断章『王喰』
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かつて王は千年生きた。
かつて王女は千年生きた。
王女は卑しき神に身を捧ぐ。
偉大な神に仕えし王これを封ず。
王女は闇にて求道し王を屠ると誓う。
現身に器を設け、これに大罪を奉ず。
器は鬼となる。
名を《貪食》。
王女は貪食を現世に放つ。
貪食は王を喰らう。
貪食は城を喰らう。
貪食は民を喰らう。
貪食は国を喰らう。
ついに貪食は王女を喰らわんとす。
王女は胡椒に身をやつし、貪食はこれを喰らわず。
王女は喰らえと請い求め、貪食はこれを喰らわず。
貪食は王女のかつての妹。
貪食は王女の断罪なり。
貪食は王女を裁かず。
王女は貪食の従者となる。
貪食は王女を連れて贖罪を探す。
貪食は貪食たり得ぬことで王女を断罪せんとす。
胡椒に身をやつせし王女は現身に還らねばならぬ。
現身に還りし王女を、やがて貪食は喰らうだろう。
今に世界を喰らう、その前に。
世界人口残数――現在、八億六千万。
“The Princess of Glutton”‐all over.
お読み頂き、誠にありがとうございました。ヨドミバチです。
本作は、学生時代に所属サークル発行の同人誌に掲載させて頂いた短中編の供養投稿になります。
童話か神話感とダークファンタジーっぽさを感じられる世界観で、人食いのパワー型モンスターを主役にしようと思って書き出したものです。結局誰が主人公に見えるかは人によって異なるかもしれませんが(笑)
この度についてはほとんど手を加えず、記念碑的な意味合いでの再発表となっておりますが、本作のキャラクターたちを主役にした長編作品を現在構想致しております。また、別の長編作品との世界観共有も裏の設定としてございますので、再登場、あるいはいわゆるスターシステム的な再登用もひそかに目論んでおります。
もしも同名同様のキャラクターたちをどこかで見ることがございましたら、あっと思い出していただけると幸いです。
それから、イラストご提供のちゃ畜様、本当にありがとうございました。思いがけない誉れに震えた日のことは忘れません。願わくば、あなたの道行きにも咎少なく幸多からんことを。
ヨドミバチ
※ 本作は、かつて4万字の短編としてひとまとめで投稿してあった同名作品を小間切れに再編集、再投稿したものになります。全5節。内容には手を加えていません。
・ 他サイト:青空文庫 http://slib.net/36704(こちらはひとまとめ版になります)