいつらも入るんだろう? だったら俺だっていけるはずだ」


 似た年齢の琥太郎たちが森に入るということで、自分もいけると考えたのだろう。


「たしかに年齢は似たもんだが、積んでいる経験の差は大きい。よく見てみろ身に着けている武具は良い物で、それをただ与えられているだけじゃない。使い込まれている。古い物を与えられたとも考えられるが、使い慣れた雰囲気もある。しっかりとした鍛錬を受けた神殿の秘蔵っ子じゃないかと思うね」

「よく見ている。概ねそれで合っている」

「経験を積んだ傭兵ならこれくらいは見抜けるさ、褒められるようなことじゃない」


 よせよせと言うレッセルからガゾートは視線を若い男女に移す。


「レッセルの言うことに従えば間違いはない。今のうちに彼から色々なことを学ぶのが、今後成功する秘訣だと思うぞ。功を焦って、森に入るようなことをすれば痛い目に合うだろう」

「こっそり森に入って危機に陥ったとき助けがあると思うなよ? 俺たちも彼らもやることがあって救援は無理だ」


 若い男女は頷いたが、男の方が渋々といった雰囲気を漏らしていたので、レッセルは注意しておこうと考える。

 苦労するなとガゾートに視線を向けられ、レッセルは小さく苦笑を浮かべた。

 ガゾートたちはその場を離れて、宿に戻る。

 帰ってきたバーンズから新たな情報はなく、事前に調べたこととここで調べたことを元に森に入っても大丈夫だろうと判断する。

 村特産の牛乳を使ったシチューが夕食としてでてきて舌鼓を打ち、明日からの気力も十分に得ることができた。

 翌朝、朝食をとって武具を身に着けた琥太郎たちが村の外に向かっていると肩を落とした若い男がレッセルたちと歩いていた。

 

「おはよう」


 ガゾートの挨拶にレッセルもおはようと返す。


「今から行ってくる」

「気を付けてな。十分な手練れがそろっているように見えるが、アクシデントは起きるものだ。夜明けに黒い影が空から森へと降りていったという報告があった」

「新手の魔物だろうか?」

「わからなかったらしい。見間違いではないと言っていたが、大きな鳥を見間違えた可能性もある」

「鳥だといいが、なんにせよ気をつけよう。それでそこの彼は?」


 ガゾートは肩を落とした若い男に視線を向ける。


「朝早くに宿を抜け出して森に行こうとしていたんでな。拳骨をおみまいしてやったのさ」

「無事発見できてよかったな。下手すれば死体で見つけることになっていたかもしれん」

「そうだな。俺も若い頃は無茶したからあまりこいつを責められないんだが、それでも無茶を止められてよかったよ。森にはこいつより強い魔物が群れでいるんだ、高い確率で死体になっていただろうからな」


 見回りに向かうレッセルたちと別れて、八人の集団で琥太郎たちは村を出て、森に近づく。


「騒がしいな」


 森をじっと見てバーンズが言う。


「俺にはわからないが、黄角猿たちが騒いでいるとみていいのか?」

「詳細はわからない。ただ昨日よりも騒がしくなっているのは確実だ」

「黒い影が関係しているかもしれないか。注意して進むぞ。バーンズが先頭で頼む」


 わかったと返し、バーンズが先を歩く。その後ろにガゾート、琥太郎、淡音、桜乃と続いて、最後尾を兵たちが固める。

 森の中は浅い部分は木が少なく見通しもいいが、少し内部に足を踏み入れるととたんに藪などもあり歩きにくさが増す。

 バーンズが少しでも歩きやすいルートを選びつつ進んでいくと、ガゾートたちにも猿の吠える声がかすかに聞こえてきた。


「たしかに騒がしいな。あとここらには黄角猿がいない」


 だろう?とガゾートがバーンズに確認すると頷きが返される。

 

