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(95)泣きたいのは私です


「テ、ティーナ?お、怒ってるの、かなー?」




怒ってるに決まってんだろ、ゴオルルアアアーーー!!!


ルメール侯爵夫人のお茶会って言ってたのに、何で王宮に向かってるの!?


嵌められた。

親に売られたと言っても良いだろう。




「だ、だ、だってね、陛下に呼び出されたら断れなくって」

「………で、来年は茶葉を幾ら程多く買ってくださると?」

「う、うんっ!50%増しって!」




なら、仕方がない。

顔だけ伯爵のお父様にしては、上出来だわ。




「わかりました。………でも、今回だけですからね」

「わ、わ、わかってるよ!ほんと、ごめんね、ティーナ。陛下がどうしてもティーナに会いたいって直々に仰るから……王妃様も会いたいんだって………ぐすっ」

「お父様。泣きたいのは私です。今日は慰めてくださるお母様はいらっしゃいませんから、どうかしっかりとなさってくださいませね」

「うん……ぐすっ……がんばる」




父よ、泣くな。

泣きたいのはこっちだわ。

頼むわよ、ほんとに。


お母様は昨夜から体調不良で、今日は急遽欠席。

羨ましすぎる。

まさかの国王陛下と王妃殿下との拝謁。

この今朝届いた碧色のドレスを無理矢理着せられた時点で、なぜ気付かなかった、私!!


はあ。緊張する………気が重いなあ。



それにしても、茶葉の買取り量が50%アップは本当にありがたい。

我がラファイエリ伯爵領で遥か昔から採れていた茶葉は、最高級茶葉で昔から紅茶として王家御用達だった。


数年前に同じ茶の樹から最終まで茶葉を発酵させて作る紅茶と、茶の発酵を止める為に初めに火にかける緑茶を作り分けた。

これは前世の桐生里奈だった時、母親の実家が静岡で茶畑をしていたからうっすらと覚えていた。

優しい祖父母が大好きでら幼い頃は何度も手伝いに行き、茶の製法を間近で見た。

葉を摘み取る時の音や、鼻にふわっと香る瑞々しい匂い、圧力の無い蒸気で蒸すむせ返るような茶葉の香りが懐かしい。



茶と言えば紅茶だった我がブラーム国内で、ラファイエリ伯爵領の特産品にした煎茶様式が受け入れられ、最近漸く人気が出てきた。

名前を『ラファイエリ茶』とし、砂糖や牛乳を入れずに飲むラファイエリ茶の愛好家が増えている。


特に甘い飲み物が苦手な男性やご年配に気に入ってもらえた。

最近は近隣諸国からも注文があり、なかなか良い値段で売れる。

そろそろブラーム国としても何らかの介入がある頃かと思っていたけれど、何で今かなー。

買取量が上がっても、同時に税率を上げられたらまあまあ痛い。



王宮が見えてきた。

またここに来てしまった。

デビューまでは来ないはずだったのに。



泣きながら王宮から戻ったあの日から、まだ一週間しか経っていなかった。




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