(62)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(13)
ある日、クリスは一人で我が家の茶会に参加した。
伯爵も伯爵夫人も風邪を引き熱が出ているため、クリスも茶会を欠席するとの申し出があったが、逆にクリスに風邪がうつらないよう我が家に来るように伝えた。
公爵家からの申し出を断れない事は重々承知の上だった。
自分が伯爵邸までクリスを迎えに行き、申し訳無さそうな彼女を我が家に連れ帰った。
そこからは母の独壇場だった。
いつもクリスのそばにいる伯爵夫人が不在なのを良いことに、
母と二人で軽くお茶を飲んだ後、父と共にクリスを強引に街に連れ出して山程買い物をして帰ってきた。
少し疲れたような複雑な表情のクリスとは対照的に、母は心から楽しんでいた。
この時が、母にとって人生で本当に幸せな時間だっただろうと思う。
母に心からの笑顔で過ごせた幸せな時間を与えてくれたクリスには、感謝をせずにはいられない。
父はよく、これ見よがしにクリスに話し掛け、あろうことか無意味に近い距離で話そうとする。
慌ててクリスをその場から連れ出すと、いつもクリスに怒られた。
怒る時はクリスの遠慮の無い態度を見られるので嬉しくなる。
自分に心を許してくれているのは本当に嬉しい。
段々と呆れた表情をするのも本当に可愛い。




