86/130
(86)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(37)
部屋の中で人の気配がする。
クリスが起きている。
小さくノックをすると、怯えた可愛いクリスの声が聞こえた。
拒絶の言葉が聞こえたが、構わずに部屋の中に入った。
頭がおかしくなりそうな程会いたかった、
何度も思い焦がれたクリスがそこいた。
夜着を纏った美しい少女が目を見開き立っていた。
クリスだ。
会いたくて仕方がなかった愛しいクリスがいる。
会えて嬉しいのに、サイとの光景が頭から離れず、嫉妬で酷い言葉を言ってしまった。
すると、クリスが本音を叫んだ。
『アルはっ!………私にそばにいて欲しいと言うけれど、私は何も知らなかった………。
私には………何も話してくれなかったじゃないですか!
私は、ずっと……ずっと、貴方からの連絡を待っていたのに……』
クリスの言葉に歓喜した。
クリスは自分からの連絡をずっと待っていてくれた。
今すぐに抱き締めたくて、少しずつクリスに近付く。
だが、クリスは決然とした言葉で自分を容赦無く突き放した。




