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(67)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(18)
クリスはあっという間に少女から美しい女性になった。
時折、社交界に顔を出すと貴族の男達の間でも、まだデビュー前のラファイエリ伯爵令嬢の美しさは既に噂になっていた。
自分が既に仮といえどもクリスの婚約者であるのに、内心酷く焦る。
そこで漸く危うい立場だという事に気が付いた。
父に相談しようと思った矢先、
その両親を乗せた馬車が、不慮の事故に合った。
父は母を護るように抱き締め、
母は父の胸の中で亡くなっていたと聞いた。
最期まで二人が一緒に居られた事がせめてもの救いだと思い、独り哀しみに耐えた。
無念の極みであった。
何もかもが順調だった日々が、
両親の死去により突然歯車が狂いだす。
想像よりも遥かに早く公爵を継ぐことになった。
やるべき事は山のようにあり、哀しみになど浸る時間は直ぐに無くなった。
改めて父の凄さに驚き、孤独感が押し寄せた。




