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(74)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(25)
『この後のシンとの会談に、お前も参加しろ』
『!?………御意』
『その場で出るであろう、シン国王からの申し出を必ず受けろ』
『!?………』
『そうすれば、お前の想い人に、俺は手を出さない』
『!………そのお言葉に偽りはございませんね、陛下』
『ああ、無い。安心しろ。では、行くぞ』
『はっ!』
五十を迎えた我がブラーム国のエルネスト国王陛下はまだまだ若々しく、最強国の王の威厳を纏っていた。
自分は他の騎士団員と共に陛下を警護し、シン国王の待つ会談場所に向かった。
陛下は実の伯父と言えども、真の姿が見えない得体の知れない御方だ。
ブラーム国の為なら、表情一つ変えずに冷酷な判断を下す。
しかしその陛下がはっきりと自分に約束された。
条件を飲めばクリスには手を出さないと。
まだまだ力の無い自分はその言葉を信じるしかなかった。
陛下の背中を見ながら、これから自分に降りかかるであろう面倒な案件にどう対峙するか思案した。




