(87)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(38)
『…………国王陛下、更にマキシム国王も薦めておられる、
マキシム国の第二王女様との縁組のお話も………父から聞きました』
『………わたくしは、貴方のそばにいると確かにお約束しました。
けれど、それはアルフォンス様の奥様が決まられるまでの話。
………御結婚の話がおありなら、国王陛下が薦められるお話でしたら、もう決まったも同然です。約束通り、わたくしはもう貴方のそばには………居られません』
『わたくしは、決して、嘘つきではございません』
『………アルフォンス様は、わたくしに何を求めておられるのですか?』
『……御自身の縁組が決まっているのに、何故、わたくしにそばにいろ等と気安く仰るのですか?
『……わたくしを愛人にでもなさりたいのですか?』
『14歳の小娘でもわかります。
貴方様はわたくしを嘘つき呼ばわりされますが………アルフォンス様は大変、不誠実です。
マキシム国の第二王女様に対しても……わたくしに対しても』
『わたくしを………日陰者にでもなさるおつもりですか?』
クリスの言葉は全て正しい。
クリスは嘘つきではない。
自分は嫉妬の余り酷い事を口走り、愛しい人を傷付けてしまった。
自分の考えの甘さで、クリスにこんな事を言わせてしまうとは。
否定しなければならないのに、もう言葉が出ない。
どうしたらいい。
どうしてこうなってしまう。
クリスを愛人になど、日陰者になどする訳がない。
クリスは自分の妻になる唯一の女性なのに。
愛する人に不誠実と言われ、身体が硬直した。




