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(8) 4歳のクリスティーナ
私は4歳になった頃から両親に連れられて、
半月に一度、馬車で一時間程の王宮を訪れていた。
ただ待っているのは余りにもヒマ過ぎて、
大好きな本を読みたいと両親に懇願し、
大人しくする約束で王宮図書館の出入りを特別に許可された。
元々聞き分けの良すぎる見た目幼女で中身三十代の私は、
周りの大人達からの信頼度も抜群だった。
本さえ与えておけば何時間でも静かに過ごす『なんて大人しく、かしこい美少女伯爵令嬢だ!』と、認識されていた。
いつ来ても人が殆どいない王宮図書館は居心地が良く、
私の大のお気に入りの場所となっていた。
前世の頃から読書は大好きだった。
恋愛や推理小説から歴史モノ、
異世界転生モノのラノベも大好きだった。
まさか、私が転生するなんて。
たまに自分が今、生きているこの世界が、
全て虚像かもと無性に恐ろしくなる時がある。
強く握った指の爪が掌に食い込み、痛い。
目にうっすらと涙が浮かぶ。
この世界を生きているんだと実感出来る。