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(97)本当に優しいサイファー王太子殿下


謁見の間に向かう中、サイファー王太子殿下は強く握った私の手を自分の腕に回し、完璧にエスコートしてくださった。


後ろをお父様がとぼとぼと歩く。

不安で泣きそうになっているお父様の様子が、背後の気配からわかる。

泣くな。がんばって、お父様。

私も泣きたいのよ。



歩きながらニコニコと本当に嬉しそうに笑う殿下は、本日も目がチカチカする程眩し過ぎる極上イケメンスマイルで私に優しく話し掛けてくださる。歩く速度も然り気無く私に合わせてくださっている。

本当に優しい。やっぱりモテる男はこういう気遣いが出来るところが違うんだろう。




「クリスティーナ、一週間振りだね。急に帰ってしまって本当に寂しかったんだよ………でも、手紙ありがとう。一通目はかなりダイナミックな手紙だったね。あのような美しい字で力のこもった手紙は初めてもらったよ」



え?ああっ!!ご、ごめんなさい!あの時は失恋したてで思いっきり取り乱してました!

多分怒りとか何やらかんやらが混ざったのが字面に出ていたんだわ、きっと……。



「っ!……あの時はお世話になった御礼も申し上げず、失礼してしまいまして本当に申し訳ございませんでした」



慌てて謝罪の言葉を述べると、殿下は小さく首を横に振った。



「ううん。僕の方こそ、無理矢理引き留めてしまってごめん。後で母に物凄く叱られたよ。そんな監禁みたいな事をするなんて!ってね。でも、クリスティーナといると本当に楽しくてもっと話したくて、どうしてももう少し一緒にいる時間が欲しかったんだ……」




眉尻を下げて謝る殿下の言葉に幾つか気になるワードがあったけれど、私は慌てた。

ぎゃー!私なんかに王太子殿下が仔犬の様な顔をして謝ってるー!可愛い!やーめーてー!!



「そっ、そんな!畏れ多いです、殿下!」


「許して、くれる?」


「うっ!………はい、もちろんです。元より許すも何もございません」


「本当に!?よかったー!」



ズルい。

この方は自身の美貌の使い方を知っている。相変わらずの策士だ。

この美しい王太子にこんなに可愛く謝られたら誰だっていつだって許してしまうだろう。もし殿下に大金を貸してても(あるわけ無いけど)即、帳消しにしちゃう可能性大。あっぶない。


私は誤魔化すようにとりあえず微笑んだ。



「っ!………クリスティーナ」


「?」


私の手を置いている殿下の腕に力が入った。

ふと、殿下の方を見ると、少し悲しげな表情に驚く。



「!?」


「……本当はね、悲しかったんだ。あの夜はやっと、父と母とクリスティーナと4人で夕食を取れる予定だったから」



なっ、何ですと!?

そうだったの!?うそっ、危機一髪逃れられてたんだ!

大変失礼してしまったけれど、よ、よかったー!!


陛下と王妃様と王太子殿下と4人で夕食………そんな空間、恐ろし過ぎる。


今さらだけど、国王陛下と王妃殿下は何故私みたいなまだデビューもしていない小娘と会いたいと思われたんだろう?

『何でですか?』なんて理由は聞けないけれど、多分こちらのキラキラ殿下が有ること無いこと面白おかしくお話されて、珍獣のように私に興味をお持ちになったんだろうな。

改めて良かった……4人での夕食より、短時間の謁見の方がいける!まだ全然マシだわ。



「た、大変失礼いたしました。後程、謁見の際に私から謝罪を申し上げます」


「それは大丈夫だよ!あの二人は全く気にしてないからね。寧ろ、僕が………あ、リリアンヌ王女!アル!」




殿下が呼び止めたそのふたつの名前は今は絶対に聞きたくない、けれど忘れたくても忘れられない名前だった。



正面の大きく重厚なドアから出てきた二人は、今、正に絶対に会いたくなかったアルフォンス様とリリアンヌ王女様だった。




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