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(64)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(15)
クリスが泊まった至福の一週間は、
隣室に寝ていると思うとなかなか寝付けなかった。
小さな物音さえも気になった。
毎夜、クリスが寝静まった深夜に、
部屋の間にある扉をそっと開けて、真っ暗な部屋の中に入った。
月明かりに目が慣れてくると、
ベッドのヘッドボードの辺りが金色に光っているのが見えた。
クリスがいる。
愛するクリスが眠っている。
胸が高鳴った。
静かに近付き、覗き込んだ。
そこに天使が眠っていた。
眠っているクリスは、
昼間のクリスとはまた違っていた。
あどけない顔で眠るクリスは、
小さく開いた可愛い口から小さな寝息を立てて、
幸せそうにぐっすりと眠っていた。
この幸せの象徴のような美しい少女の眠りを、
自分の手で護りたいと思った。
自分の心を震わす唯一の存在。
誰にも触らせたくない。
自分の手元に置きたい。
自分だけを見て愛して欲しい。
クリスを必ず自分の妻にする。
一週間、毎夜そう心に誓い、
眠るクリスの頬にキスをした。