「声のする方向に進もうと思うが、皆はどう思う」


 そこが異常の中心地だろうと琥太郎たちも考えるので賛成した。

 黄角猿の吠え声を頼りに進んでいく。このまま進むと地図であたりをつけた場所の一つにたどりつく。

 そこは泉がある開けた場所で、飲み水もあって警戒もしやすいため猿たちが拠点の一つにしやすいのではと狩人たちが言っていた。その考えが当たっていたのだろう。

 吠え声が大きくなって、視線の先に開けた場所が見える。

 先頭のバーンズにはふっとぶ黄角猿の姿が目に入った。


「戦闘中のようだ。相手は……グリフォンだ」

「グリフォン? 本当だな」


 バーンズの横に並んだガゾートにもグリフォンの姿は見えた。

 白いグリフォンが黄角猿たちに突進しているところだった。

 捨て去りの荒野から移動してきたリベオだ。鍛錬のため魔物と戦っているのだ。


「明け方の影の主か。白いグリフォンというと北の方にそんなのがいたとか聞いたことがある。北のことはバーンズの方が詳しいだろう?」

「たしかにそういったグリフォンがどこかの山にいたという話は聞いたことがある。それ以外の白いグリフォンなんてほかに聞いたことはないな。もしかすると北から流れてきたのかもしれない」

「ここを縄張りにするため黄角猿と争っているということだろうか」

「そこまではわからんよ。あれが強いという噂は聞いたことがある。このまま勝つだろう。見た感じ、あの群れ程度ならどうにでもできそうだ」


 黄角猿たちも反撃はしているが、リベオにたいしたダメージを与えられていない。

 複数で飛びかかっても魔法や体を回転させての対処で吹き飛ばされ、ボスがなんとか体当たりを成功させても微動だにしないのだ。

 このまま見ていれば黄角猿たちは逃げ出し、残るのは黄角猿たちの死体くらいだろう。

 戦闘を見ながらバーンズはどうするとガゾートに尋ねる。


「グリフォンが居座るなら、俺たちの相手はあれになる。今のうちに奇襲でもしてダメージを与えておいた方がいいかもしれん」


 リベオが鍛錬を目的しているなど想像もできないので、縄張り目的なのだろうと判断する。


「俺たちで倒せるだろうか?」

「真正面から当たれば厳しいな。だからできるだけダメージを与えた方が有利になるだろう」

「……奇襲の方法とタイミングはバーンズに任せる」


 ガゾートは頷いて、奇襲に関して任せることにした。

 バーンズは淡音と桜乃と弓を持つ兵に、どのタイミングで攻撃を行うのかその場で話し、そのときを待つ。

 リベオは終始優勢に戦っている。やがて黄角猿のボスが絶命し、残った黄角猿たちが戦意を失ってリベオから離れていく。

 戦闘の終わり、そこがバーンズの狙ったタイミングだ。

 バーンズ一人だけならば、リベオが戦っている最中に黄角猿たちの殺気に自身の殺気を紛れ込ませて攻撃できたが、淡音たちにはそれは無理だ。かといってバーンズ一人だけの攻撃では大ダメージは与えられない。だから次点として戦闘の終わりという気を抜くであろうタイミングを狙ったのだった。


「撃て!」


 淡音たちだけに聞こえるように小声でバーンズは言い、自身も矢を放つ。

 魔力の篭った矢が三本と雷の魔法がリベオへと飛んでいく。

 黄角猿たちの気配が多く、バーンズたちに気づいていなかったリベオは、驚いたような雰囲気を放ちつつもその場から飛びあがって奇襲を回避した。黄角猿の残党を警戒して気を抜いていなかったおかげで回避が間に合ったのだ。

 回避されたことに舌打ちしたバーンズは続けろと言って、速射でリベオを狙う。

 その矢は翼に当たったものの、リベオがまとった風で威力を減らされ少しのダメージにもなっていない。

 そのままリベオは風をまとって突進する。

 

「前に出る!」


 防御に魔力を使ったガゾートが剣を盾にして一行の前に出た。しかし木をなぎ倒し迫る突進を受け止められず吹っ飛ばされる。

 だが突進の威力を減らすことには成功し、琥太郎たちに被害はでなかった。

 突進ののち上空に飛び上がったリベオが再度突進を試みる。

 バーンズたちは攻撃をしかけるが、当たっても意味がないとばかりにリベオは避けることもしなかった。

 事実、しっかりと準備をしていない反撃ではダメージは与えられなかった。

感想と誤字指摘ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[一言] 黒い影でローランドの一族とかかと思ったらリベオでしたか 最終的な目的で言えば人類に利する物ですが、まあそんな事情分かりませんからねえ
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