1 召喚
入社一年目を終えて二年目に入った鷹時進は少しの残業を終えて、人通りの少ない夜の住宅街を歩いていた。
今日は自炊をする気が起きずコンビニに行こうと思ったが、祖父母から送られてきていた野菜がそろそろ消費期限じゃないかと思って、自炊に変更する。世話になった祖父母が作った野菜を駄目にする気は起きなかったのだ。コンビニに行くのをやめて、スーパーで食材などを買ってついでになくなりかけていた塩やタバコやライターやカクテル用の度数高めの酒も買い、買い物袋を片手に歩く。
進の前方には塾帰りらしい三人の高校生がいた。男が二人の女に挟まれて楽しそうに話している。
楽しそうな高校生活を送っているなと思い、自身の高校生活を思い出す。友達とそれなりに楽しく過ごせた高校時代が思い返された。ついでに告白して振られた記憶も掘り起こされて、少しだけへこんだ。
恋人ほしいなーと思いながら高校生たちを眺めていると彼らに蛍が寄ってきた。
綺麗だし珍しいなと思った進は、様子がおかしいことに気づく。蛍が一匹二匹寄ってくるなら偶然だと思うが、その数がどんどん増えていっていた。
高校生たちが「なんだこれ!?」と驚いていることも違和感を感じさせた。
「だ、大丈夫か?」
進は高校生たちに近づき声をかける。近づくと光は蛍ではないことに気づけた。蛍などおらず、光そのものが浮いているのだ。
「あ! これなにかおかしいんです!」
「追い払えないし、触ることもできないんです!」
「なにかわからなくて気味が悪いっ」
幻想的とも見える光景だが、高校生たちは気味悪さしか感じていないようで不安が口調に表れている。
走って逃げることを進が提案しようとしたとき、周囲に集まる光の明るさがどんどん増していった。
「なんなんだこれ!?」
「眩しすぎるよっ」
「もうやだあ!」
「うおおおお!?」
進も悲鳴のような声をあげて、あまりの明るさに目を開けられなくなる。
明かりが弾けて周囲を真昼よりも明るく染めて、近所の人間がなんだなんだと家から出てきたとき、道には誰の姿もなかった。たしかにそこにいた四人は消え去っていた。
進はどこかよくわからないところに浮かび流されていた。呼吸のできる宇宙というべきところなんだろうか、真っ暗な中を星が流れていくという光景は夢でも見ているかのような現実味のなさを感じさせた。
ぼんやりとする意識のなか、周囲を見ると三人の男女が自身と同じように流されている。
どこに行くのか、自分はどこから来たのか、現状どうなっているのかぼんやりとした意識で考えていると、大きな衝撃を受けた。
その衝撃で近くにいた三人から離れて行くのがわかる。
どんどん離れて行く三人をぼんやり見ていると、頭の中に女の焦った声が響いた。
『ちょっ!? まずい! 聞こえてるわよね? 必ず回収するから頑張って生きて! あなたも絶対に必要だからね!』
うるさいと思いながら進は流されるままだ。
『この空間でその状態は仕方ないけどっうるさいはないでしょ! あなたに与えられる力は変質。あらゆるものを変化させられるの。それを利用して生き残りなさい。わかったわね? ちゃんとこの会話を覚えておきなさいよ? あなたの生死に関わるんだから! あーっどんどん離れていくからもう声を飛ばせないーっ。ほんとあいつ邪魔なんかしやがって』
そこまでで頭の中の声は消え去った。
静かになったことにほっとして進は流れに身を委ねる。もう三人の姿はどこにも見えない。
意識もじょじょに遠のいて、瞼が自然と閉じていく。
完全に意識を落とした進はやがて黒い渦に突っ込んでいき、この不思議な空間から姿を消した。
そこから離れたところでは進のように目を閉じた三人の高校生が大きな渦に飲み込まれていた。
おひさしぶりです
新作始めました
とりあえず一ヶ月連続更新していきます